行政手続法

行政手続法4条:国の機関等に対する処分等の適用除外

処分行政指導及び届出といった行政手続きは、行政機関と国民の間だけでなく、行政機関と行政機関の間でも行われます。

下記の場合は、行政手続法が適用されません。

行政機関間で行政手続法が適用除外となる場合

行政指導 行政手続法は一切適用されない
処分 行政機関または行政主体がその「固有の資格」で処分の名あて人になるものは、行政手続法が適用されない
届出 行政機関または行政主体がその「固有の資格」で届出すべきものは、行政手続法が適用されない

固有の資格とは?

「固有の資格」とは、「行政機関の立場で」「行政主体として」といった意味です。言い換えると、「一般私人(国民)が立てないような立場」を言います。

例えば、市町村の合併や分離の届出は、市町村(行政主体)の立場で行っており、一般私人が立てない立場で届出をするので、「固有の資格」と言えます。よって、行政手続法の適用はありません。

一方、市バスの事業免許は、地方公共団体が、私人と同様の立場で処分を受けるので、「固有の資格」ではありません。よって、行政手続法の適用対象となります。市バスの事業免許は、私人でも立てる立場です。

国の機関等に対する処分等の適用除外
第4条 国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。

<<行政手続法3条:適用除外 | 行政手続法5条:審査基準>>

行政手続法1条:目的

行政手続法は、行政書士試験でも、必ず得点しないといけない部分です。そのためにも、しっかり条文を頭に入れると同時に、行政不服審査法との違いなども含めて対比して頭に入れていきましょう!

(目的等)
第1条 この法律は、処分行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第46条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

2 処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

行政手続法は、
・「①処分」「②行政指導」「③届出」に関する手続
・「④命令等」を定める手続
に関する法律です。

つまり、行政手続法の対象は「①処分」「②行政指導」「③届出」「④命令等(命令制定手続)」の4つということです。

上記4つの言葉の定義は、しっかり押さえておきましょう!

そして、
行政手続法は、
行政運営における公正の確保透明性の向上を図ることで
国民の権利利益の保護することが目的です。

つまり、行政手続のルールを定めることで、行政運営を公正して、また、行政運営の透明性が図れます。

っということは、国民の権利利益も保護されますよね!

この行政手続法1条では、上記目的をしっかり覚えましょう!

行政手続法1条の注意点

  • 地方公共団体については「法律を根拠とする処分届出」のみ行政手続法の適用
  • 国の機関がする行政指導」、「国の機関が定める命令等」は行政手続法が適用
    地方公共団がする行政指導命令を定める手続きは行政手続法が適用されない

>>行政手続法2条:定義

行政手続法2条:定義

行政手続法における言葉の定義が2条の内容です。この言葉の定義は行政書士試験でも非常に重要で、頻出部分です。これが分かっていないと、行政書士試験に合格するのは難しいので、絶対押さえておきましょう!

法令とは?

法令とは、下記4つ言います。

  • 法律
  • 法律に基づく命令(告示を含む。)
  • 条例
  • 地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む)

【注意点】
地方公共団体の条例」や「地方公共団体の執行機関の規則」も「法令」に含まれる

処分とは?

処分とは、「行政庁の処分」その他「公権力の行使に当たる行為」をいいます。

【注意点】
審査請求再調査請求不服申立てに対する「裁決・決定」は、処分に当たらない=行政手続法は適用されない

そもそも行政手続法の適用対象は、「①処分」「②行政指導」「③届出」「④命令等(命令制定手続き)」の4つです。上記裁決・決定は上記①~④に当てはまらないので、行政手続法の対象ではないということです。

申請とは?

申請とは、法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものを言います。

【注意点】
行政庁の応答がない、単に「届出」をするだけの行為は申請ではないです。

不利益処分とは?

不利益処分とは、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分を言います。

【注意点】

  • 不特定多数の者を名あて人とする場合は、不利益処分ではない
    ※「名あて人」とは、処分の相手方のことです。
  • 権利を与える行為は、不利益処分ではない。

不利益処分に該当しないもの

  1. 事実上の行為立入検査等及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
  2. 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分(=申請に対する処分は第2章:申請に対する処分以降が適用)
  3. 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
  4. 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの(死亡等の届出等により免許を取消す行為)

※「行政指導」、「行政指導に従わない場合の公表」も不利益処分の対象外です。なぜなら、「行政指導」および「行政指導に従わない場合の公表」は、義務を課していないし、権利の制限もないから。

行政機関とは?

行政機関とは、

  • 「法律の規定に基づき内閣に置かれる機関若しくは内閣の所轄の下に置かれる機関」又は「これらの機関の職員」
  • 「宮内庁」および「これらに置かれる機関」又は「これらの機関の職員」
  • 「内閣府の外局として置かれる委員会及び庁」および「これらに置かれる機関」又は「これらの機関の職員」
  • 「国の行政機関(省、委員会及び庁)」および「これらに置かれる機関」又は「これらの機関の職員」
  • 会計検査院」および「これらに置かれる機関」又は「これらの機関の職員」
  • 地方公共団体の機関(議会を除く。)

行政指導とは?

行政指導とは、行政機関がその任務又は所掌事務範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものを言います。

【注意点】

届出とは?

届出とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)を言います。

【注意点】

  • 「届出」に「申請」は含まれない
  • 婚姻の届出」は行政手続法の申請」に当たる

命令等とは?

「命令等」とは、内閣又は行政機関が定める次に掲げるものを言います。

  1. 法律に基づく命令」又は「法律に基づく規則
  2. 審査基準
  3. 処分基準不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。)
  4. 行政指導指針同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。)

上記、処分基準の内容、行政指導指針の内容も、行政書士試験で出題されるので、ここまでしっかり頭に入れておきましょう!

この命令等は、行政手続法39条の意見公募手続きにも関連してくるので、絶対に覚えましょう!

命令等に関する法規命令・行政規則の区分

1.法律に基づく命令又は規則 外部に対して法的拘束力を有する「法規命令
2.審査基準、3.処分基準、4.行政指導指針 外部に対して法的拘束力を有さない「行政規則
  • 「審査基準と処分基準」は行政規則なので、違反する処分をしても当然に違反とはならない
  • 法律に基づく命令」とは、「政令(内閣制定)」や「省令(各省大臣制定)

<<行政手続法1条:目的 | 行政手続法3条:適用除外>>

平成29年・2017|問20|国家賠償法1条

国家賠償法1条に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 通達は、本来、法規としての性質を有しない行政組織内部の命令にすぎず、その違法性を裁判所が独自に判断できるから、国の担当者が、法律の解釈を誤って通達を定め、この通達に従った取扱いを継続したことは、国家賠償法1条1項の適用上も当然に違法なものと評価される。
  2. 検察官は合理的な嫌疑があれば公訴を提起することが許されるのであるから、検察官が起訴した裁判において最終的に無罪判決が確定したからといって、当該起訴が国家賠償法1条1項の適用上も当然に違法となるわけではない。
  3. 裁判官のなす裁判も国家賠償法1条の定める「公権力の行使」に該当するが、裁判官が行う裁判においては自由心証主義が認められるから、裁判官の行う裁判が国家賠償法1条1項の適用上違法と判断されることはない。
  4. 国会議員の立法行為(立法不作為を含む。)は、国家賠償法1条の定める「公権力の行使」に該当するものではなく、立法の内容が憲法の規定に違反する場合であっても、国会議員の当該立法の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることはない。
  5. 政府が、ある政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため当該目標を達成できなかった場合には、国家賠償法1条1項の適用上当然に違法の評価を受ける。

>解答と解説はこちら


【答え】:2

【解説】

1.通達は、本来、法規としての性質を有しない行政組織内部の命令にすぎず、その違法性を裁判所が独自に判断できるから、国の担当者が、法律の解釈を誤って通達を定め、この通達に従った取扱いを継続したことは、国家賠償法1条1項の適用上も当然に違法なものと評価される。
1・・・妥当ではない
判例では、「法律の解釈を誤って通達を作成、発出し、その後も一定期間、法律の解釈を誤って作成した通達に従った取扱いを継続したことは、一定の事情においては、公務員の職務上通常尽くすべき注意義務に違反するものとして、国家賠償法1条1項の適用上違法なものであり、当該担当者には過失がある。」と判示しています(最判平19.11.1)。
したがって、「一定の事情においては、公務員の職務上通常尽くすべき注意義務に違反」となりますが、一定の事情に該当しないと、注意義務違反とはならず、国賠法1条に違反しないことになります。よって、「当然に違法」という部分は妥当ではありません。

用語解説は、個別指導で解説します!

