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「商法の概要」と「商人・商行為」

商法とは?

ここから商法を学んでいくのですが、商法とはいったいどのような法律なのか?これは、商法の1条の趣旨を見ると分かります。

商法第1条
商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。
2 商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる。

上記1条から、商法は「商人の営業、商行為その他商事」について定めた法律であることが分かります。

そして、1項で重要な内容は、「商人」と「商行為」です。
「商人」については、このページで解説し、
「商行為」については、次のページで解説します。

「商事」とは、商業・商売に関する事といたイメージで大丈夫です。

商法と民法の関係

2項では、商事については、まず初めに、商法を適用し、商法に定められていない場合、商慣習に従い、商慣習もない場合に、民法を適用するということになっています。

つまり、優先順位が高い方から、

商法>商慣習>民法

ということになります。

商法が民法の特別法であることを考えれば、必然と、商法が優先して適用されることは分かるでしょう。

商法の適用

  1. 当事者双方にとって商行為である行為(双方的商行為
  2. 当事者の一方にとってだけ商行為である行為(一方的商行為

上記1、2どちらであっても商法が適用されます。

つまり、「消費者―商人」との契約でも商法が適用されるわけです。

商人とは?

商法第4条
この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることをとする者をいう。

上記の通り、「商人」とは、自己の名をもって商行為を業として行う者ですが、「自己の名をもって」および「業」とはどういうことか?

「自己の名をもって」とは?

この点について、判例では、下記のように言っています。

自己の名をもってとは、自己が法律上の商行為から生ずる権利義務の帰属主体になることを言います。(大判大8.5.19)

例えば、Aが、ビールメーカーBからビールを1ケース購入する契約をしたとします。
この場合、
「法律上の商行為」=「ビール1ケースを購入する契約」
「権利義務」=「ビール1ケースを引き渡してもらえる権利」「代金を支払う義務」
「帰属主体」=A(Aが上記権利義務を負う)

つまり、Aは自己の名をもって、商行為を行ったということです。

また、その者自身が現実に営業活動をする必要はなく、他人に実行させることもできます。例えば、Aの従業員が行っても、Aは商人として、商行為をしていることになるわけです。

業とは?

とは、営利目的で、同種の業務を、反復的かつ継続的に行うことを言います。

例えば、上記Aの事例でいうと、「Aが、繰り返しビールの仕入れを行うこと」は業に当たるということです。

単に、自分が飲むためにビール1ケースを買ったとしても、それは業ではありません。

擬制商人とは?

擬制商人とは、上記4条2項に規定されている内容です。

店舗その他これに類似する設備によって、
「①物品を販売することを業とする者」又は「②鉱業を営む者」は、
商行為を行うことを業としない者であっても、商人とみなされます。

店舗その他これに類似する設備

店舗その他これに類似する設備とは、例えば、自分の畑で採れた野菜を、その畑の端でテントを張って販売する場合の「テント張りの販売店」がこれに当たります。

商人資格の取得

自然人(ヒト)の場合、特定の営業を開始する目的で準備行為をした者は、その行為により営業を開始する意思を実現したものであり、これにより商人である資格を取得します。(最判昭33.6.19)

例えば、不動産会社を始めようと思って、営業車を購入することは、準備行為に当たります。

そして、営業の準備行為は、相手方だけでなく、それ以外の者にも、客観的に開業準備行為を認められるものであることが必要です。(最判昭47.2.24)

未成年者、成年被後見人が商人として営業を行うときは、登記が必要です。

商人資格の喪失

自然人は、営業目的行為の終了時でなく、残務処理の終了時に商人資格を失います

小商人

小商人とは、商人のうち、営業の用に供する財産につき最終の営業年度に係る貸借対照表(最終の営業年度がない場合にあっては、開業時における貸借対照表)に計上した額が、50万円を超えないものをいいます。

商行為

商行為には、大きく分けて①絶対的商行為、②営業的商行為、③附属的商行為の3つに分けることができます。

先にポイントだけまとめると下表のとおりです。

絶対的商行為 営業としてしたか否かを問わず、商行為となる
商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、商行為となる
営業的商行為 営利目的かつ反復継続して行うことで初めて商行為となる
附属的商行為 前提として「商人の行為」である
営業開始前であっても、商人資格を取得したとされれば、開業準備行為も商行為となる

絶対的商行為

絶対的商行為とは、行為自体の客観的性質によって商行為とされる行為を言います。

行為自体に営利性が強いので、営業としてしたか否かを問わず、商行為とされます。

この絶対的商行為は、商人ではない者が、1回だけ行った場合でも、商行為として商法が適用されます。

例えば、下記のようなものが絶対的商行為に当たります。

商法第501条(絶対的商行為とは?)
次に掲げる行為は、商行為とする。

  1. 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為
  2. 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為
  3. 取引所においてする取引
  4. 手形その他の商業証券に関する行為

1については、高く売る目的で、安く買う行為や、安く買ったものを高く売る行為です。

2については、先に高く売っておいて(売る契約をしておく)、その後、安く買う行為

3については、証券取引所や商品取引所での、有価証券や商品の取引(トレーダーと呼ばれる人)

4については、手形を振出したり、裏書をする行為(製造業者がよく行う行為ですが、分からなくても大丈夫です。)

営業的商行為

営業的商行為は下記のような行為ですが、営利目的反復継続して行うことで初めて商行為となります。

下記内容をさらっと読めばある程度は分かると思います。細かい理解までは不要です。

商法第502条(営業的商行為とは?)
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。

  1. 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為
  2. 他人のためにする製造又は加工に関する行為
  3. 電気又はガスの供給に関する行為
  4. 運送に関する行為
  5. 作業又は労務の請負
  6. 出版、印刷又は撮影に関する行為
  7. 客の来集を目的とする場屋における取引
  8. 両替その他の銀行取引
  9. 保険
  10. 寄託の引受け
  11. 仲立ち又は取次ぎに関する行為
  12. 商行為の代理の引受け
  13. 信託の引受け

附属的商行為

附属的商行為とは、商人がその営業のためにする補助的行為を言います。

前提として、「商人の行為」であることが必要ですが、営業開始前であっても、商人資格を取得したとされれば、開業準備行為も、商人の最初の附属的商行為となります。

例えば、不動産会社を経営するために、事務所(ビルの1室)を借りる行為も附属的行為です。

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