テキスト

最判平元.4.13:特急料金改定の認可処分

論点

  1. 特急料金改定の認可処分の取消しを求める訴訟において、特急利用者に原告適格が認められるか?

事案

鉄道会社である株式会社Aは、陸運局長Yから特別急行料金(特急料金)を値上げする旨の認可処分を受けた。そこで、A社の通勤定期乗車券を購入して日常的にA社の特急に乗車していたXらが、同認可処分の取消しを求めて提訴した。

判決

特急料金改定の認可処分の取消しを求める訴訟において、特急利用者に原告適格が認められるか?

認められない

地方鉄道法21条は、地方鉄道における運賃、料金の定め、変更につき監督官庁の認可を受けさせることとしている。

そして、同条に基づく認可処分そのものは、本来、当該地方鉄道の利用者の契約上の地位に直接影響を及ぼすものではなく、このことは、その利用形態のいかんにより差異を生ずるものではない。

また、同条の趣旨は、もっぱら公共の利益を確保することにあるのであって、当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することにあるのではなく、他に同条が当該地方鉄道の利用者の個別的な権利利益を保護することを目的として認可権の行使に制約を課していると解すべき根拠はない

そうすると、たとえXらがA鉄道株式会社の路線の周辺に居住する者であって通勤定期券を購入するなどしたうえ、日常同社が運行している特別急行旅客列車を利用しているとしても、Xらは、本件特別急行料金の改定(変更)の認可処分によつて自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということができず、右認可処分の取消しを求める原告適格を有しないというべきである。

したがって、本件訴え(認可処分取消しの訴え)は不適法である。

判決文の全文はこちら>>

最判平元.2.17:航空法に基づく定期航空運送事業免許処分

論点

  1. 定期航空運送事業免許に基づき路線を航行する航空機の騒音被害に苦しめられる周辺住民は、当該免許処分の取消訴訟の原告適格を有するか?

事案

新潟空港について、昭和54年12月に運輸大臣(現、国土交通大臣)Yが新潟―小松―ソウル間の定期航空運送事業免許をAに与えた。

その結果、空港周辺に居住する住民Xらが、騒音により健康または生活上の利益が侵害されると主張し、その取消しを求めた。

判決

定期航空運送事業免許に基づき路線を航行する航空機の騒音被害に苦しめられる周辺住民は、当該免許処分の取消訴訟の原告適格を有するか?

→有する

取消訴訟の原告適格について規定する行政事件訴訟法九条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。

そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規及びそれと目的を共通する関連法規の関係規定によって形成される法体系の中において、当該処分の根拠規定が、当該処分を通して右のような個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置付けられているとみることができるかどうかによって決すべきである。

本件についてみると、航空法は、「国際民間航空条約の規定」並びに「同条約の附属書」として採択された標準、方式及び手続に準拠しているものであるが、航空機の航行に起因する障害の防止を図ることをその直接の目的の一つとしている(法一条)。

また、航空運送事業の免許権限を有する運輸大臣は、他方において、公共用飛行場の周辺における航空機の騒音による障害の防止等を目的とする公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律三条に基づき、公共用飛行場周辺における航空機の騒音による障害の防止・軽減のために必要があるときは、航空機の航行方法の指定をする権限を有しているのであるが、同一の行政機関である運輸大臣が行う定期航空運送事業免許の審査は、関連法規である同法の航空機の騒音による障害の防止の趣旨をも踏まえて行われることが求められるといわなければならない。

以上のような航空機騒音障害の防止の観点からの定期航空運送事業に対する規制に関する法体系をみると、法は、前記の目的を達成する一つの方法として、あらかじめ定期航空運送事業免許の審査の段階において、当該路線の使用飛行場、使用航空機の型式、運航回数及び発着日時など申請に係る事業計画の内容が、航空機の騒音による障害の防止の観点からも適切なものであるか否かを審査すべきものとしているといわなければならない。

つまり、航空法は、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によつて著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるのである。

したがって、新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の一日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。

判決文の全文はこちら>>

最判昭53.3.14:主婦連ジュース事件

論点

  1. 景表法に基づく不服申立について、一般消費者に不服申立人適格が認められるか?

事案

公正取引委員会Yは、社団法人日本果汁協会らの申請に基づき、昭和46年3月、果実飲料等の表示に関する公正競争規約を認定した。

これに対して、主婦連合会Xは、この規約の認定は「不当景品類及び不当表示防止法(景表法)」の要件に該当していないとして、Yに不服申し立てをした。

判決

景表法に基づく不服申立について、一般消費者に不服申立人適格が認められるか?

→認められない

一般消費者も国民を消費者としての側面からとらえたものというべきであり、景表法の規定により一般消費者が受ける利益は、公正取引委員会による同法の適正な運用によって実現されるべき公益の保護を通じ国民一般が共通してもつにいたる抽象的、平均的、一般的な利益である。

言い方をかえると、同法の規定の目的である公益の保護の結果として生ずる反射的な利益ないし事実上の利益であって、本来私人等権利主体の個人的な利益を保護することを目的とする法規により保障される法律上保護された利益とはいえないものである。

もとより、一般消費者といっても、個々の消費者を離れて存在するものではないが、景表法上かかる個々の消費者の利益は、同法の規定が目的とする公益の保護を通じその結果として保護されるべきものである。

言い方をかえると、公益に完全に包摂されるような性質のものにすぎないと解すべきである。

したがって、仮に、公正取引委員会による公正競争規約の認定が正当にされなかったとしても、一般消費者としては、景表法の規定の適正な運用によて得られるべき反射的な利益ないし事実上の利益が得られなかったにとどまり、その本来有する法律上の地位には、なんら消長はない(変化はない)といわなければならない。

そこで、単に一般消費者であるというだけでは、公正取引委員会による公正競争規約の認定につき景表法による不服申立をする法律上の利益をもつ者であるということはできず、不服申立人適格は認められない

判決文の全文はこちら>>

最判昭37.1.19:公衆浴場既存経営者の原告適格

論点

  1. 既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可処分の無効確認を求める訴えの利益を有するか?

事案

Xは、京都市内に公衆浴場を経営していた。

そして、京都府知事YがAに対して新たに営業許可を与えたが、Aの公衆浴場は、Xの公衆浴場から最短距離208mにすぎないところにあった。

そのため、Xは、YがAに与えた営業許可は、条例に定められた適正配置基準に違反するとして、処分の無効確認を求めて出訴した。

判決

既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可処分の無効確認を求める訴えの利益を有するか?

訴えの利益を有する

公衆浴場法は、公衆浴場の経営につき許可制を採用し、第2条において、「設置の場所が配置の適正を欠く」と認められるときは許可を拒み得る旨を定めている。

その立法趣旨は、以下の通りである

  • 公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要欠くことのできない、多分に公共性を伴う厚生施設である。
  • そして、もしその設立を業者の自由に委せて、何等その偏在及び濫立を防止する等その配置の適正を保つために必要な措置が講ぜられないときは、その偏在により、多数の国民が日常容易に公衆浴場を利用しようとする場合に不便を来たすおそれがある。
  • また、その濫立により、浴場経営に無用の競争を生じその経営を経済的に不合理となり、ひいて浴場の衛生設備の低下等好ましからざる影響を来たすおそれがある。
  • このようなことは、上記公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、出来る限り防止することが望ましいことである。
  • 従って、公衆浴場の設置場所が配置の適正を欠き、その偏在・濫立を来たすことは、公共の福祉に反するものであって、この理由により公衆浴場の経営の許可を与えないことができる旨の規定を設けた。

これら規定の趣旨から考えると公衆浴場法が許可制を採用し前述のような規定を設けたのは、主として「国民保健及び環境衛生」という公共の福祉の見地から出たものである。

同時に、無用の競争により経営が不合理化することのないように濫立を防止することが公共の福祉のため必要であるとの見地から、被許可者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図をも有するものであることは否定し得ないところである。

したがって、適正な許可制度の運用によって保護されるべき業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護される法的利益と解するを相当とする。

そして、本件処分によって侵害されたというXの利益は、事実上のものに過ぎないとはいえ、具体的な個人的利益であり、またその利益の侵害が直接的で、しかもこれによりXが重大な損害を蒙る(こうむる)ことは見易いところであるから、Xは本件訴訟の原告適格を有するものといわなければならない。

判決文の全文はこちら>>

最判平15.9.4:労災就学援護費の支給決定

論点

  1. 労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

Xは、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金受給者であり、その子Aのために労災就学援護費の支給を受けていた。

そして、Aが外国のB大学に進学したため、Xは、中央労働基準監督署長Yに、Aの学資にかかる労災就学援護費の支給申請をした。

これに対して、Yは、B大学が学校教育法1条所定の学校でないとの理由で、援護費を支給しない旨の決定をした。

そこで、Xは、当該決定の取消訴訟を提起した。

判決

労働基準監督署長が行う労災就学援護費の支給決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→あたる

働者災害補償保険法23条1項2号は、政府は、労働福祉事業として、遺族の就学の援護等、被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業を行うことができると規定し、同条2項は、労働福祉事業の実施に関して必要な基準は労働省令で定めると規定している。

これを受けて、労働者災害補償保険法施行規則1条3項は、労災就学援護費の支給に関する事務は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長が行うと規定している。

そして、「労災就学援護費の支給について」と題する労働省労働基準局長通達は、労災就学援護費は法23条の労働福祉事業として設けられたものであることを明らかにした上、その別添「労災就学等援護費支給要綱」において、労災就学援護費の支給対象者、支給額、支給期間、欠格事由、支給手続等を定めており、所定の要件を具備する者に対し、所定額の労災就学援護費を支給すること、労災就学援護費の支給を受けようとする者は、労災就学等援護費支給申請書を業務災害に係る事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければならず、同署長は、同申請書を受け取ったときは、支給、不支給等を決定し、その旨を申請者に通知しなければならないこととされている。

このような労災就学援護費に関する制度の仕組みにかんがみれば、法は、労働者が業務災害等を被った場合に、政府が、保険給付を補完するために、労働福祉事業として、保険給付と同様の手続により、被災労働者又はその遺族に対して労災就学援護費を支給することができる旨を規定しているものと解するのが相当である。

そして、被災労働者又はその遺族は、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければならず、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するものといわなければならない。

そうすると、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。(処分性を有する)

判決文の全文はこちら>>

最判平4.11.26:第二種市街地再開発事業計画の決定

論点

  1. 第二種市街地再開発事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

株式会社Xは、大阪市内の第二種市街地再開発事業の対象である地区内に土地建物を所有していた。

大阪市Yは、都市再開発法54条1項に基づき、当該事業の決定をし、公告をした。

そこで、X社は、本件事業計画決定の取消訴訟を提起した。

※第二種再開発事業では、土地や建物の所有権等は、施行者(Y)によって個別に買収または収用されてしまう、という効果が発生する。

判決

第二種市街地再開発事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→あたる

都市再開発法51条1項、54条1項は、市町村が、第二種市街地再開発事業を施行しようとするときは、設計の概要について都道府県知事の認可を受けて事業計画(以下「再開発事業計画」という。)を決定し、これを公告しなければならないものとしている。

そして、再開発事業計画の決定の公告をもって土地収用法26条1項の規定による事業の認定の告示とみなすものとしている。

したがって、再開発事業計画の決定は、その公告の日から、土地収用法上の事業の認定と同一の法律効果を生ずるものであるから(同法26条4項)、市町村は、右決定の公告により、同法に基づく収用権限を取得するとともに、その結果として、施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされることとなる。

しかも、この場合、都市再開発法上、施行地区内の宅地の所有者等は、契約又は収用により施行者(市町村)に取得される当該宅地等につき、公告があった日から起算して30日以内に、その対償の払渡しを受けることとするか又はこれに代えて建築施設の部分の譲受け希望の申出をするかの選択を余儀なくされるのである。

そうであるとすると、公告された再開発事業計画の決定は、施行地区内の土地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであって、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。(処分性を有する)

判決文の全文はこちら>>

最判昭57.4.22:工業地域指定の決定

論点

  1. 工業地域指定の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

工業地域とは?

工業地域とは、用途地域の一種です。用途地域とは、住居、商業、工業など市街地の大枠として、各地域をどのような地域にしていくのかを定めるものです。その中の一つに「工業地域」があります。工業地域に指定されると、病院や大学などの建設ができなくなるという一定の建築制限が発生します。

——-

そして、Xは、岩手県内に精神病院を経営し、将来その施設の拡張を予定していた。しかし、岩手県知事Yが都市計画法8条1項に基づいて、Xの経営する病院を含む地区を工業地域に指定した。

これにより、Xは、病院の拡張が困難になること、また病院としての環境が破壊されることなどを危惧し、上記「工業地域指定の決定」の無効確認あるいは取消しを求めて提訴した。

判決

工業地域指定の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→あたらない

都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用される。

このことにより、上記基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できない。

しかし、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。(個別具体的な処分とは言えないので、処分性を有しない

判決文の全文はこちら>>

最判平20.9.10:土地区画整理事業計画の決定

論点

  1. 都市計画事業の事業計画の決定に処分性は認められるか?

事案

Y市は、A鉄道の立体交差事業の一環として、上島駅の高架化と併せて、駅周辺の公共施設の整備改善等を図るため、土地区画整理事業を計画した。

そして、Y市は、知事Bに対して、事業計画の認可申請をし、Bからその認可を受けた。
(市町村が土地区画整理事業を行う場合、知事の認可が必要)

そして、Y市は、本件事業計画が決定した旨の公告を行った。

本件事業の施行地区内に土地を所有するXらは、本件事業は公共施設の整備改善および宅地の増進という土地区画法の事業目的を欠くものであると主張して、当該事業計画の決定の取消しを求めて提訴した。

判決

都市計画事業の事業計画の決定に処分性は認められるか?

→認められる

事業計画が決定されると、当該土地区画整理事業の施行によって施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかについて、一定の限度で具体的に予測することが可能になるのである。

そして、土地区画整理事業の事業計画については、いったんその決定がされると、特段の事情のない限り、その事業計画に定められたところに従って具体的な事業がそのまま進められ、その後の手続として、施行地区内の宅地について換地処分が当然に行われることになる。

そうすると、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。

また、換地処分を受けた宅地所有者等やその前に仮換地の指定を受けた宅地所有者等は、当該換地処分等を対象として取消訴訟を提起することができる。

しかし、換地処分等がされた段階では、実際上、既に工事等も進ちょくし、換地計画も具体的に定められるなどしており、その時点で事業計画の違法を理由として当該換地処分等を取り消した場合には、事業全体に著しい混乱をもたらすことになりかねない。

それゆえ、換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い

そうすると、事業計画の適否が争われる場合、実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。

以上によれば、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。

したがって、上記事業計画の決定は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。(処分性を有する

判決文の全文はこちら>>

最判平14.1.17:二項道路の一括指定の告示

論点

  1. 告示により一括して2項道路を指定することは、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

建築基準法42条の2項道路とは?

敷地の前にある道路の幅が、4m未満の場合、非常に狭くて、危ないです。そのため、2項道路(建築基準法42条2項に規定されている道路)に指定することにより、道路の幅を4m確保するために、道路沿いの敷地の一部が道路になってしまいます。そのため、敷地所有者としては、自分の土地の一部が道路になり、使えなくなるという不利益が生じるわけです。

奈良県知事Yは、県の告示により幅員4m未満1.8m以上の道を、建築基準法42条2項のみなし道路して一括で指定した。

Xは、所有地に建物を新築するに先立ち、その敷地に接し、その一部が2項道路に該当するかを建築主事Aに確認したところ、2項道路に該当する旨の回答を得た。

Xはこれを不服として、本件2項道路の指定処分が存在しないことの確認を求める訴訟を提起した。

判決

告示により一括して2項道路を指定することは、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→あたる

原判決(高裁判決)では、本件告示は、包括的に一括して幅員4m未満1.8m以上の道を2項道路とすると定めたにとどまり、本件通路部分等特定の土地について個別具体的にこれを指定するものではなく、不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定立するものにすぎないのであって、これによって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものでないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとし、本件訴えを不適法なものとして却下した。

かしながら、原審の上記判断は是認することができない。

その理由は次のとおりである。

本件告示によって2項道路の指定の効果が生じるものと解する以上、このような指定の効果が及ぶ個々の道は2項道路とされ、その敷地所有者は当該道路につき道路内の建築等が制限され(法44条)、私道の変更又は廃止が制限される(法44条)等の具体的な私権の制限を受けることになる

そうすると、特定行政庁による2項道路の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができる。

したがって、本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解すべきである。

判決文の全文はこちら>>

最判平21.11.26:保育所廃止条例の制定行為

論点

  1. 市の設置する特定の保育所で保育を受けている児童・保護者は、保育を受けることを期待しうる法的地位を有するか?
  2. 上記保育所を廃止する条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

事案

横浜市Yは、自らが設置する保育所のうち4つの保育所を平成16年3月31日かぎりで廃止する旨の条例を制定した。

本件改正条例の施行によって、当該保育所は廃止され、社会福祉法人が当該保育所の運営を引き継いだ。

これに対して保育所で保育を受けていた児童およびその保護者であるXらは、当該改正条例の制定行為は、「自らが選択した保育所において保育を受ける権利」を違法に侵害すると主張して、本件制定行為の取消訴訟を提起した。

判例

市の設置する特定の保育所で保育を受けている児童・保護者は、保育を受けることを期待しうる法的地位を有するか?

→有する

市町村は、児童の保護者から入所を希望する保育所等を記載した申込書を提出しての申込みがあったときは、やむを得ない事由がある場合を除いて、その児童を当該保育所において保育しなければならないとされている(児童福祉法24条1項~3項)。

こうした仕組みを採用したのは、女性の社会進出や就労形態の多様化に伴って、その保育所の受入れ能力がある限り、希望どおりの入所を図らなければならないこととして、保護者の選択を制度上保障したものと解される。

そして、Xらにおいては、保育所への入所承諾の際に、保育の実施期間が指定されることになっている。

したがって、特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有するものということができる。

上記保育所を廃止する条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?

→あたる

条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもない。

しかし本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものである。

そのため、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視することができる

また、市町村の設置する保育所で保育を受けている児童又はその保護者が、当該保育所を廃止する条例の効力を争って、当該市町村を相手に当事者訴訟ないし民事訴訟を提起し、勝訴判決や保全命令を得たとしても、これらは訴訟の当事者である当該児童又はその保護者と当該市町村との間でのみ効力を生ずるにすぎないから、これらを受けた市町村としては当該保育所を存続させるかどうかについての実際の対応に困難を来すことにもなる。

他方、処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において当該条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある

以上によれば、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。

判決文の全文はこちら>>