名板貸とは、ある商人(名板貸人)が、他の商人(名板借人)に自分の商号を使って営業または事業を行うことを許諾することを言います。
読み方は下記の通りです。
名板貸人:ないたがしにん
名板借人:ないたがりにん
名板貸の成立要件
名板貸が成立するには、下記3つを満たす必要があります。
- 名板借人が名板貸人の商号を使用すること(外観の存在)。
- 名板貸人が名板借人に商号の使用を許諾したこと(帰責事由)
- 第三者の誤信(相手方の信頼)
例えば、名板貸Aが、名板借人Bに、Aの商号使用を許諾をしたとします。
そして、BがAの商号を使って、Cと契約しました。
Cが、BをAと勘違いして契約した場合、名板貸が成立するこということです。
より細かく要件を見ていきます。
1について、名板貸人と名板借人は営業の同種性が必要です。(最判昭43.6.13)
つまり、名板貸人Aが飲食業を行っていて、名板借人が運送業を行っていては要件を満たさないということです。
2について、商号使用の許諾は、黙示の許諾であっても構いません。
客観的に見て許諾したように見える場合も許諾したことになる、ということです。
3について、取引相手が、善意無過失で、名板貸人と契約したと勘違いしたことが必要です。
名板貸人の責任
まず、名板借人Bと相手方Cとで契約した場合、名板借人Bと相手方Cとの間で契約が成立したことになります。
つまり、名板借人Bは取引における債務を負います。
また、名板貸人は、自己の商号を使って名板借人が行った「取引による債務」について、名板借人と連帯して責任を負います。
つまり、名板貸人Aも名板借人Bも取引における債務を負うということです。
名板貸人の責任の範囲
取引による債務の範囲ですが、下記も責任の範囲内として責任を負います。
- 名板借人の債務不履行による損害賠償債務
- 契約解除による原状回復義務
- 手付金返還義務
一方、名板借人Bの不法行為による損害賠償債務は、原則、名板貸人の責任の範囲外で、責任を負わなくてもよいです。
ただし、名板借人Bの詐欺的行為の場合は、名板貸人の責任の範囲内として責任を負います。
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