国家賠償法1条1項の要件をみたす場合の責任の主体に関する次のア~エの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア.指定確認検査機関の建築確認処分に起因する私人の損害について、当該事務の帰属する地方公共団体は、国家賠償責任を負うことはない。
イ.都道府県の警察官の犯罪捜査が、検察官の犯罪の捜査の補助に係るものであっても、当該警察官の捜査に起因する私人の損害について、国が国家賠償責任を負うことはない。
ウ.児童福祉法に基づいて、都道府県が要保護児童を社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所させている場合、当該施設の職員の養育監護行為に起因する児童の損害について、当該事務の帰属する都道府県が国家賠償責任を負うことがある。
エ.都道府県の警察官が制服制帽を着用して職務行為を装い強盗した場合、被害者に対し当該都道府県が国家賠償責任を負うことがある。
- ア・ウ
- ア・エ
- イ・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
【答え】:5【解説】
ア.指定確認検査機関の建築確認処分に起因する私人の損害について、当該事務の帰属する地方公共団体は、国家賠償責任を負うことはない。
ア・・・妥当ではない
指定確認検査機関の建築確認処分に起因する私人の損害について、
判例によると「指定確認検査機関による建築確認に係る建築物について、建築確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、国家賠償責任を負う。」と判示しています。
指定確認検査機関の建築確認処分に起因する私人の損害について、
判例によると「指定確認検査機関による建築確認に係る建築物について、建築確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、国家賠償責任を負う。」と判示しています。
よって、本肢は妥当ではないです。
イ.都道府県の警察官の犯罪捜査が、検察官の犯罪の捜査の補助に係るものであっても、当該警察官の捜査に起因する私人の損害について、国が国家賠償責任を負うことはない。
イ・・・妥当ではない
判例によると、「都道府県警察の警察官がいわゆる交通犯罪の捜査を行うにつき故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えた場合において国家賠償法1条1項によりその損害の賠償の責めに任ずるのは、原則として当該都道府県であり、国は原則としてその責めを負うものではない。ただし、都道府県の警察官の犯罪捜査が、検察官が自ら行う犯罪の捜査の補助に係るものであるときは、例外的に、国が国家賠償責任を負う」
と判示しています。
判例によると、「都道府県警察の警察官がいわゆる交通犯罪の捜査を行うにつき故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えた場合において国家賠償法1条1項によりその損害の賠償の責めに任ずるのは、原則として当該都道府県であり、国は原則としてその責めを負うものではない。ただし、都道府県の警察官の犯罪捜査が、検察官が自ら行う犯罪の捜査の補助に係るものであるときは、例外的に、国が国家賠償責任を負う」
と判示しています。
本肢は例外に当たるので、国が国家賠償責任を負うことになるので、妥当ではないです。
ウ.児童福祉法に基づいて、都道府県が要保護児童を社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所させている場合、当該施設の職員の養育監護行為に起因する児童の損害について、当該事務の帰属する都道府県が国家賠償責任を負うことがある。
ウ・・・妥当
判例によると、「都道府県による児童福祉法の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の長及び職員は、国家賠償法1条1項の適用において都道府県の公権力の行使に当たる公務員に該当する。」と判示しています。
判例によると、「都道府県による児童福祉法の措置に基づき社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童を養育監護する施設の長及び職員は、国家賠償法1条1項の適用において都道府県の公権力の行使に当たる公務員に該当する。」と判示しています。
よって、当該施設の職員の養育監護行為に起因する児童の損害について、当該事務の帰属する都道府県は、国家賠償責任を負うことがあるので、妥当です。
エ.都道府県の警察官が制服制帽を着用して職務行為を装い強盗した場合、被害者に対し当該都道府県が国家賠償責任を負うことがある。
エ・・・妥当
判例によると、「巡査が、もっぱら自己の利をはかる目的で、制服着用の上、警察官の職務執行をよそおい、
被害者に対し不審尋問の上、犯罪の証拠物名義でその所持品を預り、しかも連行の途中、これを不法に領得するため所持の拳銃で同人を射殺したときは、
判例によると、「巡査が、もっぱら自己の利をはかる目的で、制服着用の上、警察官の職務執行をよそおい、
被害者に対し不審尋問の上、犯罪の証拠物名義でその所持品を預り、しかも連行の途中、これを不法に領得するため所持の拳銃で同人を射殺したときは、
国家賠償法第1条にいう、公務員がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合にあたるものと解すべきである。」
と判示しています。
よって、本肢の場合、当該警察官を管理する都道府県が国家賠償責任を負います。
したがって、妥当です。
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 新しい人権 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 参政権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 法改正により削除 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |