このページでは、違法な募集株式の発行に対する救済の方法について解説します。
募集株式の発行の手続きに法令又は定款違反がある場合、その効力が問題となります。
募集株式の発行の効力が発生する前と後によって救済手段が異なります。
効力発生前:募集株式の発行差止請求
募集株式の発行差止請求
下記いずれかの場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、「株式の発行又は自己株式の処分」をやめることを請求することができます(210条)。
- 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合
- 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合
新株発行等の無効の訴え
違法・不当な募集株式の発行において、発行差止請求ができるのは、払込期日の前までです。払込が終わってしまうと、株式発行の効力が生じてしまうので、その後は、発行差止請求はできません。
この場合、「新株発行等の無効の訴え」や「新株発行等の不存在確認の訴え」を行うことができます。
無効原因
どういった場合に無効原因となるかについては、会社法で規定されません。
判例では、下記のような場合に無効原因となるとしています。
- 発行可能株式総数を超えて新株発行が行われた場合
- 募集事項の通知・公告を行わずに新株の発行が行われた場合(最判平9.1.28)
- 新株発行差止めの仮処分を無視して、新株を発行した場合(最判平5.12.16)
提訴期間
新株発行等の無効の訴えは、新株発行の効力が生じた日から6か月以内(非公開会社の場合、1年以内)に訴えをもってのみ主張できます。
裁判外で主張することはできないので注意しましょう!
提訴権者
新株発行等の無効の訴えは、株主、取締役、監査役等です。
会社の債権者は新株発行等の無効の訴えを提起できません。
無効判決の効果
新株発行等の無効の訴えについて、認容の判決(無効判決)となった場合、無効判決の効果は第三者に対しても効力を生じます(838条)。
また、無効判決の効果は、将来に向かってその効力を失います(839条)。
新株発行等の不存在確認の訴え
新株発行の手続きが全くなされていない場合等のように新株発行の実態がない場合、新株発行等の不存在確認の訴えの対象となります。
提訴期間
これは、新株発行をしていないというように、手続きの瑕疵の程度が重いので、提訴期間に定めはありません。つまり、いつでも主張できます(裁判外でもOK)。
提訴権者
新株発行の不存在確認の訴えは、会社法上、誰でも、提訴できます。
不存在確認の判決の効果
第三者に対してもその効力を生じます(838条)。
しかし、無効判決の場合と異なり、もともと、株式が発行されていないので、当初にさかのぼって効力を生じます。
新株発行等の「無効確認の訴え」と「不存在確認の訴え」の違い
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