まず、基本的な考え方として、国と地方公共団体は対等・協力の関係があります。
対等ではあるのですが、国の政策を行っていく上で、地方公共団体の事務についても、国の一定の関与が必要となることもあります。
しかし、どんな場合においても関与できるとなると、それは地方自治体の自主性や自立性を壊してしまうので、関与を行うには、法律又はこれに基づく政令の根拠が必要となります(法定主義)。
また、関与をする場合、その目的を達成するために必要最小限のものとするとともに、普通地方公共団体の自主性および自立性に配慮しなければなりません(比例原則)。
また、その構成・透明性を確保するため、書面の交付、審査基準・標準処理期間の設定等、行政手続法に似た内容を義務付けています(公正・透明の原則)。
関与の形態
関与は、国が都道府県や市町村に関与したり、都道府県が市町村に関与したりします。
そして、関与の形態については、行政書士で重要なものは下記5つです。
- 技術的な助言および勧告、資料の提出の要求
- 是正の要求
- 是正の勧告
- 是正の指示
- 代執行
1が一番緩い関与で、2、3、4の順に関与がきつくなり、5が一番きつい関与です。
技術的な助言および勧告、資料の提出の要求
各大臣は、都道府県・市町村に対して
都道府県は、市町村に対して
自治事務・法定受託事務の運営について適切と認める技術的な助言や勧告をすることができ、また、当該助言・勧告・情報提供をするため必要な資料の提出を求めることができます。
是正の要求
是正要求は、地方公共団体の処理が、「法令違反していると認めるとき」、又は「著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるとき」に行うことができます。
そして、各大臣は、都道府県・都道府県の執行機関・市町村に対して是正要求が行えますが、是正要求できる対象となる事務が異なります。
- 都道府県に対しては、都道府県の自治事務
- 都道府県の執行機関に対しては、市町村の自治事務および第2号法定受託事務
- 市町村に対しては、市町村の自治事務および第2号法定受託事務
そして、是正要求は、法的拘束力があるため、是正要求を受けた地方公共団体は、是正又は改善のための必要な措置を講じなければなりません。もし、是正要求に不服があれば、国地方係争処理委員会や自治紛争処理委員による係争処理手続きを行うことができます。
是正の勧告
是正勧告は、市町村の自治事務の処理が、「法令違反していると認めるとき」、又は「著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるとき」に都道府県の執行機関が、市町村に対して行う関与です。
この是正勧告は、法的拘束力がないので、国地方係争処理委員会や自治紛争処理委員による係争処理手続きを行うことができません。
是正の指示
是正指示は、地方公共団体の法定受託事務の処理が、「法令違反していると認めるとき」、又は「著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるとき」に行うことができます。
誰から誰に是正指示ができるかは下記の通りです。
- 各大臣→都道府県
- 都道府県の執行機関→市町村
- 各大臣→都道府県の執行機関(第1号法定受託事務に限る)
- 各大臣→市町村(第1号法定受託事務に限る)
代執行
代執行とは、地方公共団体の事務の処理が法令違反のとき、または事務の処理を怠っているときに、是正のための措置を、各大臣が都道府県や市町村に代わって行うことを言います。
そして、代執行の対象となるのは、長の法定受託事務に限られます。(自治事務については代執行できない)
代執行の流れ
- 各大臣は、都道府県知事の法定受託事務の処理に違反がある場合、文書により、当該都道府県知事に対して、その旨を指摘し、期限を定めて、当該違反を是正するよう勧告することができる。
都道府県は、市町村長に対して、同様の勧告を行うことができる。 - 各大臣は、都道府県知事が上記期限までに勧告に従わないときは、文書により、当該都道府県知事に対し、期限を定めて当該事項を行うべきことを指示することができる。
都道府県は、市町村長に対して、同様の指示を行うことができる。 - 各大臣は、都道府県知事が前項の期限までに当該事項を行わないときは、高等裁判所に対し、訴えをもつて、当該事項を行うべきことを命ずる旨の裁判を請求することができる。
都道府県も同様、高等裁判所に請求できる。 - 高等裁判所が、各大臣(都道府県)の請求を認めるときは、各大臣(都道府県)は代執行を行える。