令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

地方自治体の概要と種類


地方自治体の一番分かりやすい具体例が都道府県や市町村です。しかし、行政書士で勉強する地方自治体は、もっと深い部分まで勉強していきます。まず、地方自治とは、地方の住民が、その地域を自主的に運営していくことを言います。そして、地方自治体は、国とは別の固有の法人格を持ち、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を持っています。

固有の法人格を持つため、例えば、地方自治体(例えば、都道府県や市町村)が、不動産の所有権を持ったり、裁判で、原告や被告となることができます。

地方公共団体の種類

上図の通り、普通地方公共団体は、都道府県と市町村の2つに分けることができるのですが、市町村の中の「市」には「政令で指定された都市(政令指定都市)」と「中核市」の2つと、それ以外の小さい市があります。行政書士の試験で出題されるのは、政令指定都市と中核市の違いなので、この辺りを勉強しておきます。

政令指定都市

政令指定都市とは、政令で指定する人口50万人以上の市で、都道府県に近い権限が与えられます。政令指定都市の具体例として、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、静岡市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、岡山市、広島市、福岡市、熊本市等があります。

政令指定都市は、市長の権限に属する事務を分掌させる(分ける)ため、条例で、その区域を分けて、区(行政区)を設ける義務があります。例えば、横浜市は、政令指定都市なので、西区、中区、南区といった感じで分けられています。そして、上記区にその事務所の長として区長を置く義務があります。

注意が必要なのは、この区は、東京都23区のような特別区とは違います。実際、横浜市西区と東京都中央区は、文字だけ見ると似ていますが、前者は特別区ではなく(法人格がない)、後者は特別区(法人格がある)です。

さらに、指定都市は、その行政の円滑な運営を確保するため必要があると認めるときは、市長の権限に属する事務のうち特定の区の区域内に関するものを総合区長に執行させるため、条例で、当該区に代えて総合区を設け、総合区の事務所又は必要があると認めるときはその出張所を置くことができる

行政区と総合区の違い

行政区 総合区
位置づけ 指定都市の内部組織
法人格 なし
議会 なし
選挙管理委員会 必ず設置しなければならない
法人格 なし
長の名称 区長 総合区長
長の身分 一般職(市の職員) 特別職(市の職員でなくてもよい)
長の専任 市長が職員から任命 市長が議会の同意を得て選任
任期 なし 4年
リコール なし あり

リコールとは、解職請求を指し、住民が、「この総合区長ではダメだ!」といった場合に、有権者総数の3分の1の連署により、選挙管理員会に解職請求をし、有権者による投票の過半数の同意により、総合区長をやめさせることができます。この点については、住民による「直接請求」の部分で解説します。

中核市

中核市とは、人口20万人以上の市で、政令で定める市を言います。指定都市が処理することができる事務のうち政令で定めるものを、中核市で処理します。

※「特例市」は平成27年の改正地方自治法により廃止された。

特別地方公共団体

ここからは特別地方公共団体に入っていきます。特別地方公共団体とは、普通地方公共団体以外のある特定の目的を達成するために設置されている組織を言います。

これには特別区地方公共団体の組合財産区の3つがあります。

特別区

特別区とは、東京都の区(23区)です。この特別区は固有の法人格を持ち、行政主体として、市に近い特徴を持っています。

そして、特別区は、原則、一般的に市町村が処理するものとされている事務を処理します。例外として、都(東京都)が一体的に処理するものとされているものは、都が処理します。

地方公共団体の組合

この地方公共団体の組合が非常にややこしいです。しかし、行政書士試験で出たら、得点したい部分です。

まず、地方公共団体の組合は、2つ以上の地方公共団体が事務を共同で処理するために設置するものです。例えば、「介護保険事業の認定や給付」、「ごみ処理事業」「消防事業」「上下水道事業」等です。

そして、地方公共団体の組合は一部事務組合と広域連合の2つがあり、この違いが頻出です。

一部事務組合と広域連合の違い
一部事務組合区 広域連合
種類 特別地方公共団体
構成団体 都道府県・市町村・特別区
※複合的一部事務組合は都道府県は加入できない
都道府県・市町村・特別区
設置許可 都道府県が加入する場合、総務大臣の許可
その他が加入する場合、知事の許可
が必要
解散 総務大臣または知事の「届出」が必要 総務大臣または知事の「許可」が必要
議会 必ず「議会」を設置する
議会の議員 規約で定める 選挙人の投票 or 議会の選挙
兼任 一部事務組合の議会の議員等は、当該一部事務組合の構成団体の議員・長・その他職員と兼ねることができる 広域連合の議会の議員等は、当該広域連合を組織する地方公共団体の議員・長・その他職員と兼ねることができる
長は不要 長は必ず設置する
選挙人の投票 or 議会の選挙
条例 独自の条例を制定できる
住民監査請求
住民訴訟
住民監査請求や住民訴訟の対象
知事の勧告 知事は、公益上必要と認める場合、「市町村・特別区」に「一部事務組合や広域連合」を設けるべきことを勧告できる

複合的一部事務組合とは?

一部事務組合は、共同処理する事務が1種類に限定されますが、複合的一部事務組合は、共同処理する事務が関連する複数のものを対象とします。例えば、「A市とB市の上水道事務」と「A市とB市の下水道事務」を共同で処理する場合です。

財産区

財産区とは、市町村や特別区が、「財産(山林、用水池、宅地等)を有し」若しくは「公の施設を設けている」場合、「その財産又は公の施設」の管理及び処分又は廃止の権限を持つ特別地方公共団体です。

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