財産価額填補責任
現物出資または財産引受の対象となった財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足するとき、誰が、不足分の責任を負うか?
現物出資者および財産引受の譲渡人の責任
現物出資や財産引受を行った発起人(本人)は、
原則:不足分に責任を負います。
例外:総株主の同意がある場合は、免責です。
他の発起人および設立時取締役の責任
現物出資や財産引受を行っていない発起人や設立時取締役は
原則:発起人および設立時取締役は、株式会社に対して、連帯してその不足額を支払う義務を負います(52条1項)。・・・発起設立も募集設立も同じ
例外:発起設立で①検査役の調査を経た場合、または、②発起人及び設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合には、免責となります(52条2項)。
※募集設立の場合、①のみ免責となり、②では免責とはならない。
つまり、募集設立の場合、注意したことを証明しても免責にならない!
例えば、発起人Aが現物出資したパソコンを定款で100万円と記載して、実際は、10万円の価値しかなかった場合、Aだけでなく、他の発起人Bや設立時取締役Cは、原則、連帯して差額の90万円を会社に支払う責任を負います。
任務懈怠責任
発起人・設立時取締役・設立時監査役は、株式会社の設立について任務懈怠があり(任務を怠り)、そのことが原因で損害が発生した場合どうなるか?
「会社に対して損害を与えた場合」と「第三者に対して損害を与えた場合」の2つを考えます。
会社に対する責任
任務を怠った発起人・設立時取締役・設立時監査役は、会社に対して、損害賠償責任を負います(53条1項)。そして、複数の者が任務を怠った場合、これらの者は連帯して責任を負います(連帯債務)(54条)。
第三者に対する責任
任務を怠った発起人・設立時取締役・設立時監査役は、悪意又は重過失によって、第三者に損害を与えた場合、当該発起人等は、第三者に対して賠償責任を負い(53条2項)、複数のものが関与する場合、連帯責任となります(54条)。
会社不成立の責任
会社の不成立とは、設立手続きが進められてきたが、結局、設立登記まで至らなかった場合です。例えば、創立総会で設立廃止の決議がなされた場合等です。
この場合、発起人が全責任を負うため、発起人は、設立に関して支出した費用を負担しないといけません(56条)。
例えば、発起人A・Bがおり、募集設立を行い、引受人から出資を受けた場合、A・Bは、無過失でも、連帯して返還義務を負います。
設立に関する責任のまとめ表
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