Aの配偶者であるBは、Aから法律行為に関する代理権を授与されていないにもかかわらず、Aが所有する高級腕時計甲につき、自身の海外旅行費用に充てるために、Aの代理人と称してCに売却する旨の売買契約(以下「本件契約」という)を締結した。このような場合におけるCのAに対する本件契約の履行請求の可否につき、判例は、民法110条(権限外の行為の表見代理)の趣旨を類推して相手方保護を図る旨を示した。判例は、Cにおいて、どのような場合に上記の類推適用を認めているかについて、40字程度で記述しなさい。
本問のポイントは、日常家事代理権(民法761条)と権限外の行為の表見代理(民法110条)の類推適用の関係です。
まず前提として、夫婦は互いに日常の家事に関する法律行為について相互に代理権を有します(民法761条)。しかし本問のBによる高級腕時計の売却は、海外旅行費用に充てるためのものであり、「日常家事」の範囲を明らかに超えています。したがってBには代理権がなく、本件契約は無権代理となります。
問題はCの保護です。判例(最高裁昭和44年12月18日)は、日常家事代理権という「基本代理権」が存在することを根拠に、その権限を超えた行為に対して民法110条(権限外の行為の表見代理)の趣旨を類推適用することを認めました。
ただし類推適用が認められるのは無条件ではなく、相手方Cが、その行為(本件契約)が日常家事の範囲内に属すると信じ、かつそのように信じたことについて正当な理由がある場合に限られます。Cに正当な理由がない場合は保護されません。
| 論点 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 基本代理権 | 民法761条 | 夫婦間の日常家事代理権 |
| 類推適用の根拠 | 民法110条の類推 | 権限外の行為の表見代理 |
| 類推適用の要件 | 最高裁昭和44年判決 | 日常家事の範囲内と信ずるにつき正当な理由 |
記述式では「日常家事の範囲内に属すると信ずるにつき正当な理由」という文言を正確に書けるかどうかが勝負です。「正当な理由」は民法110条の「正当な理由」と同じ概念であり、相手方の善意・無過失を意味します。「信じただけ」では足りず、そう信じたことに合理的な根拠が必要な点を押さえておきましょう。
※「日常家事代理権」とは、夫婦が日常の家事(食料品の購入・光熱費の支払いなど)について互いに代理権を持つことをいいます(民法761条)。日用品の購入などには及びますが、高額な財産処分は含まれません。
※「表見代理(民法110条)」とは、代理権の範囲を超えた行為であっても、相手方が正当な理由をもって代理権の範囲内と信じた場合に、本人に効果を帰属させる制度です。相手方保護を目的とします。
令和7年(2025年)過去問
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法 |
| 問3 | 憲法 | 問33 | 民法 |
| 問4 | 憲法 | 問34 | 民法 |
| 問5 | 憲法 | 問35 | 民法 |
| 問6 | 憲法 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 憲法 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法・多肢選択 |
| 問12 | 個人情報保護法 | 問42 | 行政法・多肢選択 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法・多肢選択 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識 |
| 問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識 |
| 問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識 |
| 問22 | 行政法 | 問52 | 基礎知識 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 行政書士法 |
| 問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識 |
| 問26 | 情報公開法 | 問56 | 基礎知識 |
| 問27 | 民法 | 問57 | 基礎知識 |
| 問28 | 民法 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法 | 問60 | 著作権の関係上省略 |


