公物に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 自然公物については、自然のままにおいて公共の用に供されていると解されるので、公用開始という観念は成り立ちえない。
- 公物の公用開始行為は、特定の私人を名あて人とするものではないが、行政法学でいう行政行為の一種である。
- 公物の公用廃止については、明示的な廃止処分によることなく、黙示で廃止されたものとみなされることもある。
- 私人所有の財産が公物として公用開始の対象に含まれていた場合、公用開始の効力は当該財産に関する部分について当然に無効となる。
- 公用開始後の公物の供用行為が利用者との関係で適正であっても、第三者に対して損害を及ぼせば、当該公物の管理者は損害賠償責任を負う。
【答え】:4【解説】
1.自然公物については、自然のままにおいて公共の用に供されていると解されるので、公用開始という観念は成り立ちえない。
1・・・正しい
「公の営造物」と「公物」は同義(同じもの)で、大きく分けて「自然公物」と「人工公物」があります。
「公の営造物」と「公物」は同義(同じもの)で、大きく分けて「自然公物」と「人工公物」があります。
- 自然公物:河川、湖、沼、海、砂浜等
- 人工公物:道路、上下水道、庁舎、庁舎内の机・椅子、校舎、公用車、けん銃等
そして
自然公物の場合は、自然のままで、みんなが使っている(公衆の利用に供されてきている)ため、公用開始という観念は成立しません。
よって、本肢は正しいです。
一方、人工公物は、いつからみんなが使うことができるのかを明確にする必要があることから、公用開始行為は、行政処分によって行われます。
2.公物の公用開始行為は、特定の私人を名あて人とするものではないが、行政法学でいう行政行為の一種である。
2・・・正しい
「公物の公用開始行為」は、特定の私人を名あて人とするものではないが、行政講学上「行政行為の一種」と解されています。
例えば、道路が私道(私人が所有する道路)であっても、公用開始行為により、その私道は、みんなが使うことができる(私道に建物を建てることができなくなる)という効力が生じます。
そこから考えても、行政行為とイメージできます。
「公物の公用開始行為」は、特定の私人を名あて人とするものではないが、行政講学上「行政行為の一種」と解されています。
例えば、道路が私道(私人が所有する道路)であっても、公用開始行為により、その私道は、みんなが使うことができる(私道に建物を建てることができなくなる)という効力が生じます。
そこから考えても、行政行為とイメージできます。
3.公物の公用廃止については、明示的な廃止処分によることなく、黙示で廃止されたものとみなされることもある。
3・・・正しい
判例によると、
「公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたもの(公用廃止の意思を示さなくても、公用が廃止された)として、取得時効の成立を妨げない(取得時効が成立する可能性はある)。」
と判示しています。※黙示的とは、暗黙のうちに意思や考えを示すこと。よって、本肢は正しいです。
判例によると、
「公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたもの(公用廃止の意思を示さなくても、公用が廃止された)として、取得時効の成立を妨げない(取得時効が成立する可能性はある)。」
と判示しています。※黙示的とは、暗黙のうちに意思や考えを示すこと。よって、本肢は正しいです。
4.私人所有の財産が公物として公用開始の対象に含まれていた場合、公用開始の効力は当該財産に関する部分について当然に無効となる。
4・・・誤り
私人所有の財産が公物として公用開始の対象に含まれていた場合、公用開始の効力は有効です。
例えば、道路が私道(私人が所有する道路)であっても、公用開始行為により、その私道は、みんなが使うことができる(私道に建物を建てることができなくなる)という効力が生じます。
私人所有の財産が公物として公用開始の対象に含まれていた場合、公用開始の効力は有効です。
例えば、道路が私道(私人が所有する道路)であっても、公用開始行為により、その私道は、みんなが使うことができる(私道に建物を建てることができなくなる)という効力が生じます。
5.公用開始後の公物の供用行為が利用者との関係で適正であっても、第三者に対して損害を及ぼせば、当該公物の管理者は損害賠償責任を負う。
5・・・正しい
判例によると、
『営造物(空港)の利用が一定の限度を超えるため、第三者(空港周辺の住民)が損害を受ける危険性がある場合、国家賠償法2条1項の「営造物の設置又は管理」に瑕疵があるといえる。
このような危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害が発生したときは、原則、国家賠償法2条1項の規定による責任(損害賠償責任)を免れることができない』
と判示しています。よって、本肢は正しいです。
判例によると、
『営造物(空港)の利用が一定の限度を超えるため、第三者(空港周辺の住民)が損害を受ける危険性がある場合、国家賠償法2条1項の「営造物の設置又は管理」に瑕疵があるといえる。
このような危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害が発生したときは、原則、国家賠償法2条1項の規定による責任(損害賠償責任)を免れることができない』
と判示しています。よって、本肢は正しいです。
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 新しい人権 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 参政権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 法改正により削除 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |