執行停止についての内閣総理大臣の異議についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 内閣総理大臣の異議は、裁判所による執行停止決定の後に述べなければならず、決定を妨げるために決定以前に述べることは許されない。
- 内閣総理大臣の異議は、下級裁判所による執行停止決定に対するものでも、最高裁判所に対して述べることとされている。
- 内閣総理大臣の異議が執行停止決定に対して述べられたときは、その理由の当否について裁判所に審査権限はなく、裁判所は、必ず決定を取り消さなければならない。
- 内閣総理大臣が異議を述べたときは、国会に承認を求めなければならず、これが国会によって否決された場合には、異議を取り消さなければならない。
- 内閣総理大臣の異議の制度については、違憲ではないかとの疑義もあり、実際にも用いられた例が少ないため、他の抗告訴訟における仮の救済手続には準用されていない。
【答え】:3【解説】
1.内閣総理大臣の異議は、裁判所による執行停止決定の後に述べなければならず、決定を妨げるために決定以前に述べることは許されない。
1・・・妥当ではない
執行停止の申立てがあった場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができます。執行停止の決定があった後においても、同様に、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができます(行政事件訴訟法27条)。よって、内閣総理大臣の異議は、決定以前に述べることも許されるので妥当ではないです。
執行停止の申立てがあった場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができます。執行停止の決定があった後においても、同様に、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができます(行政事件訴訟法27条)。よって、内閣総理大臣の異議は、決定以前に述べることも許されるので妥当ではないです。
2.内閣総理大臣の異議は、下級裁判所による執行停止決定に対するものでも、最高裁判所に対して述べることとされている。
2・・・妥当ではない
内閣総理大臣が異議を述べる裁判所は
内閣総理大臣が異議を述べる裁判所は
- 執行停止の決定前の異議 → 申立てのあった裁判所に対して
- 執行停止の決定後の異議 → 決定をした裁判所
よって、本肢の「下級裁判所による執行停止決定に対するもの」は「当該下級裁判所」に対して異議を述べなければなりません。
したがって、妥当ではないです。
3.内閣総理大臣の異議が執行停止決定に対して述べられたときは、その理由の当否について裁判所に審査権限はなく、裁判所は、必ず決定を取り消さなければならない。
3・・・妥当
内閣総理大臣の異議があったときは、裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければなりません(行政事件訴訟法27条4項)。よって、本肢は正しいです。
内閣総理大臣の異議があったときは、裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければなりません(行政事件訴訟法27条4項)。よって、本肢は正しいです。
4.内閣総理大臣が異議を述べたときは、国会に承認を求めなければならず、これが国会によって否決された場合には、異議を取り消さなければならない。
4・・・妥当ではない
内閣総理大臣が異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければなりません(行政事件訴訟法27条6項)。国会への事後報告だけでよく、国会の承認は不要です。
内閣総理大臣が異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければなりません(行政事件訴訟法27条6項)。国会への事後報告だけでよく、国会の承認は不要です。
よって、妥当ではないです。
5.内閣総理大臣の異議の制度については、違憲ではないかとの疑義もあり、実際にも用いられた例が少ないため、他の抗告訴訟における仮の救済手続には準用されていない。
5・・・妥当ではない
内閣総理大臣の異議の制度については、違憲ではないかとの疑義もあるが、
「仮の義務付け及び仮の差止め」についても、執行停止と同様の機能を有するため、準用しています(行政事件訴訟法37条の5の4項)。
内閣総理大臣の異議の制度については、違憲ではないかとの疑義もあるが、
「仮の義務付け及び仮の差止め」についても、執行停止と同様の機能を有するため、準用しています(行政事件訴訟法37条の5の4項)。
平成23年度(2011年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:債権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 新しい人権 | 問33 | 民法・債権 |
問4 | 参政権 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 精神的自由 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 国会 | 問36 | 商法 |
問7 | 法の下の平等 | 問37 | 会社法 |
問8 | 行政法 | 問38 | 会社法 |
問9 | 行政法 | 問39 | 会社法 |
問10 | 行政法 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 法改正により削除 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政事件訴訟法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・政治 |
問19 | 国家賠償法 | 問49 | 基礎知識・経済 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 地方自治法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 行政法 | 問54 | 基礎知識・個人情報保護 |
問25 | 行政法 | 問55 | 基礎知識・個人情報保護 |
問26 | 行政法 | 問56 | 基礎知識・個人情報保護 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・情報通信 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:物権 | 問60 | 著作権の関係上省略 |
