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行政書士法|基礎知識を攻略するために

1条(目的)

第1条 この法律は、行政書士の制度を定め、その業務の適正を図ることにより、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを目的とする。

「国民の権利利益の実現に資する」ことを本法の「目的」として明記し、行政書士の責務・社会的役割への期待に応えることが、行政書士法の主旨です。

1条の2(業務)

第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)作成することを業とする

 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

本条は、行政書士の独占業務の内容について規定しています。

1項の「官公署に提出する書類」とは、下記のようなものがあります。

官公署とは、各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等を指します。

  1. 許可・免許・登録、認可・承認、確認、認定・指定・検査・免除または、補助金交付・貸付など給付決定の「申請書」
  2. 「不服申立書」「審査請求書」「弁明書」
  3. 「届出書、事業計画書・図面類、職員履歴調書」
  4. 警察機関あて「告訴・告発状」等

1項の「権利義務に関する書類」とは、下記のようなものがあります。

  1. 売買、貸借、抵当権設定、請負、雇用、示談などの契約書
  2. 契約申込書、内容証明郵便による請求書
  3. 就業規則などの約款
  4. 遺産分割協議書など複数者間の協議書
  5. 法人の議事録および会議資料
  6. 法人設立の必要書類(発起人会・創立総会、取締役会議事録、定款、 株式申込書など)
  7. 指定法人・機関に対する申請・届出書類

1項の「事実証明に関する書類」とは、下記のようなものがあります。

  1. 名簿・資格証明、社員履歴調書、会社業歴書、自動車登録事項証明書
  2. 交通事故調査報告書など各種の証明書
  3. 決算書、貸借対照表、損益計算書、総勘定元帳、金銭出納簿、営業報告書等
  4. 実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、現況測量図等)

ただし、他の法律において制限されているものについては、行政書士であっても業務を行うことはできません。この点については個別指導で解説します!

1条の3(その他の業務)

第1条の3 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 第1条の2の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 第1条の2の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 1項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。

本条は、行政書士が、第1条の2以外にも行うことができる業務について規定しています。ここは、非独占業務の内容です。そのため行政書士でなくてもできる業務です。

  1. 「官公署に提出する書類を官公署に提出する手続」及び「当該官公署に提出する書類に係る許認可等に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続」を代理すること。ただし、弁護士法第72条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものは代理できません
  2. 許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理すること、及び不服申立て手続について官公署に提出する書類を作成すること
  3. 売買契約書等の権利義務書類を代理人として作成すること
  4. 売買契約書等の権利義務書類を代理人として作成する際の法規相談

 特定行政書士とは

「特定行政書士」とは、法定の研修の課程を修了することにより、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する行政不服申立ての手続きの代理業務を行えるようになる行政書士のことです。上記「1条の3の二号」の業務を行うことができるのが、特定行政書士です。

1条の4

第1条の4 前二条の規定は、行政書士が他の行政書士又は行政書士法人の使用人として前二条に規定する業務に従事することを妨げない。

本条は、行政書士Aが行政書士事務所Bで働いていたとします。この状況で、Aが自ら行政書士事務所Aを開業して、「個人事業主」兼「Bの従業員」として行政書士の業務を行うことはできないことを意味しています。

2条(資格)

第2条 次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。
一 行政書士試験に合格した者
二 弁護士となる資格を有する者
三 弁理士となる資格を有する者
四 公認会計士となる資格を有する者
五 税理士となる資格を有する者
六 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人(独立行政法人通則法第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)又は特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年以上(学校教育法による高等学校を卒業した者その他同法第九十条に規定する者にあつては十七年以上)になる者

行政書士試験に合格した者は、当然、行政書士になることができます。それ以外にも「弁護士、弁理士、公認会計士、税理士」も行政書士になることができます。弁護士等は、行政書士試験に合格しなくても、行政書士になることができます。ただし、日本行政書士会連合会の登録を受ける必要はあります。

また、国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した合計期間が20年以上の人も日本行政書士会連合会の登録を受けて行政書士になることができます。

2条の2(欠格事由)

第二条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、前条の規定にかかわらず、行政書士となる資格を有しない。
一 未成年者
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者
四 公務員で懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
五 偽りその他不正の手段により当該登録を受けたことが判明したことにより登録の取消しの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
六 第十四条の規定により業務の禁止の処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
七 懲戒処分により、弁護士会から除名され、公認会計士の登録の抹消の処分を受け、弁理士、税理士、司法書士若しくは土地家屋調査士の業務を禁止され、又は社会保険労務士の失格処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から三年を経過しないもの
八 税理士法の規定により税理士業務の禁止処分の決定を受けて、決定を受けた日から三年を経過しないもの

本条では、行政書士になれない者を規定しています。つまり、行政書士として登録できる者とは、「2条の資格を有している者」、かつ「2条の2の欠格事由に該当しない者」です。

注意点

  1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得れば3年を待たずに直ちに欠格事由ではなくなる。
  2. 禁錮刑以上の刑に処された場合、「処された日」が起算点ではなく、「刑の執行が終わったとき等」が起算点であること
  3. 6号の内容は、行政書士業務の禁止処分を受けた者が対象で、2年以内の業務停止処分を受けた者は対象外です。違いは、個別指導で解説。

6条(登録)

第6条 行政書士となる資格を有する者が、行政書士となるには、行政書士名簿に、住所、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他日本行政書士会連合会の会則で定める事項の登録を受けなければならない。
2 行政書士名簿は、日本行政書士会連合会に備える。
3 行政書士名簿の登録は、日本行政書士会連合会が行う。

本条は、行政書士を管理しているのは、日本行政書士会連合会であることを示しています。

6条の2(登録の申請及び決定)

第6条の2 6条の1の第1項の規定による登録を受けようとする者は、行政書士となる資格を有することを証する書類を添えて、日本行政書士会連合会に対し、その事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会を経由して、登録の申請をしなければならない。

 日本行政書士会連合会は、前項の規定による登録の申請を受けた場合において、当該申請者が行政書士となる資格を有し、かつ、次の各号に該当しない者であると認めたときは行政書士名簿に登録し、当該申請者が行政書士となる資格を有せず、又は次の各号の一に該当する者であると認めたときは登録を拒否しなければならない。この場合において、登録を拒否しようとするときは、第十八条の四に規定する資格審査会の議決に基づいてしなければならない。

 心身の故障により行政書士の業務を行うことができない者

 行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし行政書士としての適格性を欠く者

 日本行政書士会連合会は、前項の規定により登録を拒否しようとするときは、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に自ら又はその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない。

 日本行政書士会連合会は、第二項の規定により登録をしたときは当該申請者に行政書士証票を交付し、同項の規定により登録を拒否したときはその旨及びその理由を当該申請者に書面により通知しなければならない。

第6条の2の1項で、登録の申請先が日本行政書士会連合会であることを示しています。そして、申請窓口については、行政書士事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会を経由して行います。

【具体例】例えば、東京都で行政書士事務所を開業する場合、東京都行政書士会(厳密にはその中にも支部があるので事務所所在地の属する支部)に申請書を提出します。

第6条の2の2項では、登録申請をしたものの「心身の故障により行政書士の業務を行うことができないと判断された場合」又は「行政書士の信用又は品位を害するおそれがある者その他行政書士の職責に照らし行政書士としての適格性を欠く者と判断された場合」、日本行政書士会連合会は、資格審査会の議決に基づいて登録を拒否しなければなりません(義務)。

第6条の2の3項では、日本行政書士会連合会が登録を拒否しようとするときは、事前に申請者に対して、その旨を通知し、また、弁明する機会を与える義務があることを示しています。つまり、登録拒否をする場合の流れとしては、「申請⇒拒否する旨の通知+弁明の機会の不要⇒登録拒否処分」という流れです。

第6条の2の4項では、行政書士の登録をしたときは、日本行政書士会連合会は、申請者に行政書士証票を交付することを示しています。一方、登録を拒否したときは、その旨及びその理由を当該申請者に書面により通知しなければなりません。

注意点

  1. 行政書士の登録は知事から受けるのではない。日本行政書士会連合会から登録を受ける
  2. 日本行政書士会連合会が登録拒否を行う場合、事前に資格審査会の議決が必要
  3. 日本行政書士会連合会が登録拒否を行う場合、事前に弁明の機会の付与を与えることなく登録拒否をすることはできない。また、聴聞手続きを取る必要はない。

6条の3(登録を拒否された場合等の審査請求)

第6条の3 第6条の2第2項の規定により登録を拒否された者は、当該処分に不服があるときは、総務大臣に対して審査請求をすることができる。
2 第6条の2第1項の規定による登録の申請をした者は、当該申請をした日から3月を経過しても当該申請に対して何らの処分がされない場合には、当該登録を拒否されたものとして、総務大臣に対して審査請求をすることができる。この場合においては、審査請求があつた日に日本行政書士会連合会が同条第二項の規定により当該登録を拒否したものとみなす。
3 前2項の場合において、総務大臣は、行政不服審査法第25条第2項及び第3項並びに第46条第2項の規定の適用については、日本行政書士会連合会の上級行政庁とみなす。

日本行政書士会連合会から登録拒否処分を受けた場合の審査請求先は、総務大臣です(第6条の3の1項)。

そして、登録申請をしたにもかかわらず、3か月間経過しても何ら処分がされない場合、処分を受けていなくても、総務大臣に対して審査請求をすることができます。この場合、日本行政書士会連合会は処分をしていなくても、登録拒否処分をしたとみなされます(第6条の3の2項)。

行政不服審査法25条2項3項の規定とは、執行停止の規定であり、「上級行政庁である審査庁は、必要があると認める場合には執行停止をすることができる」旨の規定です。
また、行政不服審査法46条2項の規定とは、「申請却下又は棄却処分についての審査請求に対して認容裁決をする場合(つまり、処分を取消す場合)、上級行政庁である審査庁は、必要があると認める場合には、処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずる」旨の規定です。ここにおける上級行政庁である審査庁は、総務大臣を指し、処分庁は日本行政書士会連合会を指します(第6条の3の3項)。

6条の4(変更登録)

第6条の4 行政書士は、第6条第1項の規定により登録を受けた事項に変更を生じたときは、遅滞なく、所属する行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に変更の登録を申請しなければならない。

登録事項に変更が生じた場合、直接、日本行政書士会連合会に変更登録を申請するのではなく、所属する行政書士会を経由して、変更登録申請をしなければなりません。

6条の5(登録の取消し)

第6条の5 日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が、偽りその他不正の手段により当該登録を受けたことが判明したときは、当該登録を取り消さなければならない。
2 日本行政書士会連合会は、前項の規定により登録を取り消したときは、その旨及びその理由を当該処分を受ける者に書面により通知しなければならない。
3 第6条の2第2項後段並びに第6条の3第1項及び第3項の規定は、第1項の規定による登録の取消しに準用する。この場合において、同条第3項中「第46条第2項」とあるのは、「第46条第1項」と読み替えるものとする。

不正手段により行政書士の登録を受けたことがバレた場合、日本行政書士会連合会は、必ず、登録を取り消す義務が生じます(第6条の5第1項)。

そして、不正手段を理由に登録を取り消した場合、日本行政書士会連合会は、取り消された者に対して、書面で通知をしなければなりません。口頭通知ではダメです(第6条の5第2項)。

そして、上記登録取消処分を行う場合、資格審査会の議決が必要となります。また、日本行政書士会連合会から登録取消処分を受けた場合の審査請求先は、総務大臣です。そして、行政不服審査法46条1項の規定とは、「処分についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する」旨の規定です。ここにおける審査庁は、総務大臣を指します(第6条の5第3項)。

7条(登録の抹消)

第7条 日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を抹消しなければならない。
一 第2条の2第2号から第4号まで又は第6号から第8号までに掲げる事由のいずれかに該当するに至つたとき。
二 その業を廃止しようとする旨の届出があつたとき。
三 死亡したとき。
四 前条第1項の規定による登録の取消しの処分を受けたとき。
2 日本行政書士会連合会は、行政書士の登録を受けた者が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を抹消することができる。
一 引き続き二年以上行政書士の業務を行わないとき。
二 心身の故障により行政書士の業務を行うことができないとき。
3 第6条の2第2項後段、第6条の3第1項及び第3項並びに前条第2項の規定は、前項の規定による登録の抹消について準用する。この場合において、第6条の3第三項中「第46条第2項」とあるのは、「第46条第1項」と読み替えるものとする。

本条は、行政書士の登録抹消に関する規定です。日本行政書士会連合会が有する名簿から行政書士の名前を消す行為が登録抹消です。例えば、「登録取消しをしたから、登録抹消をする」「廃業の届出があったから登録を抹消する」といったイメージです。これらは義務なので注意しましょう(7条1項)。

また、行政書士が引き続き2年以上行政書士の仕事を行っていない等の理由がある場合、日本行政書士会連合会は、任意で登録を抹消することができます。

そして、上記登録を抹消する場合、資格審査会の議決が必要となります。また、日本行政書士会連合会から登録抹消処分を受けた場合の審査請求先は、総務大臣です。そして、行政不服審査法46条1項の規定とは、「処分についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する」旨の規定です。ここにおける審査庁は、総務大臣を指します(第7条3項)。

7条の2(行政書士証票の返還)

第7条の2 行政書士の登録が抹消されたときは、その者、その法定代理人又はその相続人は、遅滞なく、行政書士証票を日本行政書士会連合会に返還しなければならない。行政書士が第14条の規定により業務の停止の処分を受けた場合においても、また同様とする。
2 日本行政書士会連合会は、前項後段の規定に該当する行政書士が、行政書士の業務を行うことができることとなつたときは、その申請により、行政書士証票をその者に再交付しなければならない。

行政書士の登録が抹消されてしまったら、行政書士証票を日本行政書士会連合会に返還しなければなりません。また、業務停止処分を受けた場合も、その期間は行政書士としての仕事ができないので、行政書士証票を日本行政書士会連合会に返還しないといけません(7条の2第1項)。

そして、業務停止処分期間が満了し、行政書士としての仕事を行えるようになったときは、日本行政書士会連合会に対して行政書士証票の再交付申請を行い、行政書士証票の再交付を受けます。

行政書士証票

7条の3(特定行政書士の付記)

第7条の3 日本行政書士会連合会は、行政書士が第1条の3第2項に規定する研修の課程を修了したときは、遅滞なく、当該行政書士の登録に特定行政書士である旨の付記をしなければならない。

2 日本行政書士会連合会は、前項の規定により行政書士名簿に付記をしたときは、その旨を当該行政書士に書面により通知しなければならない。

行政不服申立ての代理業務を行えるのは日本行政書士会連合会の会則に基づく所定の研修を修了した有資格の行政書士、すなわち「特定行政書士」に限られます。そのため、特定行政書士である旨を登録時に行政書士名簿に付記するものとしています(7条の3第1項)。

【参考】 2019年2月当時、行政書士48000人のうち特定行政書士は3800人余でした。

7条の4(登録の細目)

第7条の4 この法律に定めるもののほか、行政書士の登録に関し必要な事項は、日本行政書士会連合会の会則で定める。

「登録の細目」については、登録処分権限を有する日本行政書士会連合会の会則に委任されています。会則への委任事項は、登録の申請・取消し・抹消、行政書士名簿等であり、さらに独自に定められた主要事項は登録手数料その他登録25,000円、所属行政書士会変更5,000円、登録事項変更4,000円等とされています。

8条(行政書士事務所の設置義務)

第8条 行政書士(行政書士の使用人である行政書士又は行政書士法人の社員若しくは使用人である行政書士を除く。)は、その業務を行うための事務所を設けなければならない。
2 行政書士は、前項の事務所を2以上設けてはならない
3 使用人である行政書士等は、その業務を行うための事務所を設けてはならない。

行政書士の業務を行う場合、原則、事務所を設置しなければなりません。ただし、他の行政書士から雇われている者は、事務所を設置する必要はありません。また、行政書士法人を立ち上げた者も、法人(会社)があるので、行政書士個人として事務所を設置する義務はありません(8条1項)。

そして、行政書士は、2つの事務所を設置することはできません(8条2項)。例えば、行政書士Aが「A第一行政書士事務所」と「A第二行政書士事務所」という風に、2つの行政書士事務所を設置することは許されていません。

使用人である行政書士(他の行政書士に雇われている行政書士)は、行政書士の業務を行うための事務所を設けてはいけません(8条3項)。行政書士として雇われているのであれば、そこで行政書士の業務に専念すべきということです。

9条(帳簿の備付及び保存義務)

第9条 行政書士は、その業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名その他都道府県知事の定める事項を記載しなければならない。
2 行政書士は、前項の帳簿をその関係書類とともに、帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければならない。行政書士でなくなつたときも、また同様とする。

行政書士は、誠実に業務を行い、信用されるような行動をとる責務があります(10条)。その一つの証として、事務所には、帳簿及び関係書類を備え付けるよう義務付けています。そして、帳簿の備え付け期間は、帳簿閉鎖の時から2年間です(9条1項2項)。

帳簿の記載事項

  1. 事件の名称
  2. 年月日
  3. 受けた報酬の額
  4. 依頼者の住所氏名
  5. 都道府県知事の定める事項

1の「事件の名称」とは、例えば、「遺言の作成」等です。 5の「都道府県知事の定める事項」については、都道府県規則である行政書士法施行細則 に委任されています。

行政書士でなくなったとしても、すぐに廃棄することはできず帳簿閉鎖の時から2年間保存しなければなりません(9条2項)。

帳簿閉鎖の時とは

【具体例】 例えば、法人の場合において、事業年度が令和5年9月1日から令和6年8月31日のとき、令和6年8月31日が帳簿閉鎖の時です。いわゆる、決算日の23時59分59秒が帳簿閉鎖の時です。一方、個人事務所の行政書士の場合、事業年度は1月1日~12月31日までの1年間と決まっています。そのため、12月31日の23時59分59秒が帳簿閉鎖の時です。

10条(行政書士の責務)

第10条 行政書士は、誠実にその業務を行なうとともに、行政書士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。

行政書士の信用確保の責務として、①事務所での報酬額掲示義務(10条の2)、②依頼に応ずる義務(11条)、 ③秘密を守る義務(12条)、④依頼された順に迅速に処理する義務(施行規則7条)、⑤依頼に沿った書類作成義務(施行規則9条1·2項)、⑥帳簿記帳義務(9条)、⑦業務他人任せの禁止 (施行規則4条)等があります。

行動面での品位保持責務として、⑧ 不正不当な業務依頼誘致の禁止(施行規則 6条2項)、⑨親切丁寧な応接 (同条1項)等があります。「⑧ 不正不当な業務依頼誘致」とは、依頼人の知識不足を悪用して、報酬を得るために、仕事を依頼するよう誘う行為を言います。

10条の2(報酬の額の掲示義務等)

第10条の2 行政書士は、その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならない。
2 行政書士会及び日本行政書士会連合会は、依頼者の選択及び行政書士の業務の利便に資するため、行政書士がその業務に関し受ける報酬の額について、統計を作成し、これを公表するよう努めなければならない。

行政書士は、事務所の見やすい場所に報酬額について掲示しなければなりません(10条の2第2項)。これはいわゆる「報酬額表」と呼ばれるものです。
【具体例】
例えば、建設業許可申請:50000円~、自動車保管場所証明:5000円~、飲食店営業許可申請:50000円~、風俗営業許可申請:100000円~といった内容を表にして、事務所の見やすい場所(壁等)に貼り付けたりします。

行政書士の報酬は、自由に設定することができるのですが、依頼者(国民)と受任者(行政書士)との双方にとってメリットがあるように、報酬統計(行政書士が実際に行った業務の報酬実績の統計)の作成・公表を行っています。例えば、各種許可・免許申請、会社設立、会計書類、契約書、 遺言書等ごとに報酬金額の平均・最小・最大・最頻値を一覧表の形で公表しています。これは、「まちの法律家」である行政書士業にふさわしい報酬額の透明・ 適正な設定を図るために作成・公表を行っています(10条の2第2項)。

11条(依頼に応ずる義務)

第11条 行政書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない

行政書士は、業務依頼について、原則、依頼を受ける義務があります(応諾義務)。これに違反をすると罰則(100万円以下の罰金)を受けます(23条)。これは、行政書士の業務が、独占業務であり、国民の権利実現といった社会公共的な意味合いを持つため、正当な事由なく依頼を断ることはできないようにしています。 ただし、例外として、正当な事由があれば、依頼を断ることができます

依頼を断れる正当な事由とは

  1. 行政書士が病気・事故等で、一定期間業務ができない場合
  2. 緊急案件が入っていて他の受託業務との関係で対応できない場合
  3. 依頼された書類について、依頼者が犯罪や不法な用途に使う意図が明白な場合。(犯罪を知って協力すると、刑法62条1項の幇助犯に当たる可能性がある。ほうじょはん:正犯者の犯罪の実行を助ける罪)

12条(秘密を守る義務)

第12条 行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱つた事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなつた後も、また同様とする。

行政書士は、業務上、依頼者から個人情報など様々な情報提供を受けます。これについては、他人に漏らしてはいけません。行政書士をやめた後も同様に秘密を漏らしてはいけません。ただし、例外として、正当な理由があれば、秘密を漏らしても違反にはなりません

秘密を漏らしても違反しない正当な理由とは

  1. 依頼者が情報提供に同意している場合
  2. 刑事裁判において、証人として情報提供する場合

13条(会則の遵守義務)

第13条 行政書士は、その所属する行政書士会及び日本行政書士会連合会の会則を守らなければならない。

行政書士は、日本行政書士会連合会の登録を受けた上で、行政書士の業務を行っています。そのため、行政書士会の会則に従うことは当然でしょう。

行政書士が守るべき会則事項

行政書士会の会則には、以下のようなものがあります。

  1. 入会金・会費の納入義務
  2. 名義の貸し借りの禁止
  3. 業務報酬の領収証の交付と副本の5年間保存

13条の2(研修)

第13条の2 行政書士は、その所属する行政書士会及び日本行政書士会連合会が実施する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない

行政書士会及び日本行政書士会連合会が実施する研修は、必ずしも受ける必要はありません。あくまでも研修に臨むことは努力義務であるので注意しましょう。

【研修の具体例】 例えば、入管業務(外国人の在留資格の手続をする業務)の申請取次を行うための研修等があります。

 

13条の3(行政書士法人の設立)

第13条の3 行政書士は、この章の定めるところにより、行政書士法人(第1条の2及び第1条の3第1項(第2号を除く。)に規定する業務を行うことを目的として、行政書士が設立した法人をいう。以下同じ。)を設立することができる。

1条の2とは、行政書士の独占業務のことで、「官公署に提出する書類」や「権利義務又は事実証明に関する書類」を作成する業務を指します。

1条の3第1項(第2号を除く。)とは、下記業務を指します。

  1. 「官公署に提出する書類を官公署に提出する手続」及び「当該官公署に提出する書類に係る許認可等に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続」を代理すること。
  2. 売買契約書等の権利義務書類を代理人として作成すること
  3. 売買契約書等の権利義務書類を代理人として作成する際の法規相談

行政書士は、上記業務を行うことを目的として、行政書士法人を設立することができます。

13条の4(行政書士法人の名称)

第13条の4 行政書士法人は、その名称中に行政書士法人という文字を使用しなければならない。

行政書士法人を設立する場合、法人の名称に「行政書士法人」という文字を使用しなければならないので、例えば、「行政書士法人〇〇法務事務所」「〇〇行政書士法人」という会社名は良いということです。

13条の5(行政書士法人の社員の資格)

第13条の5 行政書士法人の社員は、行政書士でなければならない。
2 次に掲げる者は、社員となることができない。
一 第14条の規定により業務の停止の処分を受け、当該業務の停止の期間を経過しない者
二 第14条の2第1項の規定により行政書士法人が解散又は業務の全部の停止の処分を受けた場合において、その処分を受けた日以前30日内にその社員であつた者でその処分を受けた日から3年(業務の全部の停止の処分を受けた場合にあつては、当該業務の全部の停止の期間)を経過しないもの

行政書士法人の社員とは、行政書士であり、行政書士法人に出資する者です。つまり、共同経営者といったイメージです。

下記のものは行政書士法人の社員になることができません。

  1. 個人行政書士で、業務停止処分を受け、業務停止期間中の者
  2. 行政書士法人が解散処分(懲戒処分)を受けた場合において、①その処分を受けた日以前30日以内にその社員であった者で、かつ、②解散処分を受けた日から3年を経過しないもの
  3. 行政書士法人が業務全部停止処分を受けた場合において、①その処分を受けた日以前30日以内にその社員であった者で、かつ、②業務停止期間中の者

13条の6(行政書士法人の業務の範囲)

第13条の6 行政書士法人は、第1条の2及び第1条の3第1項(第2号を除く。)に規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる。ただし、第1号の総務省令で定める業務を行うことができる行政書士に関し法令上の制限がある場合における当該業務及び第2号に掲げる業務(以下「特定業務」という。)については、社員のうちに当該特定業務を行うことができる行政書士がある行政書士法人に限り、行うことができる。
一 法令等に基づき行政書士が行うことができる業務のうち第1条の2及び第1条の3第1項(第2号を除く。)に規定する業務に準ずるものとして総務省令で定める業務の全部又は一部
二 第1条の3第1項第2号に掲げる業務

1条の2とは、行政書士の独占業務のことで、「官公署に提出する書類」や「権利義務又は事実証明に関する書類」を作成する業務を指します。

1条の3第1項(第2号を除く。)とは、下記業務を指します。

  1. 「官公署に提出する書類を官公署に提出する手続」及び「当該官公署に提出する書類に係る許認可等に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続」を代理すること。
  2. 売買契約書等の権利義務書類を代理人として作成すること
  3. 売買契約書等の権利義務書類を代理人として作成する際の法規相談

行政書士法人が行える業務として13条の6第1号で規定されている業務は、特定業務と呼ばれ下記業務です。

  1. 出入国関係申請取次業務(法務大臣認定の有資格者行政書士がいる事務所に限る)
  2. 労働者派遣事業(労働者派遣事業の許可を受けている行政書士法人が、当該事務所の行政書士を他の事務所に派遣する業務)
  3. 行政書士又は行政書士法人の業務に関連する講習会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務
  4. 行政書士又は行政書士法人の業務に附帯し、又は密接に関連する業務

そして、「1条の3第1項第2号に掲げる業務」とは、「行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する行政不服申立ての手続きの代理業務」です。これは、法定の研修の課程を修了した「特定行政書士」しか行えないので、特定行政書士が在籍する行政書士法人に限り、行うことができます。これも特定業務の一つです。

13条の7(行政書士法人の登記)

第13条の7 行政書士法人は、政令で定めるところにより、登記をしなければならない。
2 前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

行政書士法人は、社団法人として定款に基づいて設立することになります。そのため、定款について公証人の認証を受けた上で、設立登記をする必要があります。

そして、社団法人をはじめ法人は、取引主体となるため(法人として取引ができるため)取引の相手方(第三者)に対して、法人の内部組織情報を公示しておく必要があります。これが登記事項となり、登記をすることで、第三者に対して、対抗することができます。

13条の8(行政書士法人の設立の手続)

第13条の8 行政書士法人を設立するには、その社員となろうとする行政書士が、定款を定めなければならない。
2 会社法第30条第1項の規定は、行政書士法人の定款について準用する。
3 定款には、少なくとも次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 主たる事務所及び従たる事務所の所在地
四 社員の氏名、住所及び特定業務を行うことを目的とする行政書士法人にあつては、当該特定業務を行うことができる行政書士である社員(以下「特定社員」という。)であるか否かの別
五 社員の出資に関する事項

行政書士法人を設立するためには、定款の作成が必要です。

定款の絶対的記載事項

定款に必ず定める必要がある内容は、上記3項1号~5号までの5つです。3項4号の特定業務とは、行政書士の中でも、一定の資格をもつ有資格者行政書士のみが行える業務を指し、例えば、出入国関係申請取次業務や、行政不服申し立て業務等があります。その業務を行える行政書士なのか否かを定款に記載します。3項5号の「社員の出資に関する事項」とは、金銭出資であればいくら出資するのか、現物出資であれば、評価額いくらのモノを出資するのか、労務出資であれば、その旨を記載します。

13条の9(行政書士法人の成立の時期)

第13条の9 行政書士法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによつて成立する。

行政書士法人は、本店事務所の所在地で設立登記をすることで成立します。これは、管轄法務局に設立登記の申請をするので、申請先は法務局です。

13条の10(行政書士法人の成立の届出等)

第13条の10 行政書士法人は、成立したときは、成立の日から二週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、その主たる事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会(以下「主たる事務所の所在地の行政書士会」という。)を経由して、日本行政書士会連合会に届け出なければならない。
2 日本行政書士会連合会は、その会則の定めるところにより、行政書士法人名簿を作成し、その事務所に備えて置かなければならない。

行政書士法人を登記したら、登記(成立)した日から2週間以内に管轄行政書士会を経由して日本行政書士会連合会に届出をしなければなりません(13条の10第1項)。そして、日本行政書士会連合会は、行政書士法人名簿を作成して、事務所に備え置きます。設立登記によって有効に成立した行政書士法人は、自動的に本店所在地の行政書士会の会員となります(16条の6第1項)。

13条の11(行政書士法人の定款の変更)

第13条の11 行政書士法人は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によつて、定款の変更をすることができる。
2 行政書士法人は、定款を変更したときは、変更の日から2週間以内に、変更に係る事項を、主たる事務所の所在地の行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に届け出なければならない。

定款変更をする場合、行政書士法人の総社員(出資している行政書士の全員)の同意が必要です。そして、定款変更をしたら、変更日から2週間以内に、本店所在地を管轄する行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に届出が必要です。また、定款変更は、登記をしないと対外的に対抗力が生じません。そして、支店(従たる事務所)を新設したり移転したりする場合、その登記によって、その所在地の行政書士会に自動入会することになります(16条の6第2項)。

13条の12(行政書士法人の業務を執行する権限)

第13条の12 行政書士法人の社員は、定款で別段の定めがある場合を除き、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。
2 特定業務を行うことを目的とする行政書士法人における当該特定業務については、前項の規定にかかわらず、当該特定業務に係る特定社員のみが業務を執行する権利を有し、義務を負う。

行政書士法人の社員(出資している行政書士)は、定款に異なる定めをしなければ、全員業務執行社員となります。特定業務を行う行政書士法人において、特定業務を行えるのは、特定社員のみです。

特定業務とは、行政書士の中でも、一定の資格をもつ有資格者行政書士のみが行える業務を指し、例えば、出入国関係申請取次業務や、行政不服申し立て業務等があり、当該有資格者行政書士が、特定社員です。

13条の13(行政書士法人の代表)

第13条の13 行政書士法人の業務を執行する社員は、各自行政書士法人を代表する。ただし、定款又は総社員の同意によつて、業務を執行する社員のうち特に行政書士法人を代表すべきものを定めることを妨げない。
2 特定業務を行うことを目的とする行政書士法人における当該特定業務については、前項本文の規定にかかわらず、当該特定業務に係る特定社員のみが各自行政書士法人を代表する。ただし、当該特定社員の全員の同意によつて、当該特定社員のうち特に当該特定業務について行政書士法人を代表すべきものを定めることを妨げない。
3 行政書士法人を代表する社員は、定款によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。

行政書士法人の業務執行社員は、原則、全員代表者(代表社員)です。ただし、定款又は総社員の同意によって、代表社員を定めた場合は、その者が行政書士法人の代表者となります(13条の13の第1項)。特定業務については、全社員の同意(出資している行政書士全員の同意)によって、特定業務のみの代表社員を定めることも可能です(13条の13の第2項)。

13条の14(行政書士法人の社員の常駐)

第13条の14 行政書士法人は、その事務所に、当該事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会の会員である社員を常駐させなければならない。

【具体例】 例えば、行政書士法人の事務所が東京都内にあるのであれば、東京都内の行政書士会の会員である行政書士(社員)をその事務所に常駐させなければなりません。

13条の15(行政書士法人の特定業務の取扱い)

第13条の15 特定業務を行うことを目的とする行政書士法人は、当該特定業務に係る特定社員が常駐していない事務所においては、当該特定業務を取り扱うことができない。

【具体例】 例えば、行政不服申立業務を行う行政書士法人があり、本店と支店を有していた。本店には行政不服申立を行える有資格者行政書士が在籍していて、支店には在籍していなかった。この場合、本店では行政不服申立業務を行えるが、支店では行政不服申立業務を行えません。

13条の16(行政書士法人の社員の競業の禁止)

第13条の16 行政書士法人の社員は、自己若しくは第三者のためにその行政書士法人の業務の範囲に属する業務を行い、又は他の行政書士法人の社員となつてはならない。
2 行政書士法人の社員が前項の規定に違反して自己又は第三者のためにその行政書士法人の業務の範囲に属する業務を行つたときは、当該業務によつて当該社員又は第三者が得た利益の額は、行政書士法人に生じた損害の額と推定する。

行政書士法人の社員である行政書士の競業避止義務を規定した条文です。行政書士法人に在籍する行政書士(社員)が、当該行政書士法人とは関係なく、個人事業として行政書士の業務を行うことは、利益相反行為にあたるので禁止されています。そして、もし競業避止義務に違反した場合、当該個人事業として行政書士の業務を行った行政書士の利益額が、行政書士法人の損害額と推定し、損害賠償責任を負います。

13条の17(行政書士の義務に関する規定の準用)

第13条の17 第8条第1項、第9条から第11条まで及び第13条の規定は、行政書士法人について準用する。

行政書士法人にも準用される内容は下記の通りです。

  1. 8条1項:行政書士法人は、その業務を行うための事務所を設けなければならない。
  2. 9条:帳簿の備付及び保存
  3. 10条:行政書士法人は、誠実にその業務を行なうとともに、行政書士法人の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
  4. 10条の2:報酬の額の掲示
  5. 11条:行政書士法人は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない。
  6. 13条:行政書士法人は、その所属する行政書士会及び日本行政書士会連合会の会則を守らなければならない。

13条の18(行政書士法人の社員の法定脱退)

第13条の18 行政書士法人の社員は、次に掲げる理由によつて脱退する。
一 行政書士の登録の抹消
二 定款に定める理由の発生
三 総社員の同意
四 第13条の5第2項各号のいずれかに該当することとなつたこと。
五 除名

本条は、行政書士の社員が法人から脱退する原因を列挙しています。「脱退」とは、社員でなくなることを意味します。つまり、出資者から外れるという意味です。

「1号の行政書士の登録の抹消」とは、例えば、社員である行政書士本人の死亡があります。

「第13条の5第2項各号」とは下記の者です。下記に該当すると、自動的に行政書士法人の社員でなくなります。

  1. 個人行政書士で、業務停止処分を受け、業務停止期間中の者
  2. 行政書士法人が解散処分(懲戒処分)を受けた場合において、①その処分を受けた日以前30日以内にその社員であった者で、かつ、②解散処分を受けた日から3年を経過しないもの
  3. 行政書士法人が業務全部停止処分を受けた場合において、①その処分を受けた日以前30日以内にその社員であった者で、かつ、②業務停止期間中の者

「5号の除名」とは、例えば、出資義務を履行しない場合や不正業務を行った場合などを理由に他の社員の過半数決議で請求された裁判によって、除名判決を受けた場合です。

13条の19(行政書士法人の解散)

第13条の19 行政書士法人は、次に掲げる理由によつて解散する。
一 定款に定める理由の発生
二 総社員の同意
三 他の行政書士法人との合併
四 破産手続開始の決定
五 解散を命ずる裁判
六 第14条の2第1項第3号の規定による解散の処分
七 社員の欠亡
2 行政書士法人は、前項第三号の事由以外の事由により解散したときは、解散の日から2週間以内に、その旨を、主たる事務所の所在地の行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に届け出なければならない。

本条は、行政書士法人が解散するのはどういった場合かを規定しています。そして、行政書士法人を解散したときは、解散日から2週間以内に、管轄行政書士会を経由して、日本行政書士会連合会に届出をしなければなりません。

13条の22(立入検査)

第13条の22 都道府県知事は、必要があると認めるときは、日没から日出までの時間を除き、当該職員に行政書士又は行政書士法人の事務所に立ち入り、その業務に関する帳簿及び関係書類(これらの作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)を検査させることができる。
2 前項の場合においては、都道府県知事は、当該職員にその身分を証明する証票を携帯させなければならない。
3 当該職員は、第1項の立入検査をする場合においては、その身分を証明する証票を関係者に呈示しなければならない。
4 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

立入検査は「任意」であるとしても、 不当に立ち入り検査を拒否すると30万円以下の罰金に処されるので間接強制です(23条の2第2項)。そして、監督機関である都道府県知事は、税務調査等のような質問権限まではないので注意しましょう。

14条(行政書士に対する懲戒)

第14条 行政書士が、この法律若しくはこれに基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は行政書士たるにふさわしくない重大な非行があつたときは、都道府県知事は、当該行政書士に対し、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 2年以内の業務の停止
三 業務の禁止

都道府県知事が決定する個人行政書士に対する「懲戒処分」は、「戒告」と「業務停止」「業務禁止」の3段階あります。

戒告

「戒告」は、法規違反などについて将来を戒める懲戒処分の最も軽い段階です。懲戒処分はすべて公告されるため、「戒告」を受けた場合も公告されます。そのため、最も軽い懲戒処分であったとしても制裁効果があります(14条の5)。

2年以内の業務停止

「2年以内の業務停止」は、たとえ日数による停止処分であっても、法的に行政書士業務に従事することが法的に禁止されるので、不利益効果が伴います。そして、業務停止処分を受けると、下記義務が発生します。

  1. 日本行政書士会連合会への行政書士証票の一時返還義務(7条の2第1項後段)
  2. 行政書士事務所表札を期間中はずす義務(施行規則2条の14第2項)
  3. 所属行政書士会への届出義務(行政書士会会則)
  4. 期間中は行政書士法人の社員になれない(13条の5第2項一号

業務禁止

「業務禁止」は、業務停止処分以上の不利益効果を生じます。

  1. 所属行政書士会への届出義務(行政書士会会則)
  2. 3年間は行政書士の欠格事由該当(2条の2第7号)
  3. 日本行政書士会連合会への欠格該当の届出義務(施行規則12条1号)
  4. 日本行政書士会連合会による登録抹消(7条1項1号)
  5. 登録抹消により、行政書士証票の返還義務と所属書士会の自動退会(7条の2第1項前段、16条の5第3項)

14条の2(行政書士法人に対する懲戒)

第14条の2 行政書士法人が、この法律又はこの法律に基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は運営が著しく不当と認められるときは、その主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事は、当該行政書士法人に対し、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 2年以内の業務の全部又は一部の停止
三 解散
2 行政書士法人が、この法律又はこの法律に基づく命令、規則その他都道府県知事の処分に違反したとき又は運営が著しく不当と認められるときは、その従たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事は、当該行政書士法人に対し、次に掲げる処分をすることができる。ただし、当該違反等が当該従たる事務所に関するものであるときに限る。
一 戒告
二 当該都道府県の区域内にある当該行政書士法人の事務所についての2年以内の業務の全部又は一部の停止
3 都道府県知事は、前2項の規定による処分を行つたときは、総務省令で定めるところにより、当該行政書士法人の他の事務所の所在地を管轄する都道府県知事にその旨を通知しなければならない。
4 第1項又は第二項の規定による処分の手続に付された行政書士法人は、清算が結了した後においても、この条の規定の適用については、当該手続が結了するまで、なお存続するものとみなす。
5 第1項又は第2項の規定は、これらの項の規定により行政書士法人を処分する場合において、当該行政書士法人の社員につき前条に該当する事実があるときは、その社員である行政書士に対し、懲戒処分を併せて行うことを妨げるものと解してはならない。

行政書士法人に対する懲戒処分については、「戒告」と「業務停止」「解散」の3段階あります。 「戒告」は個人行政書士の場合とほぼ同様です。そして「2年以内の業務停止」は、従たる事務所管轄の都道府県知事も、その区域内における当該事務所業務の違反につき停止処分を行うことができます(14条の2第2項2号)。そして、行政書士法人の場合は「業務禁止」はなく、「解散」となります。主たる事務所管轄の都道府県知事は行政書士法人「解散の処分」をすることができます。 なお、法人業務を執行した社員行政書士の法規違反については、行政書士個人に対して、懲戒処分がなされることもあります(14条の2第5項)。

14条の3(懲戒の手続)

第14条の3 何人も、行政書士又は行政書士法人について第14条又は前条第1項若しくは第2項に該当する事実があると思料するときは、当該行政書士又は当該行政書士法人の事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、当該事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる。
2 前項の規定による通知があつたときは、同項の都道府県知事は、通知された事実について必要な調査をしなければならない。
3 都道府県知事は、第14条第2号又は前条第1項第2号若しくは第2項第2号の処分をしようとするときは、行政手続法第13条第1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
4 前項に規定する処分又は第14条第3号若しくは前条第1項第3号の処分に係る行政手続法第15条第1項の通知は、聴聞の期日の一週間前までにしなければならない。
5 前項の聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

戒告処分を行う場合、事前に弁明の機会の付与が必要で、業務停止処分・業務禁止処分・解散処分を行う場合、事前に聴聞手続が必要となります(14条の3第3項4項)。そして、聴聞の通知は、聴聞期日の1週間前までにしなければなりません(14条の3第4項)。ちなみに、「行政手続法第15条第1項の通知」とは、聴聞の通知を指します。

14条の4(登録の抹消の制限等)

第14条の4 都道府県知事は、行政書士に対し第14条第2号又は第3号に掲げる処分をしようとする場合においては、行政手続法第15条第1項の通知を発送し、又は同条第3項前段の掲示をした後直ちに日本行政書士会連合会にその旨を通知しなければならない。
2 日本行政書士会連合会は、行政書士について前項の通知を受けた場合においては、都道府県知事から第14条第2号又は第3号に掲げる処分の手続が結了した旨の通知を受けるまでは、当該行政書士について第7条第1項第2号又は第2項各号の規定による登録の抹消をすることができない。

「第14条第2号又は第3号」は、業務停止処分又は業務禁止処分です。個人行政書士に対し、業務停止処分又は業務禁止処分をしようとするときは、事前に聴聞の通知を発送し、不利益処分の名あて人となるべき者(個人行政書士)の所在が判明しない場合には、掲示による通知を行い、掲示後、直ちに日本行政書士会連合会にその旨を通知しなければなりません(14条の4第1項)。 そして、上記通知を受けた日本行政書士会連合会は、都道府県知事から業務停止処分又は業務禁止処分の手続が結了した旨の通知を受けるまでは、当該行政書士について「廃業の届出」等による登録の抹消をすることができません。これは、懲戒処分をさけるために自主廃業の届出をして登録抹消を狙う余地をふさぐためのルールです(14条の4第2項)。

14条の5(懲戒処分の公告)

第14条の5 都道府県知事は、第14条又は第14条の2の規定により処分をしたときは、遅滞なく、その旨を当該都道府県の公報をもつて公告しなければならない。

都道府県知事は、個人行政書士に対して「戒告処分」「業務停止処分」「業務禁止処分」をしたとき、又は、行政書士法人に対して「戒告処分」「業務停止処分」「解散処分」をしたときは、遅滞なく、公告

をしなければなりません。

行政書士法における罰則

1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

第21条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
一 行政書士となる資格を有しない者で、日本行政書士会連合会に対し、その資格につき虚偽の申請をして行政書士名簿に登録させたもの
二 第19条第1項の規定に違反した者

第22条 第12条又は第19条の3の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

下記の者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

  1. 無資格者であるにも関わらず、日行連に対して虚偽申請をして登録を受けた者(21条1号)。
  2. 無資格で、行政書士の業務を行った者(21条2号)

100万円以下の罰金

第22条の4 第19条の2の規定に違反した者は、100万円以下の罰金に処する。

第23条 第9条又は第11条の規定に違反した者は、100万円以下の罰金に処する。 2 行政書士法人が第13条の17において準用する第9条又は第11条の規定に違反したときは、その違反行為をした行政書士法人の社員は、100万円以下の罰金に処する。

下記の者は、100万円以下の罰金に処せられます。

  1. 行政書士でない者が、行政書士又はこれと紛らわしい名称を用いた場合(22条の4)
  2. 行政書士法人でない者が、行政書士法人又はこれと紛らわしい名称を用いた場合(22条の4)
  3. 行政書士会又は日本行政書士会連合会でない者が、行政書士会若しくは日本行政書士会連合会又はこれらと紛らわしい名称を用いた場合(22条の4)
  4. 帳簿の備付及び保存の規定に違反した場合(23条)
  5. 依頼に応ずる義務に違反した場合(23条)

30万円以下の罰金

第22条の2 第4条の7第2項の規定に違反して不正の採点をした者は、30万円以下の罰金に処する。

第22条の3 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした指定試験機関の役員又は職員は、30万円以下の罰金に処する。
一 第4条の10の規定に違反して帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかつたとき。
二 第4条の12第1項又は第2項の規定による報告を求められて、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
三 第4条の13第1項の規定による許可を受けないで試験事務の全部を廃止したとき。

第23条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
一 第14条の20の2第6項において準用する会社法第955条第1項の規定に違反して、同項に規定する調査記録簿等に同項に規定する電子公告調査に関し法務省令で定めるものを記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をし、又は当該調査記録簿等を保存しなかつた者
二 第13条の22第一項の規定による当該職員の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第23条の3 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第一号の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。

100万円以下の過料・30万円以下の過料

第24条 行政書士会又は日本行政書士会連合会が第16条の3第1項(第18条の5において準用する場合を含む。)の規定に基づく政令に違反して登記をすることを怠つたときは、その行政書士会又は日本行政書士会連合会の代表者は、30万円以下の過料に処する。

第25条 次の各号のいずれかに該当する者は、100万円以下の過料に処する。
一 第13条の20の2第6項において準用する会社法第946条第3項の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二 正当な理由がないのに、第13条の20の2第6項において準用する会社法第951条第2項各号又は第955条第2項各号に掲げる請求を拒んだ者

第26条 次の各号のいずれかに該当する場合には、行政書士法人の社員又は清算人は、30円以下の過料に処する。
一 この法律に基づく政令の規定に違反して登記をすることを怠つたとき。
二 第13条の20の2第2項又は第5項の規定に違反して合併をしたとき。
三 第13条の20の2第6項において準用する会社法第941条の規定に違反して同条の調査を求めなかつたとき。
四 定款又は第13条の21第1項において準用する会社法第615条第1項の会計帳簿若しくは第13条の21第1項において準用する同法第617条第1項若しくは第2項の貸借対照表に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、又は虚偽の記載若しくは記録をしたとき。
五 第13条の21第2項において準用する会社法第656条第1項の規定に違反して破産手続開始の申立てを怠つたとき。
六 第13条の21第2項において準用する会社法第664条の規定に違反して財産を分配したとき。
七 第13条の21第1項において準用する会社法第670条第2項又は第5項の規定に違反して財産を処分したとき。

戸籍法|基礎知識を攻略するために

戸籍に関する事務は、この法律に別段の定めがあるものを除き、市町村長が管掌します(戸籍法2条)。つまり、戸籍関係の事務は、原則、市町村長の管轄の仕事で、監督します。そして、法務大臣は、市町村長が戸籍事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができます(3条)。

そして、戸籍法に基づく届出は、「本人の本籍地」又は「届出人の所在地」で行わなければなりません(戸籍法25条1項)。ただし、届出によっては、上記以外の場所で届け出をすることができる場合もあるので、その点も解説していきます。ちなみに、届出先については、市区町村の役所です。

出生

出生の届出は、14日以内国外で出生があったときは、3か月以内)にこれをしなければなりません(49条)。

出生届出書の記載事項

  1. 子の「男女の別」及び「嫡出子又は嫡出でない子の別」
  2. 出生の「年月日時分」及び「場所」
  3. 父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍
  4. 世帯主の氏名及び世帯主との続柄
  5. 「父母の出生の年月日」及び「子の出生当時の父母の年齢」
  6. 「子の出生当時の世帯の主な仕事」及び「国勢調査実施年の4月1日から翌年3月31日までに発生した出生については、父母の職業」
  7. 父母が同居を始めた年月

子の名前

子の名には、常用平易な文字を用いなければなりません(50条1項)。常用平易な文字の範囲は、「常用漢字表に掲げる漢字」や「片仮名」又は「平仮名(変体仮名を除く。)」も使用できます(50条2項)。

出生の届出先

出生の届出は、子の出生地、届出人(父又は母)の所在地又は本籍地で行います(51条1項、25条1項)。もし、汽車その他の交通機関の中で出生があったときは、母がその交通機関から降りた地で、出生の届出をすることができます(51条2項)。

出生の届出義務者

嫡出子出生の届出は、父又は母が行い、子の出生前に父母が離婚をした場合には、がこれをしなければなりません(52条1項)。一方、嫡出でない子(婚姻外の子)の出生の届出は、がしなければなりません(52条2項)。上記届出は、法定代理人によって行うこともできます(52条4項)。もし、上記届出をすべき者が届出をすることができない場合には、下記の者が次の順序に従って、届出をしなければなりません(52条3項)。

  1. 同居者
  2. 出産に立ち会つた医師、助産師又はその他の者

また、「嫡出子否認の訴え」を提起したときであって、出生の届出をしなければなりません(53条)。

船舶で出生した場合

航海日誌を備えない船舶(小型船舶)の中で出生があったときはその船舶が最初に入港した地で、出生の届出をすることができます(51条2項)。一方、航海日誌を備える義務がある船舶(大型船舶)において、航海中に出生があったときは、船長は、24時間以内に、航海日誌に記載して、署名しなければなりません(55条1項)。その後、船舶が日本の港に到着したときは、船長は、遅滞なく出生に関する航海日誌の謄本をその地の市町村長に送付しなければなりません(55条2項)。また、船舶が外国の港に到着したときは、船長は、遅滞なく出生に関する航海日誌の謄本をその国に駐在する日本の大使、公使又は領事に送付し、大使、公使又は領事は、遅滞なく外務大臣を経由してこれを本籍地の市町村長に送付しなければなりません(55条3項)。

病院、刑事施設で出生した場合

病院、刑事施設その他の公設所で出生があった場合に、父母が共に届出をすることができないときは、公設所の長又は管理人が、届出をしなければなりません(56条)。分かりやすく言うと、父母が刑務所に入っていて、母が刑務所内で出産した場合、自らが出生の届出を出しに行くことができません。この場合、刑務所長が届出をしなければなりません。

認知

認知とは、法律上の婚姻関係によらず生まれた子を、その父が自分の子だと認める行為を言います。父が認知することで法律上の父子関係が成立します。

認知をしようとする者は、下記事項を届書に記載して、その旨を届け出なければなりません(60条1項)。

  1. 父が認知をする場合には、母の氏名及び本籍
  2. 死亡した子を認知する場合には、死亡の年月日並びにその直系卑属の氏名、出生の年月日及び本籍

そして、胎内に在る子を認知する場合には、届書に「その旨、母の氏名及び本籍」を記載し、「母の本籍地」で認知の届出をしなければなりません(61条)。

婚姻中の父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得します(民法789条2項)。また、父母が嫡出子出生の届出をしたときは、その届出は、認知の届出の効力を有します(戸籍法62条)。

裁判による認知

認知の裁判が確定したときは、訴えを提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければなりません。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければなりません(戸籍法63条)。もし、認知の裁判を提起した者が、裁判確定後、認知の届出をしないときは、その相手方が、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができます(63条2項)。

遺言による認知

遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、認知の届出をしなければなりません(64条)。「就職の日」とは、遺言執行者になった日です。

認知された胎児が死体で生まれた場合

認知された胎児が死体で生まれたときは、出生届出義務者(父または母)は、その事実を知った日から14日以内に、認知の届出地で、その旨を届け出なければなりません。但し、父がすでに死亡しており、遺言による認知をしていた場合、遺言執行者が遺言による認知の届出をした場合には、遺言執行者が、その届出をしなければなりません(65条)。

婚姻

婚姻をしようとする者は、下記事項を届書に記載して、その旨を届け出なければなりません(74条)。

  1. 夫婦が称する氏
  2. 当事者が外国人であるときは、その国籍
  3. 当事者の父母の氏名及び父母との続柄並びに当事者が特別養子以外の養子であるときは、養親の氏名
  4. 当事者の初婚又は再婚の別並びに初婚でないときは、直前の婚姻について死別又は離別の別及びその年月日
  5. 同居を始めた年月
  6. 「同居を始める前の当事者の世帯の主な仕事」及び「国勢調査実施年の4月1日から翌年3月31日までの届出については、当事者の職業」
  7. 当事者の世帯主の氏名

婚姻取消の裁判が確定したときは、訴えを提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければなりません。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければなりません(75条、63条1項)。もし、婚姻取消の裁判を提起した者が、裁判確定後、婚姻取消の届出をしないときは、その相手方が、裁判の謄本を添付して、婚姻取消の裁判が確定した旨を届け出ることができます(75条、63条2項)。

婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻取消によって婚姻前の氏(苗字)に復します(戻ります)(民法749条、767条1項)。なお、上記規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、婚姻取消の日から3か月以内であれば、届け出ることによって、婚姻取消の際(婚姻中)に称していた氏を称することができます(民法749条、767条2項)。そして、婚姻取消の際に称していた氏を称しようとする者は、「婚姻取消の年月日」を届書に記載して、その旨を届け出なければなりません(75条の2、77条の2)。

離婚

離婚をしようとする者は、下記事項を届書に記載して、その旨を届け出なければなりません(76条)。

  1. 親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
  2. 協議上の離婚である旨
  3. 当事者が外国人であるときは、その国籍
  4. 当事者の父母の氏名及び父母との続柄並びに当事者が特別養子以外の養子であるときは、養親の氏名
  5. 同居を始めた年月
  6. 別居した年月
  7. 別居する前の住所
  8. 「別居する前の世帯の主な仕事」及び「国勢調査実施年の4月1日から翌年3月31日までの届出については、当事者の職業」
  9. 当事者の世帯主の氏名

離婚又は離婚取消の裁判が確定したときは、訴えを提起した者は、裁判が確定した日から10日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければなりません。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければなりません(77条1項、63条1項)。もし、離婚又は離婚取消の裁判を提起した者が、裁判確定後、離婚又は離婚取消の届出をしないときは、その相手方が、裁判の謄本を添付して、離婚又は離婚取消の裁判が確定した旨を届け出ることができます(77条1項、63条2項)。

離婚裁判により離婚した場合の届書の記載事項(77条2項)

  1. 上記76条の記載事項
  2. 「親権者と定められた当事者の氏名」及び「その親権に服する子の氏名」
  3. 調停による離婚、審判による離婚、和解による離婚、請求の認諾による離婚又は判決による離婚の別

婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏(苗字)に復します(戻ります)(民法767条1項)。なお、上記規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3か月以内であれば、届け出ることによって、離婚の際(婚姻中)に称していた氏を称することができます(民法767条2項)。そして、離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、「離婚の年月日」を届書に記載して、その旨を届け出なければなりません(77条の2)。

離婚又は認知の場合の親権者

子の出生前に父母が離婚した場合において、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができます(819条3項ただし書)。

父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が親権者となります(819条4項)。

そして、上記規定によって協議で親権者を定めようとする者は、父が親権者である旨を届け出なければなりません(78条)。

未成年者の後見

未成年者の後見開始の届出は、未成年後見人が、その就職の日から10日以内にしなければなりません(81条)。「就職に日」とは、未成年後見人となった日です。未成年後見人とは、例えば、弁護士などがなります。

未成年者の後見開始の届書の記載事項

  1. 後見開始の原因及び年月日
  2. 未成年後見人が就職した年月日

未成年後見人が死亡・欠格事由に該当した場合

「未成年後見人が死亡し」、又は「後見人の欠格事由に該当」することとなったことにより未成年後見人の地位を失ったことによって未成年後見人が欠けたときは、後任者は、就職の日から10日以内に、未成年後見人が地位を失った旨の届出をしなければなりません(82条1項)。また、未成年者、その親族又は未成年後見監督人も上記届出をすることができます(82条3項)。そして、上記届書には、未成年後見人がその地位を失った「原因」及び「年月日」を記載しなければなりません(82条4項)。

複数人いた未成年後見人の一部の者が死亡・欠格事由に該当した場合

数人の未成年後見人の一部の者が「死亡し」、又は「後見人の欠格事由に該当」することとなったことにより未成年後見人の地位を失ったときは、他の未成年後見人は、その事実を知った日から10日以内に、未成年後見人が地位を失った旨の届出をしなければなりません。また、未成年者、その親族又は未成年後見監督人も上記届出をすることができます(82条3項)。そして、上記届書には、未成年後見人がその地位を失った「原因」及び「年月日」を記載しなければなりません(82条4項)。

未成年者の後見の終了の届出

未成年者の後見の終了の届出は、未成年後見人が、10日以内にしなければなりません(84条1項)。その届書には、未成年者の後見の終了の「原因」及び「年月日」を記載しなければなりません(84条2項)。

未成年後見人に関する78条~84条の規定は、未成年後見監督人について準用します(85条)。

死亡の届出

死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内国外で死亡があったときは、その事実を知った日から3か月以内)にしなければなりません(86条1項)。

死亡届出書の記載事項

  1. 死亡の年月日時分及び場所
  2. 死亡者の男女の別
  3. 死亡者が外国人であるときは、その国籍
  4. 死亡当時における配偶者の有無及び配偶者がないときは、未婚又は直前の婚姻について死別若しくは離別の別
  5. 死亡当時の生存配偶者の年齢
  6. 出生後30日以内に死亡したときは、出生の時刻
  7. 「死亡当時の世帯の主な仕事」並びに「国勢調査実施年の4月1日から翌年3月31日までに発生した死亡については、死亡者の職業及び産業」
  8. 死亡当時における世帯主の氏名

死亡届出義務者

下記の者が、その順序にしたがって、死亡の届出をしなければなりません。ただし、順序にかかわらず届出をすることができます(87条1項)。

  1. 同居の親族
  2. その他の同居者
  3. 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人

また、死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も、これをすることができます(87条2項)。

死亡届出場所

  1. 亡くなった人の死亡地の役所 (88条1項)
    亡くなった場所の役所(病院で息を引き取った場合の、その病院がある市区町村役場など)でも死亡届の届け出が可能です。
  2. 亡くなった人の本籍地の役所(25条1項)
  3. 届出人の所在地の役所(25条1項)死亡届を届け出る人の所在地の役所でも提出は可能です。

また、下記の場合は、上記以外の場所でも死亡の届出ができます(88条2項)。

  • 死亡地が明らかでないときは、死体が最初に発見された地で、死亡の届出をすることができる。
  • 汽車その他の交通機関の中で死亡があったときは死体をその交通機関から降ろした地で、死亡の届出をすることができる。
  • 航海日誌を備えない船舶の中で死亡があったときはその船舶が最初に入港した地で、死亡の届出をすることができる。

国籍の得喪

「国籍の得喪」とは、個人が国籍(国民としての法的な所属国)を得たり失ったりすることを指します。
日本国籍を取得する原因には、「出生」、「(国籍取得)届出」、「帰化」の3つがあります。
日本国籍を失う原因には、「帰化の取り消し」「国籍離脱」「他国の国籍を取得した場合(国籍法11条)」があります。

国籍取得の届出

国籍を取得した場合の国籍取得の届出は、国籍を取得した者が、その取得の日から1か月以内(その者がその日に国外に在るときは、3か月以内)にしなければなりません(102条1項)。

国政取得届出書の記載事項

  1. 国籍取得の年月日
  2. 国籍取得の際に有していた外国の国籍
  3. 父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍
  4. 配偶者の氏名及び本籍、配偶者が外国人であるときは、その氏名及び国籍
  5. その他法務省令で定める事項

帰化

帰化とは、「外国籍の方が日本国籍を取得する」ことを意味します。

国籍取得と帰化の違い

届出による国籍の取得とは、一定の要件を満たす者が、「法務大臣に対して届け出る」ことによって、日本国籍を取得するという制度です。一方、帰化とは、日本国籍の取得を希望する外国人からの意思表示に対して、「法務大臣の許可」によって、日本の国籍を与える制度です。
例えば、父が日本人で母が外国人である子は、日本国籍を取得することができます。

帰化の届出

法務大臣の許可を得て帰化した者は、告示の日から1か月以内に、帰化の届出をしなければなりません(102条の2)。ちなみに、法務大臣が帰化を許可した場合には、官報にその旨が告示されます。

国籍喪失の届出

国籍喪失の届出は、届出事件の本人、配偶者又は四親等内の親族が、国籍喪失の事実を知った日から1か月以内(届出をすべき者がその事実を知った日に国外に在るときは、その日から3か月以内)にしなければなりません(103条1項)。

国籍の留保の意思の表示

国籍留保とは、外国で生まれた子で、出生によって日本国籍と同時に外国国籍も取得した子が、日本国籍喪失を防ぐための制度です。

そして、出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼって日本の国籍を失います(国籍法12条)。日本の国籍を留保したい場合出生の日から3か月以内に、日本の国籍を留保する旨を届け出をしなければなりません(戸籍法104条1項)。そして、この国籍留保の届出は、出生の届出とともに、市区町村役場又は在外公館に提出する必要があります(104条2項)。ただし、天災その他第一項に規定する者の責めに帰することができない事由によって上記期間内に届出をすることができないときは、その期間は、届出をすることができるに至った時から14日以内に行えばよいこととなっています(104条3項)。

日本国籍の選択の宣言

外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなった時が「18歳に達する以前であるときは20歳に達するまでに」、その時が「18歳に達した後であるときはその時から2年以内」に、いずれかの国籍を選択しなければなりません(国籍法14条1項)。そして、日本国籍の選択は、「外国の国籍を離脱すること」によるほかは、「日本の国籍を選択し、かつ、外国国籍を放棄する旨の宣言(選択の宣言」をすることによって行います(国籍法14条2項)。この日本の国籍の選択の宣言は、その宣言をしようとする者が、その旨を届け出ることによって行います(104条の2第1項)。

氏(苗字)の変更

やむを得ない事由によって氏(苗字)を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければなりません(107条1項)。「やむを得ない事由」とは、氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合をいうとされています。

外国人と婚姻をした者の氏の変更

外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏(外国人の苗字)に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から6か月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができます(107条2項)。例えば、苗字を山田からスミスに変更する場合、6か月以内に氏名変更の届出が必要です。
また、氏を変更した者が、離婚、婚姻の取消し又は配偶者の死亡の日以後にその氏を変更の際に称していた氏に変更しようとするときは、その者は、その日から3か月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができます(107条3項)。例えば、婚姻により苗字を山田からスミスに変更し、その後離婚して、スミスから山田に変更する(戻す)場合、3か月以内に氏名変更の届出が必要です。

父又は母が外国人で、父又は母の称している氏に変更する場合

父又は母が外国人である者でその氏をその父又は母の称している氏に変更しようとする場合、家庭裁判所の許可を得た上で市区町村長に届出をすることで氏を変更することができます(107条4項)。
例えば、「父の苗字がスミス」「母の苗字が山田」で、子の苗字が山田だったとします。この子の苗字をスミスに変更する場合、裁判所の許可が必要となります。

名の変更

名を変更しようとする者は、正当な事由が必要で、家庭裁判所の許可を得て、名の変更の届出をすることによって、変更することができます(107条の2)。正当な事由とは、名が珍名・卑猥・難解などの理由で、名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合が挙げられます。例えば、最近ではキラキラネームをつけられてしまった場合等があります。

転籍

転籍とは、本籍地を移転することを言います。

転籍をしようとするときは、新本籍を届書に記載して、「戸籍の筆頭に記載した者」及び「その配偶者」が、転籍の届出をしなければなりません(108条1項)。つまり、結婚している場合、夫と妻それぞれの署名が必要です。そして、他の市町村に転籍をする場合には、戸籍の謄本を届書に添附しなければなりません(108条2項)。転籍の届出は、従前の本籍地、住所地だけでなく、転籍地の市区町村に対して行うことができます(109条、25条1項)。

戸籍の訂正

戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができます(113条)。この申請は、許可の裁判があった時から1か月以内に、その謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければなりません(115条)。

住民基本台帳法|基礎知識を攻略するために

住民基本台帳法の目的

(目的)
第1条 この法律は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、住民の居住関係の公証選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もって住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする。

国及び都道府県の責務

国及び都道府県は、市町村の住民の住所又は世帯若しくは世帯主の変更及びこれらに伴う住民の権利又は義務の異動その他の住民としての地位の変更に関する市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)その他の市町村の執行機関に対する届出その他の行為(転入届や転居届、転出届出等の「住民としての地位の変更に関する届出」が全て一の行為により行われ、かつ、住民に関する事務の処理が全て住民基本台帳に基づいて行われるように、法制上その他必要な措置を講じなければなりません(2条)。

分かりやすく言うと転入届等は一つの行為で行われるよう、かつ、住民に関する事務処理は住民基本台帳に基づいて行われるよう国は法整備を行い、都道府県は必要な措置を講じなければなりません。

市町村長の責務

市町村長は、常に、住民基本台帳を整備し、住民に関する正確な記録が行われるように努めるとともに、住民に関する記録の管理が適正に行われるように必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(3条1項)。そして、市町村長その他の市町村の執行機関は、住民基本台帳に基づいて住民に関する事務を管理し、又は執行するとともに、住民からの届出その他の行為に関する事務の処理の合理化に努めなければなりません。

住民の責務

住民は、常に、住民としての地位の変更に関する届出を正確に行うように努めなければならず、虚偽の届出その他住民基本台帳の正確性を阻害するような行為をしてはなりません(3条3項)。

すべて者の責務

何人も、「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」又は「住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書、除票の写し若しくは除票記載事項証明書、戸籍の附票の写し、戸籍の附票の除票の写しその他のこの法律の規定により交付される書類の交付」により知り得た事項を使用するに当たって、個人の基本的人権を尊重するよう努めなければなりません(3条4項)。

住民の住所に関する法令の規定の解釈

住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法10条1項に規定する住民の住所と同じです(4条)。
「地方自治法10条1項」とは、「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする」という内容です。住民基本台帳法においても、住民の住所は、この内容を使います。

住民基本台帳

住民の氏名生年月日性別住所など住民基本台帳法で定められた項目を世帯別又は個人別に記載したものを「住民票」といい、それをまとめたものを「住民基本台帳」といいます。

住民基本台帳の備付け

市町村は、住民基本台帳を備え、その住民につき、「住民票の記載事項」及び「外国人住民に係る住民票の記載事項」を記録します(5条)。

住民票の記載事項
  1. 氏名
  2. 出生の年月日
  3. 男女の別
  4. 戸籍の表示。ただし、本籍のない者及び本籍の明らかでない者については、その旨
  5. 住民となった年月日
  6. 住所及び一の市町村の区域内において新たに住所を変更した者については、その住所を定めた年月日
  7. 新たに市町村の区域内に住所を定めた者については、その住所を定めた旨の届出の年月日(職権で住民票の記載をした者については、その年月日)及び従前の住所
  8. 個人番号
  9. 選挙人名簿に登録された者については、その旨
  10. 国民健康保険の被保険者である者については、その資格に関する事項で政令で定めるもの
  11. 後期高齢者医療の被保険者である者については、その資格に関する事項で政令で定めるもの
  12. 介護保険の被保険者である者については、その資格に関する事項で政令で定めるもの
  13. 国民年金の被保険者である者については、その資格に関する事項で政令で定めるもの
  14. 児童手当の支給を受けている者については、その受給資格に関する事項で政令で定めるもの
  15. 住民票コード(番号、記号その他の符号であつて総務省令で定めるもの)等

住民基本台帳の作成

市町村長は、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、住民基本台帳を作成しなければなりません(6条1項)。そして、市町村長は、住民票を磁気ディスクをもって調製することができます(6条3項)。

注意点

住民基本台帳は、市町村長が作成する。都道府県知事や総務大臣、地方公共団体情報システム機構は作成しない。

住民票の記載等

住民票の記載、消除又は記載の修正は、届出に基づき、又は職権で行います(8条)。

他の市町村から当該市町村の区域内に住所を変更

そして、市町村長は、他の市町村から当該市町村の区域内に住所を変更した者につき住民票の記載をしたときは、遅滞なく、その旨を当該他の市町村の市町村長に通知しなければなりません(9条1項)。

市町村の住民以外の者についての戸籍に関する届書等

市町村長は、その市町村の住民以外の者について戸籍に関する届書、申請書その他の書類を受理し、又は職権で戸籍の記載若しくは記録をした場合において、その者の住所地で住民票の記載等をすべきときは、遅滞なく、当該記載等をすべき事項をその住所地の市町村長に通知しなければなりません(9条2項)。

選挙人名簿の登録等に関する選挙管理委員会の通知

市町村の選挙管理委員会は、選挙人名簿に登録したとき、又は選挙人名簿から抹消したときは、遅滞なく、その旨を当該市町村の市町村長に通知しなければなりません(10条)。

住民票の改製

市町村長は、必要があると認めるときは、住民票を改製することができます(10条の2)。

住民票の改製」とは、下記のような場合に、今までの住民票を消除し、住民票の記載事項を新たな住民票に移記した上で現在の住民票とすることをいいます。改製により消除された住民票を改製前住民票といいます。

  1. 住民票がき損・汚損した場合
  2. 住民票に消除や修正された記載事項が多く新たに記載すべき余白がなくなった場合
  3. 住民票の様式または規格等を変更した場合

住民基本台帳の閲覧

住民基本台帳は、原則、非公開なので閲覧できません。ただし、市町村長は、下記活動を行うために住民基本台帳の一部の写しを閲覧することが必要である旨の申出があった場合に限り、その活動に必要な限度において、住民基本台帳の一部の写しを閲覧させることができます(11条の2)。

住民基本台帳を閲覧できる場合
  1. 統計調査、世論調査、学術研究等の調査研究のうち、公益性が高いと認められるもの(その調査結果またはそれに基づく研究が公表され社会に還元されるもの)
  2. 公共的団体(社会福祉協議会等)が行う地域住民の福祉の向上に寄与する活動のうち、公益性が高いと認められるもの
  3. 営利以外の目的で行う居住関係の確認のうち、訴訟の提起その他特別の事情による居住関係の確認として市町村長が定めるもの

注意点

ダイレクトメール発送など営利目的のための閲覧は認められません。

本人等の請求による住民票の写し等の交付

市町村が備える住民基本台帳に記録されている者(住民票から除かれた者を含む)は、当該市町村の市町村長に対し、自己又は自己と同一の世帯に属する者に係る住民票の写し又は住民票に記載をした事項に関する証明書(以下「住民票記載事項証明書」という。)の交付を請求することができます(12条)。

本人等以外の者の申出による住民票の写し等の交付

住民票の写し等の交付は、本人以外の者も行うことができます。

本人以外で住民票の写し等を交付できる者
  1. 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者(例えば、債権者[金融機関・特殊法人等]が債権の回収のために債務者本人の住民票の写し等を取得する場合)
  2. 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者(例えば、相続手続や訴訟手続などについて法令に基づく必要書類として取得する場合)
  3. 住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者(例えば、学術研究等を目的とする機関が、公益性の観点からその成果を社会に還元するために、疫学上の統計データを得る目的で、ある母集団に属する者を一定期間にわたり本人承諾等の下で追跡調査する必要がある場合)

市町村長は、当該市町村が備える住民基本台帳について、上記の者から、「住民票の写しで基礎証明事項のみが表示されたもの」又は「住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するもの」が必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができます(12条の3)。

基礎証明事項とは

基礎証明事項」とは、「氏名、生年月日、性別、住所、住民となった年月日、住定年月日、住所を定めた届出の年月日、前住所」をいいます。

住民票と住民票記載事項証明書の違い

住民票」とは、市町村が住民について「住んでいる」ことを証明するもので、住民基本台帳の情報の写しです。一方 、「住民票記載事項証明」とは、住民票の記載事項のうち一部(または全部)を抜粋し、住民票記載のものと相違ない旨を証明するものです。

