平成29年・2017|問2|基礎法学

次のア~オの記述と、それらの記述が示す法思想等との組合せとして、最も適切なものはどれか。

ア.法を現実に通用している制定法および慣習法等の実定法とする考え方
イ.人身の自由および思想の自由等の人格的自由とともに経済的自由を最大限に尊重し、経済活動に対する法規制を最小限にとどめるべきであるとする考え方
ウ.事物の本性や人間の尊厳に基づいて普遍的に妥当する法があるとする考え方
エ.法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定されるとし、私有財産制度も普遍的なものではなく、資本主義経済によって生み出されたとする考え方
オ.法制度を経済学の手法を用いて分析し、特に効率性の観点から立法および法解釈のあり方を検討する考え方

  1. ア:パンデクテン法学 イ:リベラリズム ウ:自然法 エ:社会主義法学 オ:利益法学
  2. ア:概念法学 イ:リバタリアニズ ウ:パターナリズム エ:コミュニタリアニズム オ:法と経済学
  3. ア:法実証主義 イ:リベラリズム ウ:善きサマリア人の法 エ:マルクス主義法学 オ:利益法学
  4. ア:概念法学 イ:レッセ・フェール ウ:善きサマリア人の法 エ:コミュニタリアニズム オ:ネオリベラリズム
  5. ア:法実証主義 イ:リバタリアニズム ウ:自然法 エ:マルクス主義法学 オ:法と経済学

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【答え】: 5

【解説】

ア.法を現実に通用している制定法および慣習法等の実定法とする考え方
ア・・・法実証主義
法実証主義とは、実定法だけを法と認め、実定法の上位に自然法の存在は認めないという考え方です。
つまり、法実証主義は、実定法の上位に自然法の存在を認める自然法論と対立した考え方です。
「実定法」とは、
立法府の制定行為,および慣習,判例などの経験的事実に基づいて成立し,その存立を経験的,歴史的に実証される法を言い、「制定法」および「慣習法」等が実定法です。実証法とも言います。
「自然法」とは、
人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法です。
分かりやすい具体例でいうと、「公序良俗」です。「公序良俗」とは何か、という具体的な定義はなく、概念的な内容です。しかし、判例でもよくあるように、「公序良俗」を基準に判断して、それは、裁判官の裁量により、法律を超えたものともいえます。
「概念法学」とは
法規の解釈をする際、法典は欠陥はなく、論理的に完結しているという前提に立って、条文の解釈や運用を論理的に行うことを第一とする考え方です。
そしてこの概念法学は、現実を無視した形式論的な考察態度、いわゆる「机上の空論」を批判していう場合で用いられます。
現実の裁判における基準として機能しない、または機能させることをそもそも考えていないような法的理論に対して向けられることが多いです。
イ.人身の自由および思想の自由等の人格的自由とともに経済的自由を最大限に尊重し、経済活動に対する法規制を最小限にとどめるべきであるとする考え方
イ・・・リバタニアリズム
「リバタニアリズム」とは、
「個人の自由権」と「経済的な自由」を絶対的に重視し、それに制約を加える国家の役割(法規制)を最小限度にとどめようとする考え方です。
言い方を変えると、他者の自由を侵害しない限りにおける、各人の「個人の自由権」と「経済的な自由」を尊重しようとする思想的立場です。
「リベラリズム」とは
人間は理性を持ち、従来の権威から自由であり「自己決定権を持つ」との立場から、
政治的には「政府からの自由」である自由権や個人主義、「政府への自由」である国民主権などの民主主義、
経済的には私的所有権と自由市場による資本主義などの思想や体制の基礎となるものです。
「レッセ・フェール(自由放任主義)」とは
国家による国民経済への統制と干渉を排除して、個人や企業の自由競争にまかせて経済を営むべきであるとする主義で、アダム=スミスの「国富論」でも主張しています。
ウ.事物の本性や人間の尊厳に基づいて普遍的に妥当する法があるとする考え方
ウ・・・自然法
「自然法」とは、
人間の自然の本性あるいは理性に基づいて、あらゆる時代を通じて普遍的に守られるべき不変の法として、実定法を超越しているものと考えられる法です。
分かりやすい具体例でいうと、「公序良俗」です。「公序良俗」とは何か、という具体的な定義はなく、概念的な内容です。しかし、判例でもよくあるように、「公序良俗」を基準に判断して、それは、裁判官の裁量により、法律を超えたものともいえます。
「パターナリズム」とは
強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためを思って、弱い立場にある者の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいいます。
親が子供のためによかれと思ってすることから来ています。
「善きサマリア人の法」とは、
災難に遭った人や急病人等の「窮地の人」を救うために「無償で善意の行動」をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ「失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法である。
誤った対応をして訴えられたり処罰を受ける恐れをなくして、その場に居合わせた人による傷病者の救護を促進しよう、との意図があります。
※「善きサマリア人」は聖書に出てくる内容です。
エ.法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定されるとし、私有財産制度も普遍的なものではなく、資本主義経済によって生み出されたとする考え方
エ・・・マルクス主義法学
「マルクス主義法学」とは、簡単に言えば、
経済状況(生産諸要素および経済的構造)である「下部構造」と、
思想や政治、法律などの「上部構造」に分けて
上部構造は下部構造によって決まってくる
つまり、法制度の内容は、その基礎にある生産諸要素および経済的構造によって決定される
という考え方です。
「社会主義法」とは、社会主義体制の国で採られる法制度の総称である。
大陸法圏に属するソビエト連邦法及びこれを参考とした他の社会主義国の法です。
「コミュニタリアニズム」とは
共同体(コミュニティ)の価値を重んじる政治思想で、歴史的に形成されてきた共同体の伝統の中でこそ個人は人間として完成され、生きていけるという考え方です。
「リベラリズムやリバタリアニズム」が個人を優先するのに対し、
「コミュニタリアニズム」は共同体が優先する考え方です。
オ.法制度を経済学の手法を用いて分析し、特に効率性の観点から立法および法解釈のあり方を検討する考え方
オ・・・法と経済学
「法と経済学」とは、
経済学の観点および手法を利用して、法的理論を分析・再解釈する学問を言います。
「利益法学」とは
法の解釈を利益整序の観点から行う法学で
法は、「社会における諸利益に対してどれをいかに保護するかの価値判断を行うもの」という考え方をします。
「ネオリベラリズム(新自由主義)」とは、
政府の規制を緩和・撤廃して民間の自由な活力に任せ成長を促そうとする考え方を言います。
政府の積極的な民間介入に反対し、資本主義下の自由競争秩序を重んじる立場および考え方です。

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