国と国家公務員との法律関係に関する次の記述のうち、最高裁判所の判決に照らし、正しいものはどれか。
- 国と国家公務員は特別な社会的接触の関係にあるので、公務災害の場合、国は、一般的に認められる信義則上の義務に基づいて賠償責任を負うことはない。
- 安全配慮義務は私法上の義務であるので、国と国家公務員との間の公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。
- 公務災害に関する賠償は、国の公法上の義務であるから、これに民法の規定を適用する余地はない。
- 公務災害に関する賠償については、国家賠償法に基づく不法行為責任が認められる場合に限られ、上司等の故意過失が要件とされる。
- 公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間については、早期決済の必要性など行政上の便宜を考慮する必要がないので、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用される。
本問は「最判昭50.2.25」に関する出題です。
【解説】
1.国と国家公務員は特別な社会的接触の関係にあるので、公務災害の場合、国は、一般的に認められる信義則上の義務に基づいて賠償責任を負うことはない。
1・・・誤り
判例によると
「国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている」
と判示しています。
つまり、国と公務員との間であっても、安全配慮義務(信義則上の義務)が認められ、これに基づいて賠償責任を負うことがあります。
判例によると
「国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っている」
と判示しています。
つまり、国と公務員との間であっても、安全配慮義務(信義則上の義務)が認められ、これに基づいて賠償責任を負うことがあります。
2.安全配慮義務は私法上の義務であるので、国と国家公務員との間の公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。
2・・・誤り
判例によると、
「安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負う」
としています。
よって、「公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。」は誤りです。
判例によると、
「安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであつて、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負う」
としています。
よって、「公務員法上の関係においては、安全配慮義務に基づく責任は認められない。」は誤りです。
3.公務災害に関する賠償は、国の公法上の義務であるから、これに民法の規定を適用する余地はない。
3・・・誤り
判例によると
「国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、・・・私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではない。
よって、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法の5年と解すべきではなく、民法の10年と解すべき」
として、民法を適用しているため、「民法の規定を適用する余地はない」は妥当ではありません。
判例によると
「国が義務者であっても、被害者に損害を賠償すべき関係は、・・・私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするものではない。
よって、国に対する右損害賠償請求権の消滅時効期間は、会計法の5年と解すべきではなく、民法の10年と解すべき」
として、民法を適用しているため、「民法の規定を適用する余地はない」は妥当ではありません。
4.公務災害に関する賠償については、国家賠償法に基づく不法行為責任が認められる場合に限られ、上司等の故意過失が要件とされる。
4・・・誤り
公務災害に関する賠償については、「国家賠償法に基づく不法行為責任が認められない場合」でも、安全配慮義務違反によって賠償してもらえます。
また、上司の故意過失は要件とされていません。
公務災害に関する賠償については、「国家賠償法に基づく不法行為責任が認められない場合」でも、安全配慮義務違反によって賠償してもらえます。
また、上司の故意過失は要件とされていません。
5.公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間については、早期決済の必要性など行政上の便宜を考慮する必要がないので、会計法の規定は適用されず、民法の規定が適用される。
5・・・正しい
選択肢3の通り、「公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間」は民法の消滅時効(10年)が適用されるので、正しいです。
選択肢3の通り、「公務災害に関わる金銭債権の消滅時効期間」は民法の消滅時効(10年)が適用されるので、正しいです。
平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 外国人の人権 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 基本的人権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 憲法9条 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 司法の限界 | 問36 | 商法 |
問7 | 財政 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政立法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |