憲法43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」、と定める。この「全国民の代表」に関わる次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- これと同様の定式は近代憲法に広く見られ、大日本帝国憲法でも採用されている。
- この定式は、近代の国民代表議会の成立に伴い、国民とその代表者との政治的意思の一致を法的に確保する目的で、命令委任の制度とともに導入されたものである。
- 政党は国民の中の一党派であり、全国民を代表するものではないため、議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されないものとされている。
- 議員は議会で自己の信念のみに基づいて発言・表決すべきであり、選挙区など特定の選出母体の訓令に法的に拘束されない、との原則は、自由委任の原則と呼ばれる。
- 選挙は現代では政党間の選択としての意味を持つため、現行法上、議員は所属政党から離脱した時は自動的に議員としての資格を失うものとされている。
【答え】:4
【解説】
1.憲法43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」、と定める。これと同様の定式は近代憲法に広く見られ、大日本帝国憲法でも採用されている。
1・・・妥当ではない
明治憲法(大日本帝国憲法)では、議会及び議員が「全国民の代表」という考え方はしていませんでした。むしろ、「天皇」中心の考え方です。
明治憲法(大日本帝国憲法)では、議会及び議員が「全国民の代表」という考え方はしていませんでした。むしろ、「天皇」中心の考え方です。
2.憲法43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」、と定める。この定式は、近代の国民代表議会の成立に伴い、国民とその代表者との政治的意思の一致を法的に確保する目的で、命令委任の制度とともに導入されたものである。
2・・・妥当ではない
憲法43条1項の「全国民の代表」は命令委任ではなく、自由委任と解されています。
よって、誤りです。
憲法43条1項の「全国民の代表」は命令委任ではなく、自由委任と解されています。
よって、誤りです。
- 自由委任とは「選挙区や後援団体の意思に拘束されず、自己の信念に従って行動できる」ということです。
- 命令委任とは「選挙区や後援団体の意思に拘束され、それらの意思を忠実に行動する」ということです。
3.政党は国民の中の一党派であり、全国民を代表するものではないため、議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されないものとされている。
3・・・妥当ではない
「議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されない」は誤りです。実際、「党議拘束」というものがあります。党議拘束とは、議案の賛否について政党、会派の決めた方針に議員が拘束されることを言います。
ただ、これは、法律で定められているのでなく、政党内部のルールですが実際、重要案件でこれに反した行動をとると党内懲罰の対象となったりするケースもあります。
「議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されない」は誤りです。実際、「党議拘束」というものがあります。党議拘束とは、議案の賛否について政党、会派の決めた方針に議員が拘束されることを言います。
ただ、これは、法律で定められているのでなく、政党内部のルールですが実際、重要案件でこれに反した行動をとると党内懲罰の対象となったりするケースもあります。
4.議員は議会で自己の信念のみに基づいて発言・表決すべきであり、選挙区など特定の選出母体の訓令に法的に拘束されない、との原則は、自由委任の原則と呼ばれる。
4・・・妥当
選択肢2でも触れた内容です。
憲法43条の「代表」の意味については、全国民のためを思って行動をすれば、それが国民の意思と異なっていたとしてもよい、つまり、選挙区や後援団体の意思に拘束されず、自己の信念に従って行動できるということです。これを「自由委任の原則」と言います。よって、本肢は妥当です。
選択肢2でも触れた内容です。
憲法43条の「代表」の意味については、全国民のためを思って行動をすれば、それが国民の意思と異なっていたとしてもよい、つまり、選挙区や後援団体の意思に拘束されず、自己の信念に従って行動できるということです。これを「自由委任の原則」と言います。よって、本肢は妥当です。
5.選挙は現代では政党間の選択としての意味を持つため、現行法上、議員は所属政党から離脱した時は自動的に議員としての資格を失うものとされている。
5・・・妥当ではない
議員は所属政党から離脱しただけでは議員としての資格は失いません。
よって、妥当ではありません。議院の資格を失うのは、例えば、比例代表選出議員が当選後、当選時の所属政党以外の政党に所属することとなったとき等です(国会法109条、公職選挙法99条の2)
議員は所属政党から離脱しただけでは議員としての資格は失いません。
よって、妥当ではありません。議院の資格を失うのは、例えば、比例代表選出議員が当選後、当選時の所属政党以外の政党に所属することとなったとき等です(国会法109条、公職選挙法99条の2)
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
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問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 新しい人権 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 参政権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 法改正により削除 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