選挙人名簿との関係

選挙人名簿の登録は、「住民基本台帳に記録されている者」又は「住民基本台帳に記録されていた者で選挙権を有するもの」について行います(15条1項)。

そして、市町村長は、住民票の記載等をしたときは、遅滞なく、当該市町村の選挙管理委員会に通知しなければなりません(15条2項)。

また、市町村の選挙管理委員会は、上記通知された事項を不当な目的に使用されることがないよう努めなければなりません(15条3項)。

除票簿

除票」とは、転出や死亡などで除かれた住民票を言います。「かつて住んでいた(住民登録をしていた)ことの証明」や「そこに住民登録をする前後の住所地の証明」、あるいは、「その方が死亡していることを証明」する場合に用いられます。

そして、市町村長は、住民票を消除したとき、又は住民票を改製したときは、その消除した住民票又は改製前の住民票を住民基本台帳から除いて別につづり、除票簿として保存しなければなりません(15条の2第1項)。磁気ディスクをもって住民票を調製している市町村にあっては、磁気ディスクをもって調製した除票を蓄積して除票簿とすることができます(15条の2第2項)。

除票の写し等の交付

市町村が保存する除票に記載されている者は、当該市町村の市町村長に対し、その者に係る除票の写し又は除票に記載をした事項に関する証明書(除票記載事項証明書)の交付を請求することができます(15条の4)。

転入届

転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいう)をした者は、転入をした日から14日以内に、下記事項を市町村長に届け出なければなりません(22条1項)。

  1. 氏名
  2. 住所
  3. 転入をした年月日
  4. 従前の住所
  5. 世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄
  6. 転入前の住民票コード(転入をした者につき直近に住民票の記載をした市町村長が、当該住民票に直近に記載した住民票コードをいう。)
  7. 国外から転入をした者その他政令で定める者については、前各号に掲げる事項のほか政令で定める事項

転居届

転居(一の市町村の区域内において住所を変更することをいう。)をした者は、転居をした日から14日以内に、次に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない(23条)。

  1. 氏名
  2. 住所
  3. 転居をした年月日
  4. 従前の住所
  5. 世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄

転出届

転出をする者は、あらかじめ、その氏名、転出先及び転出の予定年月日を市町村長に届け出なければなりません(24条)。

注意点

  1. 転出した後に届出をするのではなく、転出前に届出をする。
  2. 「転居」と「転出」は違うので注意!
    転居」は「同じ市町村内」で引越した時に使われ、「転出」は「他の市区町村」へ引越した時に使われる。

個人番号カードの交付を受けている者等に関する転入届の特例

「個人番号カードの交付を受けている者が転出届をした場合」又は「個人番号カードの交付を受けている世帯主が行う転出届に併せてその世帯に属する個人番号カードの交付を受けていない者が転出届をした場合」においては、転入届をする場合に必要な「転出証明書」の添付が不要となります(24条の2第1項及び第2項)。

つまり、マイナンバーカードを持っている人は、転入届をする場合に必要な「転出証明書」の添付が不要ということです。

世帯変更届

転入届及び転居届の場合を除いて、世帯又はその世帯主に変更があった者は、その変更があつた日から14日以内に、「その氏名」、「変更があった事項」及び「変更があった年月日」を市町村長に届け出なければなりません(25条)。

世帯変更届には例えば、下記があります。

  • 生計主の変更や世帯主の死亡などにより、世帯主を変更する場合(世帯主変更届)
  • 婚姻届などにより、同一住所にあった別々の世帯を一緒にする場合(世帯合併届)
  • 生計が別になったことにより、ひとつの世帯を別々にする場合(世帯分離届)
  • 同一住所に既に存在する別の世帯に異動する場合(世帯変更届)

届出の方式等

転入届・転居届・転出届・世帯変更届は、書面でしなければなりません(27条)。ただし、転出届についてのみオンライン申請ができます。

注意点

転入届・転居届・転出届・世帯変更届は、口頭ではできない。また、転入届、転居届、世帯変更届は、オンライン申請はできず、窓口での届出が必要です。

世帯主が届出を行う場合

世帯主は、世帯員に代わって、転入届・転居届・転出届・世帯変更届をすることができます(26条1項)。

そして、世帯員が転入届・転居届・転出届・世帯変更届をすることができないときは、世帯主が世帯員に代わって、その届出をしなければなりません(26条2項)。これは世帯主の義務です。

住民票コード

住民票コードは、住民基本台帳に記録されている全ての方に対して付与される無作為に抽出した11桁の数字です。

住民票コードとマイナンバーの違い

住民票コードは、マイナンバー(個人番号)の作成の基礎となった番号です。基礎になっている(関連づいてる)だけで、同じではありません。マイナンバー(個人番号)は、住民票を有する全ての方に付与される住民票コードを変換して作られた12桁の数字です。

住民票コードの指定

地方公共団体情報システム機構は、市町村長ごとに、当該市町村長が住民票に記載することのできる住民票コードを指定し、これを当該市町村長に通知します(30条の2第1項)。つまり、住民票コードを指定するのは地方公共団体情報システム機構です。

住民票コードの記載の変更請求

住民基本台帳に記録されている者は、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長に対し、その者に係る住民票に記載されている住民票コードの記載の変更を請求することができます(30条4第1項)。住民票コード(11桁の数字)は、引越しをしたり、氏名が変わったりしても変わりませんが、申し出をすればその理由を問わず変更することができます

注意点

  1. 希望の番号を指定することはできません。
  2. 変更後に元の番号に戻すことはできません。
  3. 住民票コードを変更すると住民基本台帳カードは失効します。

住民票コードの告知要求制限

  1. 市町村長は、この法律の規定による事務の遂行のため必要がある場合を除き、何人に対しても、当該市町村の住民以外の者に係る住民票に記載された住民票コードを告知することを求めてはいけません(30条の37第1項)。
  2. 都道府県知事は、この法律の規定による事務の遂行のため必要がある場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る住民票に記載された住民票コードを告知することを求めてはいけません(30条の37第2項)。
  3. 機構は、本人確認情報処理事務の遂行のため必要がある場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る住民票に記載された住民票コードを告知することを求めてはいけません(30条の37第3項)。
  4. 総務省は、その処理する事務であってこの法律の定めるところにより当該事務の処理に関し住民票コードの提供を求めることができることとされているものの遂行のため必要がある場合を除き、何人に対しても、その者又はその者以外の者に係る住民票に記載された住民票コードを告知することを求めてはいけません(30条の37第4項)。

注意点

  • 市長村長は、市町村の住民に対してであれば、事務の遂行のため必要がなくとも、住民票コードを告知するよう求めてもよい(30条の37第1項)。
  • 知事や機構、総務大臣については、原則、本人に対しても、住民票コードを告知するよう求めてはいけません(30条の37第2項3項4項)。

住民票コードの告知制限・利用制限

  1. 市町村長、都道府県知事、機構又は総務省(「市町村長等」という。)以外の者は、何人も、自己と同一の世帯に属する者以外の者(「第三者」という。)に対し、当該第三者又は当該第三者以外の者に係る住民票に記載された住民票コードを告知することを求めてはいけません(30条の38第1項)。
    【具体例】 例えば、あなたが、知り合いに対して、住民票コードを教えてください!と求めてはいけないということです。
  2. 市町村長等以外の者は、何人も、その者が業として行う行為に関し、その者に対し売買、貸借、雇用その他の契約(「契約」という。)の申込みをしようとする第三者若しくは申込みをする第三者又はその者と契約の締結をした第三者に対し、当該第三者又は当該第三者以外の者に係る住民票に記載された住民票コードを告知することを求めてはいけません(30条の38第2項)。
    【具体例】 例えば、宅建業者が、不動産の売買契約締結の際に、売主や買主に対して住民票コードを教えてください!と求めてはいけないということです。
  3. 市町村長等以外の者は、何人も、業として、住民票コードの記録されたデータベース(第三者に係る住民票に記載された住民票コードを含む当該第三者に関する情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)であって、当該データベースに記録された情報が他に提供されることが予定されているものを構成してはなりません(30条の38第3項)。
    【具体例】 例えば、宅建業者が、売主や買主から住民票をもらい、そこに記載されていた住民票コードを含む情報を、他人に提供する予定で、データベース化することは禁止ということです。

住民票コードの制限に違反した場合の勧告・命令・罰則

都道府県知事は、30条の38第2項又は3項の規定に違反する行為が行われた場合において、当該行為をした者が更に反復してこれらの規定に違反する行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、当該行為を中止することを勧告し、又は当該行為が中止されることを確保するために必要な措置を講ずることを勧告することができます(30条の38第4項)。

都道府県知事は、上記勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、都道府県の審議会の意見を聴いて、その者に対し、期限を定めて、当該勧告に従うべきことを命ずることができます(30条の38第5項)。

そして、上記命令に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(43条1号)。

自己の本人確認情報の開示

本人確認情報とは、「基本4情報(氏名・住所・生年月日・性別)」、「個人番号」、「住民票コード」と「付随情報(氏名・住所・生年月日・性別・個人番号・住民票コードについての変更年月日、理由などの必要最低限の関連情報)」を指します。

そして、何人も、都道府県知事又は機構に対し、磁気ディスクに記録されている自己に係る本人確認情報について、書面により、その開示(自己に係る本人確認情報が存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を請求することができます(30条の32第1項)。

また、開示請求を受けた都道府県知事又は機構は、開示請求者に対し、書面により、当該開示請求に係る本人確認情報について開示をしなければなりません。ただし、開示請求者の同意があるときは、書面以外の方法により開示をすることも可能です(30条の32第2項)。

注意点

自己の本人確認情報の開示請求は、口頭ではできない。

開示の期限

上記都道府県知事又は機構による開示は、開示請求を受理した日から起算して30日以内にしなければなりません(30条の33第1項)。

都道府県知事又は機構は、事務処理上の困難その他正当な理由により30日以内に開示をすることができないときは、当該期間内に、開示請求者に対し、同項の期間内に開示をすることができない理由及び開示の期限を書面により通知しなければなりません(30条の33第2項)。

注意点

本人確認情報の開示の起算日は、開示請求に係る書面が「事務所に到達した日」ではない。

自己の本人確認情報の訂正

都道府県知事又は機構は、開示を受けた者から、書面により、開示に係る本人確認情報についてその内容の全部又は一部の訂正、追加又は削除の申出があったときは、遅滞なく調査を行い、その結果を当該申出をした者に対し、書面で通知するものとする(30条の35)。

注意点

本人確認情報の訂正の申出は、口頭では行えない。