道路等についての最高裁判所の判決に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 道路の供用によって騒音や排気ガス等が生じ、当該道路の周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じていたとしても、このような供用に関連する瑕疵は、国家賠償法に定める「公の営造物の設置又は管理」上の瑕疵とはいえないから、道路管理者には国家賠償法上の責任は生じない。
- 公図上は水路として表示されている公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての外観を全く喪失し、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合であっても、行政庁による明示の公用廃止が行われない限り、当該水路は取得時効の対象とはなり得ない。
- 建築基準法の定める道路の指定は、一定の条件に合致する道を一律に指定する一括指定の方法でなされることもあるが、一括して指定する方法でした道路の指定であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであるから、当該指定は抗告訴訟の対象になる行政処分に当たる。
- 運転者が原動機付自転車を運転中に、道路上に長時間放置してあった事故車両に衝突して死亡した事故が発生した場合であっても、道路上の自動車の放置は、国家賠償法に定める「公の営造物の設置又は管理」上の瑕疵とはいえないから、道路の管理費用を負担すべき県には国家賠償法に基づく責任は認められない。
- 特別区の建築安全条例所定の接道要件が満たされていない建築物について、条例に基づいて区長の安全認定が行われた後に当該建築物の建築確認がされた場合であっても、後続処分たる建築確認の取消訴訟において、先行処分たる安全認定の違法を主張することは許されない。
【解説】
1.道路の供用によって騒音や排気ガス等が生じ、当該道路の周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じていたとしても、このような供用に関連する瑕疵は、国家賠償法に定める「公の営造物の設置又は管理」上の瑕疵とはいえないから、道路管理者には国家賠償法上の責任は生じない。
1・・・誤り
「最判平7.7.7」の事案によると、判例では
一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により受けた被害について、社会生活上受忍すべき限度を超え、道路の設置又は管理には瑕疵があるというべきであるとして、国家賠償請求を認めています。したがって、道路の周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じていたのであれば、道路の設置又は管理には瑕疵があるといえるため、道路管理者には国賠法上の責任が生じます。
「最判平7.7.7」の事案によると、判例では
一般国道等の道路の周辺住民がその供用に伴う自動車騒音等により受けた被害について、社会生活上受忍すべき限度を超え、道路の設置又は管理には瑕疵があるというべきであるとして、国家賠償請求を認めています。したがって、道路の周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じていたのであれば、道路の設置又は管理には瑕疵があるといえるため、道路管理者には国賠法上の責任が生じます。
2.公図上は水路として表示されている公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての外観を全く喪失し、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合であっても、行政庁による明示の公用廃止が行われない限り、当該水路は取得時効の対象とはなり得ない。
2・・・誤り
本肢は「最判昭51.12.24」の判例の内容です。
公共用財産が、長年の間、事実上、公の目的に供用されることなく放置され、
公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、
その物の上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されることもなく、
もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、
上記公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げないとしています。
言い換えると、上記の場合、取得時効の対象となるので誤りです。
本肢は「最判昭51.12.24」の判例の内容です。
公共用財産が、長年の間、事実上、公の目的に供用されることなく放置され、
公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、
その物の上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されることもなく、
もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、
上記公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げないとしています。
言い換えると、上記の場合、取得時効の対象となるので誤りです。
3.建築基準法の定める道路の指定は、一定の条件に合致する道を一律に指定する一括指定の方法でなされることもあるが、一括して指定する方法でした道路の指定であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであるから、当該指定は抗告訴訟の対象になる行政処分に当たる。
3・・・正しい
本肢は「最判平14.1.17」に関する内容です。
判例では、二項道路(建築基準法で定める道路)を一括で指定したとしても、個別・具体的な権利の制限を発生させるため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる、としています。
本肢は「最判平14.1.17」に関する内容です。
判例では、二項道路(建築基準法で定める道路)を一括で指定したとしても、個別・具体的な権利の制限を発生させるため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる、としています。
4.運転者が原動機付自転車を運転中に、道路上に長時間放置してあった事故車両に衝突して死亡した事故が発生した場合であっても、道路上の自動車の放置は、国家賠償法に定める「公の営造物の設置又は管理」上の瑕疵とはいえないから、道路の管理費用を負担すべき県には国家賠償法に基づく責任は認められない。
4・・・誤り
本肢は「最判昭和50年7月25日」の判例に関する内容です。
判例では、道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないように努める義務を負っている。
そして、道路中央線付近に故障した大型貨物自動車が87時間(長時間)にわたって放置されており、その放置された故障車に追突した場合、道路管理に瑕疵があった状態であるとしています。
よって、道路の管理費用を負担すべき県には国家賠償法に基づく責任は認められます。
本肢は「最判昭和50年7月25日」の判例に関する内容です。
判例では、道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって一般交通に支障を及ぼさないように努める義務を負っている。
そして、道路中央線付近に故障した大型貨物自動車が87時間(長時間)にわたって放置されており、その放置された故障車に追突した場合、道路管理に瑕疵があった状態であるとしています。
よって、道路の管理費用を負担すべき県には国家賠償法に基づく責任は認められます。
5.特別区の建築安全条例所定の接道要件が満たされていない建築物について、条例に基づいて区長の安全認定が行われた後に当該建築物の建築確認がされた場合であっても、後続処分たる建築確認の取消訴訟において、先行処分たる安全認定の違法を主張することは許されない。
5・・・誤り
本肢は「最判平21.12.17」の判例の内容です。
「①建築確認における接道要件充足の有無の判断」と、「②安全認定における安全上の支障の有無の判断」は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるもの等の理由で、
「建築確認の取消訴訟」において、「安全認定に違反がある」と主張することは許されます。
よって誤りです。
本肢は「最判平21.12.17」の判例の内容です。
「①建築確認における接道要件充足の有無の判断」と、「②安全認定における安全上の支障の有無の判断」は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるもの等の理由で、
「建築確認の取消訴訟」において、「安全認定に違反がある」と主張することは許されます。
よって誤りです。
平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 著作権の関係上省略 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 法令用語 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 判決文の理解 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 学問の自由 | 問34 | 民法:親族 |
問5 | 生存権 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 参政権 | 問36 | 商法 |
問7 | 天皇・内閣 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政代執行法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 公法と私法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 無効と取消し | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政事件訴訟 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・社会 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・その他 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・社会 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・その他 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・社会 |
問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法の判例 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |