次の文章は、ある最高裁判所判決の一節である。空欄[ ア ]~[ エ ]にあてはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。
条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の[ ア ]と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、[ イ ]、内容および効果を比較し、両者の間に[ ウ ]があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の[ イ ]に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する[ イ ]と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一[ イ ]に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その[ エ ]に応じて、別の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの[ ウ ]はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。
(最大判昭和50年9月10日刑集29巻8号489頁)
1:立法事実 2:効力 3:対象事項 4:歴史的背景 5:整合性 6:目的 7:結果 8:相当性 9:状況 10:立法経緯 11:必要性 12:首尾一貫性 13:立法者意思 14:排他性 15:優劣関係 16:地方の実情 17:住民の意識 18:委任関係 19:矛盾抵触 20:手続
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【答え】:ア:3(対象事項)、イ:6(目的)、ウ:19(矛盾抵触)、エ:16(地方の実情)
条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の[ ア:対象事項 ]と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、[ イ:目的 ]、内容および効果を比較し、両者の間に[ ウ:矛盾抵触 ]があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の[ イ:目的 ]に基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する[ イ:目的 ]と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一[ イ:目的 ]に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その[ エ:地方の実情 ]に応じて、別の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの[ ウ:矛盾抵触 ]はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。
(最大判昭和50年9月10日刑集29巻8号489頁)
【解説】
条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の[ ア ]と規定文言を対比するのみでなく…
ア・・・対象事項
本判決(徳島市公安条例事件・最大判昭和50年9月10日)は、条例と国の法令の抵触判断基準を示したリーディングケースです。単に「規定文言」を比較するだけでなく、まず両者が何を規律対象としているか(対象事項)を確認した上で、趣旨・目的・内容・効果を総合的に比較すべきとしています。よって、アには「対象事項」が入ります。
それぞれの趣旨、[ イ ]、内容および効果を比較し…後者が前者とは別の[ イ ]に基づく規律を意図するものであり…前者の規定の意図する[ イ ]と効果をなんら阻害することがないときや…両者が同一[ イ ]に出たものであっても…
イ・・・目的
条例が国の法令と重なる場合でも、両者の目的が異なる場合は矛盾抵触が生じないとされています。例えば、国の法令が環境保護を目的とし、条例が住民の安全確保を目的とする場合のように、目的が別であれば、条例が国の法令の効果を阻害しない限り適法です。文中でイが4回登場する点から、文脈全体に通じる語句であることが判断の手がかりになります。よって、イには「目的」が入ります。
両者の間に[ ウ ]があるかどうかによってこれを決しなければならない…国の法令と条例との間にはなんらの[ ウ ]はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。
ウ・・・矛盾抵触
条例が国の法令に違反するかどうかの最終的な判断基準は、両者の間に「矛盾抵触」があるか否かです。規定文言の対比だけでなく、趣旨・目的・内容・効果を総合的に比較した結果として矛盾抵触が認められる場合に初めて、条例は国の法令に違反することになります。文中でウが2回使われており、前後の文脈から「違反かどうかの決め手となる概念」であることが読み取れます。よって、ウには「矛盾抵触」が入ります。
それぞれの普通地方公共団体において、その[ エ ]に応じて、別の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは…
エ・・・地方の実情
国の法令が全国一律の規制を意図せず、各地方公共団体がその地方の実情に応じて独自の規制を設けることを容認していると解釈できる場合は、条例が国の法令と矛盾抵触しないとされます。これは地方自治の本旨(憲法92条)にも通じる考え方であり、地域の特性や住民のニーズに応じた規制の正当性を認めるものです。よって、エには「地方の実情」が入ります。