外国人の人権に関する次の文章のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。
- 国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反するが、この自由の保障はわが国に在留する外国人にまで及ぶものではない。
- わが国に在留する外国人は、憲法上、外国に一時旅行する自由を保障されているものではない。
- 政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。
- 国の統治のあり方については国民が最終的な責任を負うべきものである以上、外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない。
- 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、その政治的判断によってこれを決定することができる。
【解説】
1.国家機関が国民に対して正当な理由なく指紋の押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反するが、この自由の保障はわが国に在留する外国人にまで及ぶものではない。
1・・・妥当ではない
判例では
「指紋は、誰一人同じものはなく、一生涯変わらない。搾取された指紋の利用方法次第では、プライバシーの侵害の危険性もある。
そのため、何人もみだりに「指紋押捺を強制されない自由」を有しているといえる。
したがって、国家機関が正当な理由なく指紋押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反して許されない。
そして、指紋押捺を強制されない自由は、外国人にも等しく及ぶ。」
と判示しています。
したがって、本肢の「外国人にまで及ぶものではない」が妥当ではないです。
判例では
「指紋は、誰一人同じものはなく、一生涯変わらない。搾取された指紋の利用方法次第では、プライバシーの侵害の危険性もある。
そのため、何人もみだりに「指紋押捺を強制されない自由」を有しているといえる。
したがって、国家機関が正当な理由なく指紋押捺を強制することは、憲法13条の趣旨に反して許されない。
そして、指紋押捺を強制されない自由は、外国人にも等しく及ぶ。」
と判示しています。
したがって、本肢の「外国人にまで及ぶものではない」が妥当ではないです。
2.わが国に在留する外国人は、憲法上、外国に一時旅行する自由を保障されているものではない。
2・・・妥当
判例によると
「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されていない。 」
と判示しています。
よって、本肢は妥当です。
判例によると
「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されていない。 」
と判示しています。
よって、本肢は妥当です。
3.政治活動の自由は、わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。
3・・・妥当
判例では
原則、外国人にも政治活動の自由を認めています。
ただし、例外として、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動などは、政治活動の自由の保障は及ばない、としています。
よって、本肢は妥当です。
判例では
原則、外国人にも政治活動の自由を認めています。
ただし、例外として、わが国の政治的意思決定または、その実施に影響を及ぼす活動などは、政治活動の自由の保障は及ばない、としています。
よって、本肢は妥当です。
4.国の統治のあり方については国民が最終的な責任を負うべきものである以上、外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない。
4・・・妥当
判例では、
「国民主権の原理に基づいて、国・地方公共団体による統治のあり方は、国民が最終的な責任を負うべきものである」ことに照らして、原則、日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されている。」
と判示しており、
本肢の通り、前半部分だけでなく、「外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない」という点も妥当です。
判例では、
「国民主権の原理に基づいて、国・地方公共団体による統治のあり方は、国民が最終的な責任を負うべきものである」ことに照らして、原則、日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されている。」
と判示しており、
本肢の通り、前半部分だけでなく、「外国人が公権力の行使等を行う地方公務員に就任することはわが国の法体系の想定するところではない」という点も妥当です。
5.社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、その政治的判断によってこれを決定することができる。
5・・・妥当
判例では、
「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、
国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができる。
そして、限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許される」
と判示しています。
よって、本肢は妥当です。
判例では、
「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、
国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができる。
そして、限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許される」
と判示しています。
よって、本肢は妥当です。
平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 外国人の人権 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 基本的人権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 憲法9条 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 司法の限界 | 問36 | 商法 |
問7 | 財政 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政立法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |