商法・会社法

場屋営業

場屋営業(じょうおくえいぎょう)とは、お客様が集まる設備を設けて、そのお客様にその設備を利用させることを目的とする営業をいいます。例えば、旅館、飲食店、銭湯などです。

寄託を受けた物品に関する責任

寄託とは、「預ける」という意味です。

場屋営業者は、お客様から預かったモノ(寄託を受けた物品)を滅失(無くしたり)または毀損させた(壊した)場合、不可抗力が原因であることを証明できない限り損害賠償責任を負います。(594条1項

分かりやすく言えば、

場屋営業者は、注意していたことを証明できたとしても、不可抗力が原因でない場合は、損害賠償責任を負います。

また、場屋営業者が不可抗力が原因であることを証明できれば、損害賠償責任を免れます

寄託を受けていない物品に関する責任

場屋営業者は、お客様から預かっていないモノであっても、お客様が場屋内(施設内)に携帯したモノが、場屋営業者またはその使用人の不注意によって滅失または毀損したときは、場屋営業者は損害賠償責任を負います。

分かりやすく言えば、

お客様から預かっていない場合でも、場屋営業者または従業員の不注意で、そのモノが壊れたり、なくなったりした場合、場屋営業者は責任を負わなければならない、ということです。

逆を言えば、注意をしていれば、場屋営業者は責任を負いません

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仲立人、問屋、代理商の違い

仲立人、問屋、代理商の違い

先に、仲立人、問屋、代理商の違いの表を示して、あとで細かく解説していきます。

仲立人 代理商 問屋
営業の種類 媒介 媒介・代理 取次
契約相手(依頼者) 不特定 特定 不特定
権利義務の帰属 帰属しない 帰属しない 帰属する

仲立人

商法第543条(仲立人)
仲立人とは他人間の商行為の媒介を為すを業とする者をいう。

  • 仲立人は、媒介(仲介)するだけで、当事者となって契約することはしません。
    分かりやすく言えば、Aさんがモノを買うために、仲立人が媒介を行った場合、代金を支払う義務はAさんにあり、仲立人は支払い義務を負わないということです。
    つまり、権利義務の主体はAさんにあり、仲立人は権利義務の主体ではないということです。
  • 仲立人は、不特定多数の商人と媒介契約をすることができます。

仲立人の具体例

  • 顧客とホテルや旅館の仲を取り持つ旅行業者
  • 顧客と不動産オーナーとの仲を取り持つ不動産仲介業者

代理商

代理商とは、特定の商人のために,継続的にその営業の部類に属する取引の「代理または媒介」をなすことを業とする者を言います。

  • 代理商は、取引の代理を業とする締約代理商と、媒介を業とする媒介代理商とがある。代理商は、媒介または代理をするだけなので、権利義務の主体にはなりません。分かりやすく言えば、Aさんがモノを買うために、代理商が媒介や代理を行った場合、代金を支払う義務はAさんにあり、代理商は支払い義務を負わないということです。
  • 代理商は特定の商人と代理商契約(媒介もしくは代理)を締結する。

代理商の具体例

  • 保険代理店

仲立人と代理商の違い

仲立人は、不特定多数の商人等のために活動する者で

代理商は、特定の商人のために活動する者です。

問屋(といや)

商法第551条(問屋)
問屋とは自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入を為すを業とする者をいう

  • 問屋は、他人のために、自分が売主・買主となって取引を行います。そのため、例えば、Aのために問屋がモノを買った場合、支払い義務は問屋が負います。つまり、権利義務の主体は問屋になるということです。
  • 問屋は、不特定多数の者のために取引を行える。

問屋の具体例

  • 証券会社(顧客の依頼で、証券市場で株式の売買をする)

問屋(とんや)と問屋(といや)の違い

問屋の読み方は「といや」です。

一般的に知られている「問屋:とんや」とは、違います。一般的な「とんや」は、卸売業を行っている者を言います。例えば、おもちゃ問屋とかです。これらの「とんや」は「といや」ではありません。

法律的にみれば,自己の名で売買をするのは共通しますが、取引の損益が誰に帰属するかが異なります。

「とんや」の場合、とんやAが、商品をBから100円で仕入れて、それをCに120円で売ったとすると、問屋は20円の利益を得ます。これは、他人のために物品を売っているわけではありません。自分のために売ったり買ったりしています。

一方、「といや」の場合、といやD(証券会社)が、委託者Eから、120円で売るよう頼まれて、といやD(証券会社)名義で、それをFに売ります。この場合、といやD(証券会社)は、委託者Eから手数料をもらいます。言い換えると、問屋(といや)取次を行っています。

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商事売買と民事売買の違い

商事売買とは、商人間の売買をいい、商法に特則が設けられています。そのため、一部民法と異なる部分があるので、その点を解説していきます。

民事売買 商事売買
適用範囲 商人以外―商人以外
商人―商人以外
商人―商人
供託と競売 原則:供託
例外:競売
供託にするか競売にするか売主が選択
競売の際の裁判所の許可 必要 不要
定期売買における解除の方法 催告は不要
解除の意思表示は必要
催告も解除の意思表示も不要
買主の検査・通知義務 なし あり
買主の目的物供託義務 なし あり

供託と競売

民法では、1.債権者の弁済受領拒絶、2.債権者の受領不能、3.債権者不確知の場合に供託することができると規定されています。それに対して

商法では、1.債権者の弁済受領拒絶、2.債権者の受領不能の場合、供託するか、もしくは相当期間を定めて催告した上で競売にかけることができると規定しています。

そして、目的物が「生の食料品」等のように損傷などにより価格の低下のおそれがあるものの場合は、催告せずに競売にかけることができます。

商法第524条(売主による目的物の供託及び競売)
商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない。
2 損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。
3 前二項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

改正民法第494条(供託)
弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
二 債権者が弁済を受領することができないとき。
2 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。

競売の際の裁判所の許可

民法については、裁判所の許可を得た上で競売にかけることができます。一方、

商法については、上記524条の通り、裁判所の許可なく競売にかけることができます

改正民法第497条(供託に適しない物等)
弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。
一 その物が供託に適しないとき。
二 その物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき。
三 その物の保存について過分の費用を要するとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、その物を供託することが困難な事情があるとき。

定期売買における解除の方法

民法では、解除する場合、解除の意思表示が必要です。

そして、定期売買の場合において、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合、催告なく解除できます。

例えば、成人式のために着物をレンタルし、成人式当日に着物を仕入れることができずレンタルすることができなかった場合、催告なく解除できます。一方、

商法では、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合、催告も解除の意思表示もなく、解除となります。

ただし、債権者が履行請求した場合は、解除させずに、契約を存続させます。

商法第525条(定期売買の履行遅滞による解除)
商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす。

改正民法第540条(解除権の行使)
契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2 前項の意思表示は、撤回することができない。

改正民法第542条(定期行為の履行遅滞による解除権)
契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。

買主の検査・通知義務

買主が、売買の目的物を受領したら、

原則、遅滞なく検査し、瑕疵を発見したら、直ちに売主に通知しなければなりません。
この通知をすれば、売主に責任追及ができます。

例外として、直ちに発見できない瑕疵は、6か月以内に瑕疵を発見して通知すれば、責任追及できます。

そして、検査や通知をしない場合、契約解除や代金減額請求、損害賠償請求はできなくなります。

このルールは、民法にはありません。

商法第526条(買主による目的物の検査及び通知)
商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
2 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が六箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。
3 前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。

買主の目的物供託義務

上記のように、買主が、売買の目的物を受領し、目的物に瑕疵があり、その旨を通知して解除をしたとき、目的物自体、買主のもとにあります。

この場合、買主は「瑕疵ある目的物」を保管もしくは供託しなければなりません

保管する際の費用は、売主負担です。

また、目的物が、生の食品のように損傷の恐れがあるときは、①裁判所の許可を得て、競売にかけて、代金を保管するか、もしくは②供託しなければなりません。

ただし、売主及び買主の営業所が同一の市町村の区域内にある場合は、買主に保管義務はないので、買主のもとにあることで、目的物が損傷しても、買主は責任を負いません。つまり、売主は早く取りに行きなさい!ということです。

商法第527条(買主による目的物の保管及び供託)
前条第1項に規定する場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない。ただし、その物について滅失又は損傷のおそれがあるときは、裁判所の許可を得てその物を競売に付し、かつ、その代価を保管し、又は供託しなければならない。
2 前項ただし書の許可に係る事件は、同項の売買の目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
3 第1項の規定により買主が売買の目的物を競売に付したときは、遅滞なく、売主に対してその旨の通知を発しなければならない。
4 前三項の規定は、売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の区域内にある場合には、適用しない。

商法第528条
前条の規定は、売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合における当該売主から買主に引き渡した物品及び売主から買主に引き渡した物品の数量が注文した数量を超過した場合における当該超過した部分の数量の物品について準用する。

<<商人間の留置権 | 匿名組合>>

商人間の留置権(牽連性:けんれんせい)

商法第521条(商人間の留置権)
商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは、債権者は、その債権の弁済を受けるまで、その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者の別段の意思表示があるときは、この限りでない。

ここでのポイントは3つです。

  1. 被担保債権は、商行為の取引によって生じた債権である
  2. 商行為により留置した留置物は、債務者所有である
  3. 「1の被担保債権」と「2の留置物」は同じ取引のものでなくてもよい

例えば、中古車の販売店Aが、車の修理業者BにA所有の車の修理を依頼した。その後、Bは車の修理を完了させて、Aに修理した車を引き渡した。しかし、修理代金を受け取っていない。つまり、修理業者Bは、Aに対して修理代金債権を有している(1を満たす)。

その後、中古車販売店Aが、BにA所有の別の車の修理を依頼して、Bに車を引き渡した。この場合、AB間の修理に関する契約は、商行為であり、Bが留置している車は、債務者A所有です(2を満たす)。

上記「Bの修理代金債権」と「現在Bが留置している車」は同じ取引ではありません。

これを「被担保債権と留置物との間に牽連性はない」と言います。分かりやすく言えば、関連性がないということです。これは上記ポイント3より、牽連性がなくても1、2を満たしていれば、留置権は成立します。

したがって、上記の場合、修理業者Bは、Aの車を留置することが可能です。

<<商法における流質契約 | 商事売買と民事売買の違い>>

商事債権の法定利息と消滅時効

商法における法定利息

商法第513条(利息請求権)
商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息を請求することができる。
商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以後の法定利息を請求することができる。

商人と商人がお金の貸し借りをした場合、特約がなかったとしても、貸主は当然に法定利息改正民法の3%適用)を請求できます。

個人と商人がお金の貸し借りをした場合は、民法が適用されます。つまり、特約がなければ無利息となります。

※2020年(令和2年)3月31日までは、商法第514条で、法定利息は年6分(6%)とされていたが、2020年4月1年以降は、上記の通り改正民法の3分(3%)が適用されます。

商法における債権の消滅時効

2020年3月31日までは、商法第522条で、商行為によって生じた債権の消滅時効は、原則、5年とされていました。しかし、民法改正に伴い、商法第522条が廃止され、改正民法166条が適用されます。

改正民法166条 債権は,次に掲げる場合には,時効によって消滅する。

  1. 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
  2. 権利を行使できるときから10年間行使しないとき。

利息制限法の制限を超える利息の消滅時効

判例では、利息制限法の制限を超える利息等の不当利息返還請求権は、商行為性が否定され、消滅時効期間は10年としています(最判昭55.1.24)。

<<商人の報酬請求権 | 商法における流質契約>>

商法における流質契約

商法第515条(契約による質物の処分の禁止の適用除外)
民法第349条 の規定は、商行為によって生じた債権を担保するために設定した質権については、適用しない。

民法第349条(契約による質物の処分の禁止)
質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。

流質契約とは?

流質は「りゅうしち」と読みます。

例えば、債務者Aが、債権者Bから10万円を借り、債務者Aは、債権者Bのために自己所有の時計に質権を設定しました。(債権者B=質権者、債務者A=質権設定者)

これによって時計は、債権者Bが占有することになります。

そして、弁済期前にAB間の契約で、「弁済期にAが返済できなかった場合は、直ちに時計の所有権は債権者Bに移転する」というような契約があった場合、弁済期を経過した時点で、時計の所有権は、債権者Bに移転することになります。

この契約を流質契約と言います。

商法では流質契約も有効

民法では、上記349条の通り、流質契約は禁止されています。

一方、商法では、民法349条の規定は適用されないので、流質契約も有効となります。

<<商人間の留置権 |

商事契約の成立

対話および隔地者間による契約成立

商法第507条(対話者間における契約の申込み)
商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

商法第508条(隔地者間における契約の申込み)
商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
2 民法第523条の規定は、前項の場合について準用する。

民法第523条
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。

対話による申込み

商人が対話の中で申込をした場合、直ちに相手方が承諾をしないときは、申込の効力は失います。

つまり、相手方が対話の中で承諾をした場合は契約が成立し、後日承諾をしてもすでに申込の効力が消滅しているため契約は成立しません。

隔地者間による申込み

隔地者間とは、遠く離れた人同士の間の話です。

例えば、東京に住むAと大阪に住むBがいたとします。
Aが、承諾の期間を定めないで契約の申込みし、Bが相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、Aの申込みは、その効力を失います
そして、相当期間を過ぎた後にBが「承諾の通知」をした場合、Aは「承諾の通知」を「Bからの申込」とみなすことができ、AがBに対して承諾をすれば、契約は成立します。

諾否通知義務

商法第509条(契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)
商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。
2 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。

例えば、商人Aと商人Bは、頻繁に取引をしていました。AからBに対して申込がなされた場合、Bは、遅滞なく、「Aの申込」を承諾するか否かをAに通知しなければなりません。

もし、Bが上記通知をしない場合、Bは「承諾」したものとみなされ、AB間の契約は成立したことになります。

受領物品の保管義務

商法第510条(契約の申込みを受けた者の物品保管義務)
商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない。ただし、その物品の価額がその費用を償うのに足りないとき、又は商人がその保管によって損害を受けるときは、この限りでない。

①例えば、カバンメーカーAが販売店Bに対して「このカバンを取り扱ってくれませんか?」と申込みの際に、Bのお店にカバンを置いていきました。この場合、販売店Bは申込みを拒絶したとしても保管義務を負います。しかし、保管に関する費用は、申込者Aが負担します。

②例外として、保管費用がカバン本体価格よりも高くなるようなときや、販売店Bが保管することによって損害を受ける場合は、販売店Bの利益を守るために、保管義務は負わなくても大丈夫です。

行政書士の試験対策としては、上記①の原則が重要です!

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商行為の代理と委任

非顕名主義

商法第504条(商行為の代理)
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

商行為の代理人(例えば、支配人)が、本人の代理である旨の表示をしない場合(顕名をしない場合)でも、原則、本人に効力が生じます。(非顕名主義

そして、上記の通り、本人に効力が生じる場合であっても、相手方が善意無過失の場合、相手方は代理人に対して履行請求ができます。

商行為の委任

商法第505条(商行為の委任)
商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる。

商法第506条(商行為の委任による代理権の消滅事由の特例)
商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない。

民法では、本人が死亡すると代理権が消滅しますが
商法では、本人(商人)が死亡しても、支配人等の代理権は消滅しません

つまり、個人商人において営業主が死亡した場合に、支配人や代理商を用いて代理をさせていたとき、そのまま営業を続けられるということです。

<<支配人・表見支配人 | 商事契約の成立>>

支配人・表見支配人

支配人とは?

支配人とは、商人や会社に代わって、裁判上および裁判外の営業・人事等の一切の事を取りしきる権限を持つ者です。

支配人の選任

商法第20条(支配人)
商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。

会社法第10条
会社(外国会社を含む。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。

そして、商人・会社は、支配人を選任して、その営業所(本店や支店)において、その営業・事業を行わせることができます。そして、会社が支配人を選任したときはその旨の登記をしなければなりません。

支配人の代理権

商法第21条(支配人)
支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
会社法11条も同様の規定になっています。

支配人は、商人・会社の代わりに営業・事業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限があります。

支配人は、裁判に関する権限も有しているので注意しましょう!

また、支配人の代理権に制限を加えたとしても、善意の第三者に対抗することはできません。例えば、「支配人は、建物の賃貸借契約を締結できない」と商人や会社と取り決めをしていたとしても、建物賃貸借契約の相手方がそのことを知らずに契約したのであれば、この契約は有効ということです。

支配人の競業の禁止

商法第23条(支配人の競業の禁止)
支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

  1. 自ら営業を行うこと。
  2. 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。
  3. 他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。
  4. 会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する。

支配人は、原則、上記1~4の内容を行ってはいけません。ただし、例外として、商人の許可を受けた場合は、行ってもよいです。

2は、競業避止義務といい、例えば、商人Aがホームページの作成事業を行っており、使用人BはAに雇われていた。使用人Bは、自らホームページ作成事業を立ち上げたり、他のホームページ作成業者Cに就職して、営業を行ったりしてはいけない、ということです。

また、支配人が、上記に競業避止義務に違反した場合、「支配人が得た利益」又は「第三者が得た利益」の額が損害額と推定され、損害賠償請求の対象となります。

つまり、上記事例で、使用人Bがホームページ作成業者を立ちあげて1000万円の利益をあげたら、商人Aは1000万円の損害賠償請求をBに対して行えます。

表見支配人

表見支配人とは、分かりやすくいうと、商業使用人のうち、支配人ではないが、支配人であるかのような肩書きを与えられている使用人のことを言います。

商法第24条(表見支配人)
商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

上記「商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称」とは、例えば「支配人・支店長・営業所長」等です。支配人ではないけど、上記のような名刺を持っていた場合、そのものは支配人とみなして、一切の裁判外の行為ができます。この者を表見支配人と言います。

ただし、取引の相手方が、実際は支配人でないことを知って(悪意)、取引した場合は、この取引は有効とはなりません

言い換えると、裁判外の行為に関しては、善意の相手方に対しては支配人と同一の権限を有するものとみなされます。

支配人と表見支配人の権限の違い

上記の通り、
支配人は、裁判上の行為も行えますが、
表見支配人は裁判上の行為は行えません

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