2.検察官は合理的な嫌疑があれば公訴を提起することが許されるのであるから、検察官が起訴した裁判において最終的に無罪判決が確定したからといって、当該起訴が国家賠償法1条1項の適用上も当然に違法となるわけではない。
2・・・妥当
判例では、「刑事事件において無罪の判決が確定したというだけで直ちに起訴前の逮捕・勾留、公訴の提起・追行、起訴後の勾留が違法となるということはない。
そして、起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば違法とはならない」と判示しています(最判昭53.10.20)。つまり、検察官は合理的な嫌疑があれば公訴を提起することが許されます。
そして、検察官が起訴した裁判において最終的に無罪判決が確定したとしても、当該起訴について、合理的な嫌疑(理由)があれば、国家賠償法1条1項の適用上、違法とはなりません
3.裁判官のなす裁判も国家賠償法1条の定める「公権力の行使」に該当するが、裁判官が行う裁判においては自由心証主義が認められるから、裁判官の行う裁判が国家賠償法1条1項の適用上違法と判断されることはない。
3・・・妥当ではない
判例では、「裁判官がした争訟の裁判につき国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、
当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とする。 」と判示しています(最判昭57.3.12)。
自由心証主義とは、裁判において、事実認定や証拠評価について裁判官の自由な判断に委ねることをいいます。
そして、裁判官が行う裁判においては自由心証主義が認められます。
つまり、裁判官は自由な判断が許されるのですが、
違法又は不当な目的をもって裁判をすることは許されません
したがって、違法又は不当な目的をもって裁判をした場合は、国家賠償法1条1項の適用上違法と判断されることはあるので妥当ではありません。
4.国会議員の立法行為(立法不作為を含む。)は、国家賠償法1条の定める「公権力の行使」に該当するものではなく、立法の内容が憲法の規定に違反する場合であっても、国会議員の当該立法の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることはない。
4・・・妥当ではない
まず、国会議員の立法行為は「公権力の行使」に該当します。
そして、判例では、「国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。」と判示しています(最判昭60.11.21:在宅投票制度廃止事件)。
言い換えると、憲法違反の法律を意図的に作るといった場合は、例外的に、国賠法1条の適用上違法となる、ということです。
したがって、「立法の内容が憲法の規定に違反する場合であっても、国会議員の当該立法の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることはない」は誤りです。
5.政府が、ある政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため当該目標を達成できなかった場合には、国家賠償法1条1項の適用上当然に違法の評価を受ける。

5・・・妥当ではない

判例(最判昭和57年7月15日)では、
「政府が物価の安定等の政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため右目標を達成できなかったとしても、法律上の義務違反ないし違法行為として、国家賠償法上の損害賠償責任の問題を生ずるものではない」と判示しています(最判昭57.7.15)。
つまり、「当然に違法の評価を受ける」というのは妥当ではありません。

 


平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 基礎法学 問31 民法:物権
問2 基礎法学 問32 民法:債権
問3 人権 問33 民法:債権
問4 経済的自由 問34 民法:債権
問5 内閣 問35 民法:親族
問6 財政 問36 商法
問7 憲法の概念 問37 会社法
問8 取消しと撤回 問38 会社法
問9 無効な行政行為 問39 会社法
問10 執行罰 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政法
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・政治
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・社会
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・政治
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・社会
問24 地方自治法 問54 基礎知識・情報通信
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・その他
問26 行政不服審査法 問56 基礎知識・情報通信
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:総則 問60 著作権の関係上省略