行政行為は、単に、行政内部で書類を作成しただけでは効力は発生しません。相手方(国民)に告知することで行政行為の効力が発生します。
例えば、あなたが不動産を購入すると、不動産取得税という税金が課されます。これは、「納税通知書があなたのもとに届いて」効力が発生します。単に、役所内で、「納税通知書を作成しただけでは」効力は生じません。
そして、行政行為の効力には4つの効力があります。
それが、「①公定力」「②不可争力」「③不可変更力」「④自力執行力」です。①~③は特に重要で行政書士試験の勉強をする中で、何度も見る内容となるので絶対頭に入れましょう!
公定力
当然無効となる行政行為は別として、違法な行政行為であっても、「権限のある行政庁や裁判所」によって取り消されるまでは、有効な行政行為となる効力が「公定力」です。
※「当然無効となる行政行為」とは、重大かつ明白な瑕疵がある行政行為
※「瑕疵」とは欠陥のことを言い、瑕疵ある行政行為とは、ミスのある行政行為といったイメージです。
例えば、税務署長が、あなたに100万円課税すべきところを、誤って120万円課税した通知書をあなたに送付した。この場合、税務署長に重大かつ明白な瑕疵がない、上記処分(行政行為)は有効となります。これが公定力の具体例です。
もちろん、普通に考えて「おかしいでしょ!」と思います。なので、あなたは、あとで審査請求等をすることで、税務署長に処分を取り消してもらうことができます。この点は後で勉強をする「行政不服審査法」や「行政訴訟法」で勉強するので、今は省略します
公定力に関する判例
最判昭53.6.16:余目町個室付浴場事件(行政権の濫用に相当する違法な行政処分に公定力はない)
不可争力
不可争力とは、瑕疵ある行政行為が行われてから一定期間を経過すると、その後、審査請求や取消訴訟によって、瑕疵ある行政行為の取消を主張できなくなる効力を言います。
イメージとしては、時効によって取り消しを主張できなくなるイメージです。
これも後で勉強をする「行政不服審査法」や「行政訴訟法」で勉強するので、今は省略します。
不可変更力
原則として、行政行為が、違法だったり不当だったりした場合、その行政行為を行った行政庁は、あとで取り消しすることができます。例えば、税務署長が、あなたに100万円課税すべきところを、誤って120万円課税した場合、あとで、その処分を取消して、100万円に正しく変更することができます。
しかし、上記のように変更できない場合があるんです。それは、行政庁が行った「紛争裁断行為」です。
「紛争」とは争い。「裁断」とは「物事の良し悪しを断定すること」です。つまり、「紛争裁断行為」とは、行政庁が、不服申立て(審査請求)に対して下した裁決のことを指します。
例えば、税務署長が、あなたに100万円課税すべきところを、誤って120万円課税し、あなたが、税務署長に審査請求(不服申立て)をした。そして、税務署長が棄却をした(=紛争裁断行為)場合、税務署長はその後、自らのミスが見つかっても変更できません。これが「不可変更力」です。
この場合、あなたが取消訴訟をして裁判所に判断してもらう流れになります。
ここも、「行政不服審査法」や「行政訴訟法」で勉強するので、今は、上記太文字だけ覚えてもらっても大丈夫です。
不可変更力に関する判例
最判昭30.12.26:裁決庁が自らした裁決を取消した場合の取消処分の効力
自力執行力
自力執行力とは、行政庁自らが実力行使をするということです。行政行為によって命じられた義務を国民が履行しない場合、法律に基づいて、行政庁が強制的に執行(実力行使)して義務を果たさせることができます。例えば、あなたが、100万円の納税義務があるとして、期限日までに納税しないと強制的に税金の取り立てられます。よくテレビでもあるように、自宅に行ってテレビや車などを差押えてしまうイメージです。
これは、あとで勉強する「行政代執行法(行政上の強制手段)」でも勉強するので、イメージだけでも頭に入れておきましょう!