令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

無効等確認の訴え(抗告訴訟の一種)

行政事件訴訟法の類型でも勉強した通り、主観訴訟の中の抗告訴訟の一つに「無効等確認の訴え」があります。

主観訴訟とは、個人の権利利益の救済を目的とし、自分自身に直接関係する行政活動に対する訴訟を指し、抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関して違法でないかと不服がある場合の訴訟です。

無効等確認の訴えとは?

そして、無効等確認の訴えとは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟です。

以前勉強した通り、行政行為には公定力があります。そのため、取り消しがあるまで、行政行為は有効となります。しかし、その行政行為に重大かつ明白な瑕疵]があるときは、公定力はなく、取り消し手続きをしなくても、当然に無効なので、行政行為の効力は生じません。

言い換えると、無効な処分なので、取消し自体出来ないです。そのため、「処分は無効ですよね!?」と確認することができるわけです。

例えば、Aさんが不動産を取得していないにも関わらず、Aさんに対して不動産取得税の課税処分の通知が来たとします。その場合、重大かつ明白な瑕疵]と言えるので、無効等確認の訴えを提起することができます。

重大かつ明白な瑕疵]とは?

  1. 行政行為の違法性が重大であり
  2. 行政行為の違法性の存在が明白であるということです。

1の重大性は、相手方の事情などを考えた上で、個別的に判断します。

2の明白性には、一般的に外観から見て当然分かることを言います。

この点は行政書士では、それほど重要ではないので、「重大かつ明白な瑕疵がある場合、行政行為は無効である」と覚えていれば十分です。

そして、無効等確認の訴えには、予防的無効確認の訴えと補充的無効確認の訴えの2つがあります。

予防的無効確認の訴え まだ処分されていないけど、処分されると損害を受ける恐れがある場合に行うもの
補充的無効確認の訴え すでに処分されていて、現在の法律関係の確認を求める訴えでは目的達成ができない場合に行うもの

予防的無効確認の訴え

処分や裁決に続く処分によって損害を受ける恐れのある場合、予防的無効確認の訴えを提起できます。

例えば、上記不動産取得税の課税処分があり、この課税処分に続いて滞納処分が課せられる場合、損害を受けることになります。この場合、Aさんは、課税処分の無効確認の訴えを提起でき、無効確認の判決をもらうことで、納税義務を免れ、かつ滞納処分による損害の発生を予防することができます。

これが、予防的無効確認等訴訟です。

予防的無効確認の訴えの要件

「処分や裁決に続く処分によって損害を受ける恐れのあること」が要件です。

補充的無効確認の訴え

処分や裁決の無効確認を求めるに法律上の利益を有していて、かつ、現在の法律関係の確認を求める訴えでは目的達成ができない場合に提起できます。

分かりづらいですが、考え方としては、「現在の法律関係の確認を求める訴えでは目的達成ができない」から、補充的な(追加の)救済手段として「無効確認の訴えを行う」ということです。

現在の法律関係の確認を求める訴えでは目的達成ができない場合とは?

例えば、Bが宅建業の免許の申請をして、不許可処分を受けた。この場合、処分を受ける前も後も、宅建業を行うことができていない状態です。そのため現在の法律関係(免許がされていないこと)の確認を求めても、今も昔も宅建業を行うことができない状態に変わりはないため何の意味もありません。Bの目的は「免許申請の不許可処分の無効を主張して、再度審査をしてもらうこと」です。つまり、「現在の法律関係の確認を求める訴えでは目的達成ができない」ということです。

そのため、Bはすでになされた不許可処分について、無効等確認の訴えを提起することができます。

これが、補充的無効等確認訴訟です。

現在の法律関係の確認を求める訴えでは目的達成ができる場合とは?

実質的当事者訴訟が行える場合

例えば、公務員Cが懲戒免職処分を受けた。この場合、処分を受ける前は、公務員としての地位を有しており、処分を受けた後の現在は公務員としての地位を有していません。この場合、現在の法律関係の確認を求める訴えとは、「懲戒免職処分は無効だ!現在も公務員としての地位を有しているはずでしょ!」という訴えです。この訴えをすることで、Cの目的(公務員としての地位を回復すること)は達成できます。この場合、過去の処分の無効を主張することはできず、現在の法律関係の確認を求める訴え(具体的には実質的当事者訴訟)で、公務員であることの地位の確認を求めることができます。

争点訴訟が行える場合

また、別の事例でいうと、例えば、道路を広くする事業(公共事業)のために、土地を収用された(強制的に奪われた)者Dが、収用裁決は無効だということを理由に、「土地の所有権は私Dにあるでしょ!」と主張する場合、土地収用の起業者(公共事業を行う事業者)を被告として、土地所有権の確認の訴えを提起することができます。「収用裁決を受ける前の土地の所有者はD」、「収用された後の土地所有者は起業者」になります。上記土地所有権の確認の訴えを提起することで、Dの目的(所有権を自分に戻すこと)は達成できます。そのため、過去の収用裁決の無効を主張することはできず、土地所有権の確認の訴え(争点訴訟:民事訴訟)を提起することになります。

実質的当事者訴訟と争点訴訟の違い

上記実質的当事者訴訟と争点訴訟は似ていますが、違います。

何が違うかというと、
実質的当事者訴訟は、私人と行政主体との争い(=行政訴訟)で、
争点訴訟は私人間の争い(=民事訴訟)です。

補充的無効確認の訴えの要件

下記2つの要件を満たす必要があります。

  1. 法律上の利益を有している
  2. 現在の法律関係の確認を求める訴えでは目的達成ができない

<<行政事件訴訟法における教示 | 不作為の違法確認の訴え>>

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