当事者訴訟は、主観訴訟ではあるものの、これまで勉強してきた抗告訴訟ではありません。主観訴訟は、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指します。
そして、当事者訴訟は非常に分かりにくい訴訟なので、イメージを頭に入れることが重要です!
当事者訴訟とは?
当事者訴訟とは、①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。
上記、「①当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法律関係の当事者の一方を被告とするもの」が形式的当事者訴訟で、「②公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」が実質的当事者訴訟です。
上記を読んだだけでは全く意味が分からないと思いますので、具体例を出しながら解説していきます。
形式的当事者訴訟
例えば、Aの土地について、土地収用に関する収用委員会の裁決について,不服がある場合、本来、収用委員会の属する都道府県を被告として、収用裁決の取消しの訴えを提起します。
しかし、Aが収用自体は納得しているけど、収用に対する補償金額に不服がある場合があります。この場合、Aは補償額についてのみ争えばよいです。
そして、この補償額については、事業の起業者(事業を行う者)が決め、収用委員会が認定するのですが、補償額(損失補償額)に争いがある場合,土地を収用されたAと起業者との間で争います。
本来であれば,「補償額を認定した収用委員会の属する行政主体である都道府県」を被告として裁決を争う抗告訴訟によるべきです。
これが、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟」ということです。
しかし、補償金額については,補償金の支払いに関係する当事者間で直接争わせたほうが適切であるため、被告を起業者として訴訟を提起します。
これが、「法律関係の当事者の一方を被告とする」ということです。
上記訴えが、当事者訴訟の中の形式的当事者訴訟です。
上記は、土地を収用されたAが、「補償額が少なすぎる!」と主張する場合で、逆に起業者が「補償額が高すぎる!」と主張する場合、被告がAとなり、同じく形式的当事者訴訟で争います。
形式的当事者訴訟は、上記「収用における補償金の増額・減額の訴訟」 を具体例として覚えた方が早いです。
実質的当事者訴訟
次に実質的当事者訴訟を解説するのですが、形式的当事者訴訟と全く違うものに見えると思います。そのため、形式的当事者訴訟と実質的当事者訴訟は分けて考えた方がよいでしょう!つなげて考えると、逆に分かりづらくなります。
今から解説する具体例は、無効等確認訴訟でも勉強した内容です。
例えば、国家公務員Cが懲戒免職処分を受けた。Cは、この処分が無効であることを前提に、「公務員の地位確認訴訟」や「給料支払請求訴訟」を行うことができます。この訴えは、被告が国であるというだけで、内容としては、民事訴訟と同じです。
例えば、会社員Dが会社から不当解雇を受け、この解雇が無効であることを前提に、「社員たる地位の確認訴訟」を提起することは、民事訴訟です。
単に、「私人と私人の争い」ではなく「国と公務員」という公法上の法律関係なっているにすぎません。
このような訴訟が実質的当事者訴訟です。
まずは、具体例を覚えることが理解への第一歩なので、具体例を覚えていきましょう。
上記以外にも、
- 議員が除名処分を受けた場合の地位の確認を求める訴え
- 国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴え
- 選挙人たる地位の確認の訴え
- 憲法29条3項を直接根拠とする損失補償の訴え
実質的当事者訴訟と争点訴訟の違い
上記実質的当事者訴訟と争点訴訟は似ていますが、違います。
何が違うかというと、
実質的当事者訴訟は、私人と行政主体との争い(=行政訴訟)で、
争点訴訟は私人間の争い(=民事訴訟)です。
また、上図の通り、現在の法律関係の確認を求める訴え(実質的当事者訴訟や争点訴訟)では目的達成ができない場合に限って、無効等確認の訴え(無効確認訴訟)を提起できる点も併せて覚えておきましょう。
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