養子縁組とは?
養子縁組とは、親子関係のない者同士に、法律上の親子関係を成立させる制度です。
そして、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つがあり、このページでは「普通養子縁組」に絞って解説します。
まずは、普通養子縁組の要件を解説します。
※「養親」とは、養子縁組による親。養父母。また、養子の親として育てる人のこと
普通養子縁組の要件
- 養親が成年者であること(民法792条)
→満20歳に達していれば成年(民法4条)だが、満20歳に達していなくても婚姻をしている者は、成年とみなされる(民法753条)。 - 養子が「尊属または年長者」でないこと(民法793条)
→自分からみて年上の者や尊属に該当する者を養子にする事は出来ません。 - 後見人が被後見人を養子にする場合、家庭裁判所の許可が必要(民法794条)
- 配偶者がいる人が未成年者を養子にする場合は、夫婦共に養親になること(民法795条)
- 養親又は養子となる人が結婚している場合は、配偶者の同意を得ること(民法796条)
- 「養親となる人」と「養子となる人」がともに「養子縁組をする意思」があること
→養子となる人が15歳未満の場合は、法定代理人が代りに承諾できる(民法797条) - 養子となる人が未成年者の場合は、原則、家庭裁判所の許可が必要(民法798条)。
→養子が「自分の子(直系卑属)や配偶者の子」の場合は許可不要 - 養子縁組の届出をしていること(民法799条)
普通養子縁組の無効・取消し
普通養子縁組が無効となる場合(民法802条)
- 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
- 当事者が縁組の届出をしないとき。
→届出をしたけど、「当事者双方及び成年の証人2人以上の署名等がないだけ」であれば、縁組の効力は生じる。
養子縁組を取消しできる場合
- 養親が未成年者である場合=民法792条違反の縁組(民法804条)
- 養子が尊属又は年長者である場合=民法793条違反の縁組(民法805条)
- 後見人と被後見人との間の無許可縁組の場合=民法794条違反の縁組(民法806条)
- 配偶者の同意のない縁組の場合=民法796条違反の縁組(民法806条の2)
- 養子が未成年者である場合の無許可縁組の場合=民法796条違反の縁組(民法807条)
等
普通養子縁組の効果
嫡出子の身分の取得
- 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する(民法809条)
- 未成年者の養子は、養親が親権を持つ(民法818条)。
- 養親の相続権を持つ(実親子間・養親子間の両方の相続権を持つ)
養子の氏の取得
養子は、養親の氏(苗字)を使います。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を使う間は、定めた氏を使います(民法810条)。
普通養子縁組の離縁
普通養子縁組を解消するためには、「養親と養子が離縁に同意する協議離縁」か、「離縁の訴えをして裁判によって離縁する裁判離縁」があります。
協議離縁
- 養子が15歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者が養子に代わって協議をする(民法811条2項)
- 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、原則、夫婦が共にしなければなりません。(民法811条の2本文)。
裁判上の離縁
縁組の当事者の一方は、下記のいずれかに該当する場合、離縁の訴えを提起することができます(民法814条)。
- 他の一方から悪意で遺棄されたとき。
- 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき。
- その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
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作成中・・・参考条文
(養親となる者の年齢)
第792条 成年に達した者は、養子をすることができる。(尊属又は年長者を養子とすることの禁止)
第793条 尊属又は年長者は、これを養子とすることができない。(後見人が被後見人を養子とする縁組)
第794条 後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様とする。(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)
第795条 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。(配偶者のある者の縁組)
第796条 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。(十五歳未満の者を養子とする縁組)
第797条 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。(未成年者を養子とする縁組)
第798条 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。(婚姻の規定の準用)
第799条 第七百三十八条及び第七百三十九条の規定は、縁組について準用する。(縁組の届出の受理)
第800条 縁組の届出は、その縁組が第七百九十二条から前条までの規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。(外国に在る日本人間の縁組の方式)
第801条 外国に在る日本人間で縁組をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、第七百九十九条において準用する第七百三十九条の規定及び前条の規定を準用する。(縁組の無効)
第802条 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百九十九条において準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。(縁組の取消し)
第803条 縁組は、次条から第八百八条までの規定によらなければ、取り消すことができない。(養親が未成年者である場合の縁組の取消し)
第804条 第七百九十二条の規定に違反した縁組は、養親又はその法定代理人から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養親が、成年に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。(養子が尊属又は年長者である場合の縁組の取消し)
第805条 第七百九十三条の規定に違反した縁組は、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。(後見人と被後見人との間の無許可縁組の取消し)
第806条 第七百九十四条の規定に違反した縁組は、養子又はその実方の親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、管理の計算が終わった後、養子が追認をし、又は六箇月を経過したときは、この限りでない。
2 前項ただし書の追認は、養子が、成年に達し、又は行為能力を回復した後にしなければ、その効力を生じない。
3 養子が、成年に達せず、又は行為能力を回復しない間に、管理の計算が終わった場合には、第一項ただし書の期間は、養子が、成年に達し、又は行為能力を回復した時から起算する。(配偶者の同意のない縁組等の取消し)
第806条の2 第七百九十六条の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が、縁組を知った後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
2 詐欺又は強迫によって第七百九十六条の同意をした者は、その縁組の取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。(子の監護をすべき者の同意のない縁組等の取消し)
第806条の3 第七百九十七条第二項の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が追認をしたとき、又は養子が十五歳に達した後六箇月を経過し、若しくは追認をしたときは、この限りでない。
2 前条第二項の規定は、詐欺又は強迫によって第七百九十七条第二項の同意をした者について準用する。(養子が未成年者である場合の無許可縁組の取消し)
第807条 第七百九十八条の規定に違反した縁組は、養子、その実方の親族又は養子に代わって縁組の承諾をした者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養子が、成年に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。(婚姻の取消し等の規定の準用)
第808条 第七百四十七条及び第七百四十八条の規定は、縁組について準用する。この場合において、第七百四十七条第二項中「三箇月」とあるのは、「六箇月」と読み替えるものとする。
2 第七百六十九条及び第八百十六条の規定は、縁組の取消しについて準用する。(嫡出子の身分の取得)
第809条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。(養子の氏)
第810条 養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。(親権者)
第818条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。(協議上の離縁等)
第811条 縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
2 養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
3 前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
4 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項の父若しくは母又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
5 第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
6 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。(夫婦である養親と未成年者との離縁)
第811条の2 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。(婚姻の規定の準用)
第812条 第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離縁について準用する。この場合において、同条第二項中「三箇月」とあるのは、「六箇月」と読み替えるものとする。(離縁の届出の受理)
第813条 離縁の届出は、その離縁が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定並びに第八百十一条及び第八百十一条の二の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離縁の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離縁は、そのためにその効力を妨げられない。(裁判上の離縁)
第814条 縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。
一 他の一方から悪意で遺棄されたとき。
二 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。
三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
2 第七百七十条第二項の規定は、前項第一号及び第二号に掲げる場合について準用する。(養子が十五歳未満である場合の離縁の訴えの当事者)
第815条 養子が十五歳に達しない間は、第八百十一条の規定により養親と離縁の協議をすることができる者から、又はこれに対して、離縁の訴えを提起することができる。(離縁による復氏等)
第816条 養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
2 縁組の日から七年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。(離縁による復氏の際の権利の承継)
第817条 第七百六十九条の規定は、離縁について準用する。