取消訴訟が提起された場合、仮の救済手段として、執行停止の制度があります。
これと同様に、
義務付け訴訟が提起された場合の仮の救済手段として「仮の義務付け」
差止め訴訟が提起された場合の仮の救済手段として「仮の差止め」があります。
仮の義務付け
仮の義務付けは、義務付けの訴えがあった場合に、その判断がされる前に、暫定的に行政庁が処分または裁決をする旨を命ずることを言います。
例えば、A所有の建物が違法建築物で今にも倒壊しそうです。隣地の住民Bが当該建物の除去命令の義務付けの訴えを提起したが、判決をもらうまでに時間がかかるためその間に建物が倒壊してしまっては、Bは困ります。そのような場合に、仮の義務付けを申し立てることができます。
仮の義務付けの要件
手続要件 | 義務付けの訴えがあったこと |
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積極要件 |
|
消極要件 | 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあること |
積極要件と消極要件
積極要件とは、効力を発生させるための要件を言います。
一方、消極要件とは、効力が妨げられる要件を言います。
上記事例でいうと、下記2つの要件を満たることで仮の義務付けの効力が発生します。
- 償うことができない損害をさけるため緊急の必要があること
- 本案に理由があるとみえること
しかし、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」という要件を満たす場合、たとえ、上記積極的要件(上記2つの要件)を満たしていても、仮の義務付けの効力は発生しません。
仮の差止め
仮の差止めは、差止めの訴えがあった場合に、その判断がされる前に、暫定的に行政庁が処分または裁決をしてはならない旨を命ずることを言います。
例えば、A土木会社が、宅地の造成工事を行っています。隣地の住民Bの土地が、Aの造成工事により、沈下(地盤沈下)している。この場合、工事の差止めの訴えをしたが、判決をもらうまでに時間がかかるため、その間にもドンドン地盤沈下して困ってしまいます。そのような場合にBは仮の差止めを申し立てることができます。
仮の差止めの要件
仮の差止めの要件は、仮の義務付けと考え方は同じです。
手続要件 | 差止めの訴えがあったこと |
---|---|
積極要件 |
|
消極要件 | 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあること |
この点も仮の義務付けと同様に
下記2つの要件を満たることで仮の差止めの効力が発生します。
- 償うことができない損害をさけるため緊急の必要があること
- 本案に理由があるとみえること
しかし、「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」という要件を満たす場合、たとえ、上記積極的要件(上記2つの要件)を満たしていても、仮の差止めの効力は発生しません。
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