行政手続法が定める不利益処分についての規定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 行政手続法は、不利益処分を行うに当たって弁明の機会を付与する場合を列挙し、それら列挙する場合に該当しないときには聴聞を行うものと規定しているが、弁明の機会を付与すべき場合であっても、行政庁の裁量で聴聞を行うことができる。
- 行政庁が、聴聞を行うに当たっては、不利益処分の名あて人となるべき者に対して、予定される不利益処分の内容及び根拠法令に加え、不利益処分の原因となる事実などを通知しなければならないが、聴聞を公正に実施することができないおそれがあると認めるときは、当該処分の原因となる事実を通知しないことができる。
- 不利益処分の名あて人となるべき者として行政庁から聴聞の通知を受けた者は、代理人を選任することができ、また、聴聞の期日への出頭に代えて、聴聞の主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
- 文書閲覧許可や利害関係人の参加許可など、行政庁又は聴聞の主宰者が行政手続法の聴聞に関する規定に基づいてした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができ、また、それら処分を行う際には、行政庁は、そのことを相手方に教示しなければならない。
- 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、行政手続法に定める聴聞又は弁明の機会の付与の手続を執ることができないときは、これらの手続を執らないで不利益処分をすることができるが、当該処分を行った後、速やかにこれらの手続を執らなければならない。
【解説】
1.行政手続法は、不利益処分を行うに当たって弁明の機会を付与する場合を列挙し、それら列挙する場合に該当しないときには聴聞を行うものと規定しているが、弁明の機会を付与すべき場合であっても、行政庁の裁量で聴聞を行うことができる。
1・・・誤り
行政庁は、下記不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、聴聞の手続を執らなければならない(行政手続法13条1項1号)。
行政庁は、下記不利益処分をしようとする場合には、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、聴聞の手続を執らなければならない(行政手続法13条1項1号)。
- 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
- 1に規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
- 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
- 1から3までに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
上記に該当しない不利益処分の場合は「弁明の機会の付与」を執らなければなりません(行政手続法13条1項2号)
つまり、列挙しているのは聴聞を行う場合で、
列挙する場合に該当しないときには弁明の機会を付与するものと規定しています。
よって、聴聞と弁明の機会の付与が逆です。
2.行政庁が、聴聞を行うに当たっては、不利益処分の名あて人となるべき者に対して、予定される不利益処分の内容及び根拠法令に加え、不利益処分の原因となる事実などを通知しなければならないが、聴聞を公正に実施することができないおそれがあると認めるときは、当該処分の原因となる事実を通知しないことができる。
2・・誤り
行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければなりません(行政手続法15条1項)。
行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければなりません(行政手続法15条1項)。
- 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
- 不利益処分の原因となる事実
- 聴聞の期日及び場所
- 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
本肢のような「聴聞を公正に実施することができないおそれがあると認めるときは、当該処分の原因となる事実を通知しないことができる」というルールはないので、誤りです。
この点は関連ポイントを押さえておかないと失点する可能性が高いので個別指導でお伝えします!
3.不利益処分の名あて人となるべき者として行政庁から聴聞の通知を受けた者は、代理人を選任することができ、また、聴聞の期日への出頭に代えて、聴聞の主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
3・・・正しい
不利益処分の名あて人となるべき者として行政庁から聴聞の通知を受けた者は、代理人を選任することができます(行政手続法16条1項)。
そして、「上記通知を受けた者」又は「参加人」は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができます(行政手続法21条1項)。
よって、本肢は正しいです。
不利益処分の名あて人となるべき者として行政庁から聴聞の通知を受けた者は、代理人を選任することができます(行政手続法16条1項)。
そして、「上記通知を受けた者」又は「参加人」は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができます(行政手続法21条1項)。
よって、本肢は正しいです。
4.文書閲覧許可や利害関係人の参加許可など、行政庁又は聴聞の主宰者が行政手続法の聴聞に関する規定に基づいてした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができ、また、それら処分を行う際には、行政庁は、そのことを相手方に教示しなければならない。
4・・・誤り
行政庁又は主宰者が聴聞の規定に基づいてした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができません(行政手続法27条1項)。「聴聞の規定に基づいてした処分」とは、例えば、文書閲覧許可や利害関係人の参加許可です。よって、本肢は「不服申立てができる」となっているので誤りです。
行政庁又は主宰者が聴聞の規定に基づいてした処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができません(行政手続法27条1項)。「聴聞の規定に基づいてした処分」とは、例えば、文書閲覧許可や利害関係人の参加許可です。よって、本肢は「不服申立てができる」となっているので誤りです。
5.公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、行政手続法に定める聴聞又は弁明の機会の付与の手続を執ることができないときは、これらの手続を執らないで不利益処分をすることができるが、当該処分を行った後、速やかにこれらの手続を執らなければならない。
5・・・誤り
公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないときは、意見陳述のための手続(聴聞および弁明の機会の付与)を執らなくてもよいです(行政手続法13項2項1号)。そして、当該処分を行った後も、意見陳述のための手続は不要なので、誤りです。
公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、前項に規定する意見陳述のための手続を執ることができないときは、意見陳述のための手続(聴聞および弁明の機会の付与)を執らなくてもよいです(行政手続法13項2項1号)。そして、当該処分を行った後も、意見陳述のための手続は不要なので、誤りです。
平成25年度(2013年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
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問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 法の下の平等 | 問33 | 民法 |
問4 | 憲法と私法上の行為 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 権力分立 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法・精神的自由 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法等 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 法改正のより削除 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・社会 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・政治 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:債権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |