事情判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 事情判決は、処分取消しの請求を棄却する判決であるが、その判決理由において、処分が違法であることが宣言される。
- 事情判決においては、公共の利益に著しい影響を与えるため、処分の取消しは認められないものの、この判決によって、損害の賠償や防止の措置が命じられる。
- 事情判決に関する規定は、義務付け訴訟や差止訴訟にも明文で準用されており、これらの訴訟において、事情判決がなされた例がある。
- 事情判決に関する規定は、民衆訴訟に明文では準用されていないが、その一種である選挙の無効訴訟において、これと同様の判決がなされた例がある。
- 土地改良事業が完了し、社会通念上、原状回復が不可能となった場合、事業にかかる施行認可の取消訴訟は、訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない。
【解説】
1.事情判決は、処分取消しの請求を棄却する判決であるが、その判決理由において、処分が違法であることが宣言される。
1・・・妥当ではない
取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、
原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができます(事情判決という)。
この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければなりません(行政事件訴訟法31条)。
本肢は「判決理由において」が妥当ではありません。
正しくは「主文において」です。
取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、
原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができます(事情判決という)。
この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければなりません(行政事件訴訟法31条)。
本肢は「判決理由において」が妥当ではありません。
正しくは「主文において」です。
2.事情判決においては、公共の利益に著しい影響を与えるため、処分の取消しは認められないものの、この判決によって、損害の賠償や防止の措置が命じられる。
2・・・妥当ではない
選択肢1の解説の通り、事情判決については、「処分または裁決が違法」であることの宣言を受けることはできます。
しかし、判決の中で、「損害の賠償や防止の措置が命じられる」ことはありません。損害賠償を求めるのであれば、別途、国家賠償請求をする必要があります。
選択肢1の解説の通り、事情判決については、「処分または裁決が違法」であることの宣言を受けることはできます。
しかし、判決の中で、「損害の賠償や防止の措置が命じられる」ことはありません。損害賠償を求めるのであれば、別途、国家賠償請求をする必要があります。
3.事情判決に関する規定は、義務付け訴訟や差止訴訟にも明文で準用されており、これらの訴訟において、事情判決がなされた例がある。
4.事情判決に関する規定は、民衆訴訟に明文では準用されていないが、その一種である選挙の無効訴訟において、これと同様の判決がなされた例がある。
4・・・妥当ではない
事情判決(31条)については、民衆訴訟には準用されています(行政事件訴訟法43条)。
よって、妥当ではありません。
そして、「最大判昭51.4.14:衆議院議員定員不均衡訴訟(選挙の無効訴訟)」で、事情判決の法理が適用されて無効となっています。
事情判決(31条)については、民衆訴訟には準用されています(行政事件訴訟法43条)。
よって、妥当ではありません。
そして、「最大判昭51.4.14:衆議院議員定員不均衡訴訟(選挙の無効訴訟)」で、事情判決の法理が適用されて無効となっています。
5.土地改良事業が完了し、社会通念上、原状回復が不可能となった場合、事業にかかる施行認可の取消訴訟は、訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない。
5・・・妥当ではない
判例では
「訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了(土地改良事業が完了)したため、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、不可能であるとしても、本件の事情は、行政事件訴訟法31条(事情判決)の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める原告Xの法律上の利益を消滅させるものではない」と判示しています。
したがって、本肢の場合、訴えの利益は消滅しないし、事情判決の余地もあるので
「訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない」は、妥当ではありません。
判例では
「訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了(土地改良事業が完了)したため、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、不可能であるとしても、本件の事情は、行政事件訴訟法31条(事情判決)の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める原告Xの法律上の利益を消滅させるものではない」と判示しています。
したがって、本肢の場合、訴えの利益は消滅しないし、事情判決の余地もあるので
「訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない」は、妥当ではありません。
平成27年度(2015年度)|行政書士試験の問題と解説
| 問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
|---|---|---|---|
| 問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
| 問3 | 外国人の人権 | 問33 | 民法:債権 |
| 問4 | 基本的人権 | 問34 | 民法:債権 |
| 問5 | 憲法9条 | 問35 | 民法:親族 |
| 問6 | 司法の限界 | 問36 | 商法 |
| 問7 | 財政 | 問37 | 会社法 |
| 問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
| 問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
| 問10 | 行政立法 | 問40 | 会社法 |
| 問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
| 問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
| 問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
| 問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
| 問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
| 問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
| 問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
| 問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
| 問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
| 問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
| 問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
| 問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
| 問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
| 問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
| 問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・情報通信 |
| 問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
| 問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
| 問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
| 問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
| 問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |



