令和6年度(2024年度)過去問

令和6年・2024|問14|行政不服審査法

行政不服審査法における審査請求に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 審査請求は、審査請求人本人がこれをしなければならず、代理人によってすることはできない。
  2. 審査請求人以外の利害関係人は、審査請求に参加することは許されないが、書面によって意見の提出をすることができる。
  3. 多数人が共同して審査請求をしようとする場合、1人の総代を選ばなければならない。
  4. 審査請求人本人が死亡した場合、当該審査請求人の地位は消滅することから、当該審査請求の目的である処分に係る権利が承継されるか否かにかかわらず、当該審査請求は当然に終了する。
  5. 法人でない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあるものは、当該社団または財団の名で審査請求をすることができる。

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【答え】:5
【解説】
1.審査請求は、審査請求人本人がこれをしなければならず、代理人によってすることはできない。

1・・・妥当でない

審査請求は、審査請求人本人だけでなく、代理人によって行うことも可能です。行政不服審査法第12条第1項において、代理人は審査請求人のために審査請求に関する一切の行為をすることができるとされています。

ただし、審査請求の取下げについては、本人の意思確認が重要であるため、特別の委任がある場合に限り、代理人が行うことができます(同条第2項)。

よって、「代理人によってすることはできない」という記述は誤りです。

2.審査請求人以外の利害関係人は、審査請求に参加することは許されないが、書面によって意見の提出をすることができる。

2・・・妥当でない

この選択肢は、「審査請求人以外の利害関係人は、審査請求に参加することは許されない」という点で誤りです。

行政不服審査法第13条において、利害関係人審査請求人以外の者で、処分や不作為について法令上の利害関係を有する者)は、審理員の許可を得て、審査請求に「参加」することが認められています。

これは、審査請求の結果により直接影響を受ける可能性がある利害関係人に対して、主張・立証の機会を保障し、公正かつ適正な審理手続を確保することを目的とした制度です。

また、参加まではしない場合でも、利害関係人が書面で意見を提出することも可能です(同条第4項)。

したがって、「参加することは許されない」という記述は妥当ではありません。

3.多数人が共同して審査請求をしようとする場合、1人の総代を選ばなければならない。

3・・・妥当でない

この選択肢の誤りは、「1人の総代を選ばなければならない」という部分にあります。

行政不服審査法第11条第1項では、多数人が共同して審査請求をする場合には、3人を超えない範囲で総代を互選することができると定められています。

つまり、

  • 総代を選任することは義務ではなく任意であり、
  • 総代の人数も1人に限らず、最大で3人まで可能です。

したがって、「1人の総代を選ばなければならない」という記述は、制度の趣旨と条文に反する不適切な内容です。

4.審査請求人本人が死亡した場合、当該審査請求人の地位は消滅することから、当該審査請求の目的である処分に係る権利が承継されるか否かにかかわらず、当該審査請求は当然に終了する。

4・・・妥当でない

この選択肢の誤りは、「審査請求は当然に終了する」という点にあります。

行政不服審査法第15条第1項によると、審査請求人が死亡した場合でも、当該審査請求の目的である処分に係る権利が法令により承継される場合には、承継した者が審査請求人の地位を引き継ぐことができます。

したがって、処分に係る権利の承継が認められる限り、審査請求は当然に終了するわけではなく、承継人が手続を継続できるというのが正しい理解です。

たとえば、国家公務員共済組合法第44条では、支払未済の共済給付について、受給者の死亡後にその配偶者や子など一定の親族が給付を受けられると定めており、そのようなケースでは、これらの者が審査請求人の地位を承継して審査請求を続けることが可能です。

したがって、この選択肢は不適切(妥当でない)といえます。

5.法人でない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあるものは、当該社団または財団の名で審査請求をすることができる。

5・・・妥当である

行政不服審査法第10条は、法人でない社団または財団であっても、代表者または管理人の定めがあるものについては、その名で審査請求をすることができると定めています。

これは、いわゆる「権利能力なき社団または財団」に審査請求の当事者能力が認められるということです。たとえ法人格を持たない団体であっても、社会的に一定の活動を行い、実質的に独立した団体として存在している以上、行政処分の対象になり得ることがあります。

そのため、実務上の必要性から、こうした団体にも審査請求を行う資格(当事者能力)が認められているのです。

したがって、この選択肢は正しい(妥当である)といえます。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問13|行政手続法

審査基準と処分基準に関する次の記述のうち、行政手続法に照らし、妥当なものはどれか。

  1. 審査基準を公にすることによって行政上特別の支障が生じる場合、行政庁が当該審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。
  2. 処分基準は、不利益処分を行うに際して、その名あて人からの求めに応じ、当該名あて人に対してこれを示せば足りるものとされている。
  3. 行政庁が審査基準を作成し、それを公にすることは努力義務にすぎないことから、行政庁が審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。
  4. 審査基準を公にする方法としては、法令により申請の提出先とされている機関の事務所において備え付けることのみが認められており、その他の方法は許容されていない。
  5. 行政庁が処分基準を定めることは努力義務に過ぎないが、処分基準を定めた場合には、これを公にする法的義務を負う。

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【答え】:1
【解説】
1.審査基準を公にすることによって行政上特別の支障が生じる場合、行政庁が当該審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。

1・・・妥当である

行政手続法第5条第3項では、行政庁は審査基準を「公にしておかなければならない」と定めていますが、その義務には例外が設けられています。それは、「行政上特別の支障があるとき」です。

この「行政上特別の支障があるとき」とは、審査基準を公開することで、例えば不正防止の観点から支障が出るような場合などが想定されています。したがって、こうした特別の事情がある場合には、審査基準を公にしなかったとしても違法とは評価されません。

よって、本肢の記述は妥当です。

2.処分基準は、不利益処分を行うに際して、その名あて人からの求めに応じ、当該名あて人に対してこれを示せば足りるものとされている。

2・・・妥当でない

行政手続法第12条第1項では、行政庁は処分基準を定めるよう努めなければならず、またこれを公にしておくよう努めなければならないとされています。

この規定は、行政運営の透明性や公平性を確保するためのものです。つまり、処分基準は、単に処分の名あて人に対して求めがあった場合にだけ示せばよいという考え方ではなく、原則としてあらかじめ公にしておくことが求められているのです。

また、第12条第2項では、処分基準を定める際には、その不利益処分の性質に照らして、できる限り具体的なものとしなければならないとされています。

したがって、本肢のように「名あて人からの求めに応じて示せば足りる」というのは、法の趣旨に反しており、妥当でないといえます。

3.行政庁が審査基準を作成し、それを公にすることは努力義務にすぎないことから、行政庁が審査基準を公にしなかったとしても違法とはならない。

3・・・妥当でない

行政手続法第5条において、審査基準の作成および公表は法的義務とされています。

  • 第5条第1項:行政庁は審査基準を定めなければならない(義務)。
  • 第5条第2項:審査基準は、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとする。
  • 第5条第3項:行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を法令で定められた申請先の事務所等で公にしておかなければならない(義務)。

つまり、審査基準の公表は「努力義務」ではなく、「義務」です。例外として、行政上特別の支障があるときのみ、公表しなくても許されます。

一方、処分基準については、行政手続法第12条により「定め、公にしておくよう努めなければならない」とされており、こちらは努力義務です。

したがって、本肢のように「審査基準の公表は努力義務」とするのは処分基準との混同による誤りであり、妥当ではないといえます。

4.審査基準を公にする方法としては、法令により申請の提出先とされている機関の事務所において備え付けることのみが認められており、その他の方法は許容されていない。

4・・・妥当でない

行政手続法第5条第3項では、審査基準の公表方法について、以下のように定められています。

行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により、審査基準を公にしておかなければならない。

つまり、「事務所での備付け」だけではなく、それに加えて「その他の適当な方法」も認められているのです。

この「その他の適当な方法」には、たとえば行政庁の公式ウェブサイトでの公開などが含まれ、実務上も一般的な手段とされています。

したがって、本肢のように「事務所における備付けのみが認められている」とするのは誤りであり、妥当でないです。

5.行政庁が処分基準を定めることは努力義務に過ぎないが、処分基準を定めた場合には、これを公にする法的義務を負う。

5・・・妥当でない

行政手続法第12条第1項では、処分基準について以下のように定めています:

行政庁は、不利益処分に関する処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。

つまり、

  • 処分基準を定めることも、
  • 処分基準を公にすることも、

いずれも努力義務です。

したがって、本肢のように「定めることは努力義務だが、定めた場合には公にする法的義務が生じる」とするのは誤りです。

なお、「定めた場合に公にする法的義務がある」という扱いになるのは、たとえば行政手続法第6条に定められている標準処理期間についてであり、処分基準のケースとは異なります。

よって、本肢は妥当でないといえます。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問12|行政手続法

行政指導についての行政手続法の規定に関する次のア~エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項等、行政手続法が定める事項を示さなければならない。

イ.地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律で定められている場合に限り、行政指導に関する行政手続法の規定が適用される。

ウ.法令に違反する行為の是正を求める行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものを受けた相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思科するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。

エ.意見公募手続の対象である命令等には、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・ウ
  4. イ・エ
  5. ウ・エ

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【答え】:2

【解説】
ア.行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項等、行政手続法が定める事項を示さなければならない。

ア・・・妥当である

行政指導とは、行政機関が特定の者に対して、法律上の義務ではないけれども、一定の作為(やること)や不作為(やらないこと)を求める行為のことです。これは「処分」ではなく、任意の協力を求める形式になります(行政手続法2条6号)。

そして、行政指導が行われる場合、相手方に対して次のような情報をきちんと伝える義務があります。

誰がその行政指導の責任者であるか(行政手続法35条1項)

②さらに、行政指導の場面で、行政機関が「許可しないこともあるよ」などと、自らの権限をちらつかせるような場合(=許認可等を行使し得る旨を示すとき)は、ただ漠然とそう言うのではなく、「何という法律の、どの条文に基づいてその権限があるのか」という根拠を相手にきちんと示さなければなりません。(行政手続法35条2項)

つまり、「言うことを聞かないと許可しないかもよ?」というような態度を取る場合には、法的な裏付けを明確にする必要があるということです。

行政手続法35条(行政指導の方式)

1項 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。

2項 行政指導に携わる者は、当該行政指導をする際に、行政機関が許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使し得る旨を示すときは、その相手方に対して、次に掲げる事項を示さなければならない。

一 当該権限を行使し得る根拠となる法令の条項
二 前号の条項に規定する要件
三 当該権限の行使が前号の要件に適合する理由

イ.地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる規定が法律で定められている場合に限り、行政指導に関する行政手続法の規定が適用される。

イ・・・妥当でない

結論からいうと、本肢は「法律で定められている場合に限り適用される」と述べていますが、行政指導については、法律に根拠があっても、地方公共団体の機関が行う場合は行政手続法の規定が適用されません。

よって、本肢は、誤り(妥当でない) です。

行政手続法は、行政の公正さ・透明性の確保を目的とし、国の行政機関を主な対象としていますが、地方公共団体の機関にも一部適用される場合があります。ただし、すべての行為に適用されるわけではありません。

行政手続法第3条第3項では、以下の場合、行政手続法(第2章~第6章)は適用されない、としています。

  • 地方公共団体の機関による行政指導や命令等の制定行為
    法律に基づいていても、条例または規則に基づいていても適用されない
  • 地方公共団体の機関による処分や届出
    → その根拠が「条例または規則」である場合に限り、適用されない
    → 逆に、根拠が法律にある場合は適用される
ウ.法令に違反する行為の是正を求める行政指導で、その根拠となる規定が法律に置かれているものを受けた相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思科するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。

ウ・・・妥当である

行政手続法36条の2(行政指導の中止等の求め)

法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。

上記を整理すると下表の通りです。
本肢は、この内容を説明しているため、妥当である(正しい)です。

要件の区分 内容
対象となる行政指導 法令違反の是正を目的とする行政指導
根拠法令 その行政指導の根拠が「法律」に置かれていること
求めることができる人 行政指導を受けた相手方(※第三者は含まれない)
求めの内容 「中止」や「その他必要な措置」の申し出が可能
エ.意見公募手続の対象である命令等には、審査基準や処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準は含まれるが、行政指導に関する指針は含まれない。

エ・・・妥当でない

結論から言うと、意見公募手続の対象である命令等には、審査基準処分基準など、処分をするかどうかを判断するための基準だけでなく、行政指導に関する指針も含まれるので誤り(妥当ではない)です。

行政手続法2条8号における「命令等」とは、以下のようなものを指します。

  1. 命令・規則: 各省庁が法律に基づいて定める命令や規則
  2. 審査基準: 許認可などの審査をする際の判断基準
  3. 処分基準: 行政処分(例:営業停止など)を行う際の基準
  4. 行政指導指針: 行政指導を行う際の方針やルール(これも「命令等」に含まれる)

意見公募手続(いわゆるパブリックコメント制度)は、「命令等」を定めようとする場合に、あらかじめ案を公表し、広く国民から意見を募る制度です。

つまり、行政が審査基準・処分基準・行政指導指針などを定めるときも、原則として意見公募手続を行わなければならないということになります。

 


令和6年(2024年)過去問

問1 基礎法学 問31 民法
問2 基礎法学 問32 民法
問3 憲法 問33 民法
問4 憲法 問34 民法
問5 憲法 問35 民法
問6 憲法 問36 商法
問7 憲法 問37 会社法
問8 行政法 問38 会社法
問9 行政法 問39 会社法
問10 行政法 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 多肢選択
問12 行政手続法 問42 多肢選択
問13 行政手続法 問43 多肢選択
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
問20 国家賠償法 問50 基礎知識
問21 国家賠償法 問51 基礎知識
問22 地方自治法 問52 行政書士法
問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
問24 地方自治法 問54 基礎知識
問25 行政法 問55 基礎知識
問26 公文書管理法 問56 基礎知識
問27 民法 問57 個人情報保護法
問28 民法 問58 著作権の関係上省略
問29 民法 問59 著作権の関係上省略
問30 民法 問60 著作権の関係上省略

令和6年・2024|問11|行政手続法

会社Xは、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という)に基づく免許を受けて不動産取引業を営んでいる。ところが、Xの代表取締役であるAが交通事故を起こして、歩行者に重傷を負わせてしまった。その後、自動車運転過失傷害の罪でAは逮捕され、刑事裁判の結果、懲役1年、執行猶予4年の刑を受けて、判決は確定した。宅建業法の定めによれば、法人の役員が「禁錮以上の刑」に処せられた場合、その法人の免許は取り消されるものとされていることから、知事YはXの免許を取り消した(以下「本件処分」という)。 この事例への行政手続法の適用に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

(参考条文)

宅地建物取引業法

(免許の基準) 第5条① 国土交通大臣または都道府県知事は、第3条第1項の免許を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合または免許申請書もしくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、もしくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、免許をしてはならない。

一~四 略

五 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

六 以下略

② 以下略

(免許の取消し) 第66条① 国土交通大臣または都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。

一 第5条第1項第1号、第5号から第7号まで、第10号または第14号のいずれかに該当するに至ったとき。

二 略

三 法人である場合において、その役員または政令で定める使用人のうちに第5条第1項第1号から第7号までまたは第10号のいずれかに該当する者があるに至ったとき。

四 以下略

② 以下略

  1. 本件処分は、許認可等の効力を失わせる処分であるが、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものであるから、行政手続法のいう「不利益処分」にはあたらない。
  2. 本件処分は、刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官または司法警察職員がする処分を契機とするものであるので、行政手続法の規定は適用されない。
  3. 本件処分は、その根拠となる規定が法律に置かれているが、地方公共団体の機関がする処分であることから、行政手続法の規定は適用されない。
  4. 本件処分は、申請に対する処分を取り消すものであるので、本件処分をするに際して、行政庁は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的な審査基準を定めなければならない。
  5. 本件処分は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている処分であり、その喪失の事実が客観的な資料により直接証明されるものであるので、行政庁は聴聞の手続をとる必要はない。

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【答え】:5

【解説】
1.本件処分は、許認可等の効力を失わせる処分であるが、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものであるから、行政手続法のいう「不利益処分」にはあたらない。

1・・・妥当でない

本件は、宅建業者である会社Xの代表取締役Aが「懲役1年・執行猶予4年」という禁錮以上の刑を受けたことで、X社の免許が取り消されたという事例です。この処分が、行政手続法における「不利益処分」に該当するかが問われています。

結論からいうと、この処分(免許取消し)は、「不利益処分」に該当するので、記述は妥当ではありません。

行政手続法第2条第4号では、「不利益処分」とは、許認可の取消しや停止など、相手方に不利益となる行政処分をいいます。

本件で行われた免許取消しは、法人の業務に重大な影響を与えるものなので、まさにこの「不利益処分」にあたります。

問題文では、「この処分は、事実が消滅した旨の届出に対する応答としてなされるものだから、不利益処分ではない」としていますが、これは誤りです。

行政手続法2条4号ただし書きニで規定されている「届出に対する応答」とは、たとえば「営業廃止届」など、事業者自らの意思による廃止を届け出た場合に行政庁が形式的に応じるものです。

今回のように、刑罰を受けたことによって当然に免許取消しの要件に該当することになったというのは、「届出に対する応答」ではなく、行政庁が主体的に判断して行う処分です。

したがって、この処分は不利益処分に該当し、処分の理由の提示などの行政手続法上の手続が必要です。

行政手続法2条4号ただし書きニ
許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるものは、不利益処分に該当しない
2.本件処分は、刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官または司法警察職員がする処分を契機とするものであるので、行政手続法の規定は適用されない。

2・・・妥当でない

本件は、会社Xの代表取締役Aが「懲役1年・執行猶予4年」の有罪判決を受けたことにより、会社Xが宅建業法第66条第1項第1号・第3号に該当し、免許取消処分を受けたケースです。

このような免許取消処分は、あくまで知事(行政庁)による行政処分であり、行政手続法の定める「不利益処分」にあたります。

選択肢では、「刑事事件に関する法令に基づいて検察官等がする処分を契機とするものなので、行政手続法は適用されない」とありますが、これは誤りです。

確かに行政手続法第3条第1項第5号では、「刑事事件に関する法令に基づき、検察官や警察官などがする処分」には行政手続法が適用されないとされています。しかし、本件の処分を行ったのは検察官や警察官ではなく、「宅建業法に基づく免許権者(都道府県知事)」です。よって、この規定は当てはまりません。

したがって、本件処分には行政手続法の規定が適用されます。

行政手続法第3条第1項第5号(適用除外):
刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない。
3.本件処分は、その根拠となる規定が法律に置かれているが、地方公共団体の機関がする処分であることから、行政手続法の規定は適用されない。

3・・・妥当でない

本件のように、都道府県知事が行う免許の取消しは、確かに地方公共団体の機関が行う「処分」にあたります。しかし、ここで重要なのは、その処分の根拠が「どの法令に基づいているか」です。

行政手続法第3条第3項では、次のように定められています。

地方公共団体の機関がする処分、行政指導及び届出については、その根拠が条例または規則にある場合は、行政手続法は適用されない

つまり、行政手続法の適用が除外されるのは、条例や規則に基づく処分などの場合です。

ところが、本件の免許取消処分は、宅地建物取引業法という国の法律(法第5条・第66条)に基づいています。よって、行政手続法の適用除外には当たりません。

したがって、本件処分には行政手続法が適用されるため、記述は妥当ではありません。

4.本件処分は、申請に対する処分を取り消すものであるので、本件処分をするに際して、行政庁は許認可等の性質に照らしてできる限り具体的な審査基準を定めなければならない。

4・・・妥当でない

本件は、宅地建物取引業者である会社Xの免許が取り消されたという事案です。これは、許認可を与える処分(申請に対する処分)ではなく、すでに与えた免許を取り消す処分です。このように、行政庁が国民に対して何らかの不利益を与える処分は、「不利益処分」と呼ばれます。

不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準を「処分基準」といいます。

審査基準」は、申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準です。そのため、本肢は妥当ではないです。

関連ポイントも重要なので、個別指導で解説します。

5.本件処分は、法令上必要とされる資格が失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている処分であり、その喪失の事実が客観的な資料により直接証明されるものであるので、行政庁は聴聞の手続をとる必要はない。

5・・・妥当である

行政手続法では、原則として重大な不利益処分(例:免許の取消し)をする際には、名あて人に言い分を述べる機会(=聴聞)を与える必要があります(行政手続法13条1項1号)。
しかし、以下のような例外があります。

行政手続法13条2項2号:

以下の要件を満たす場合、聴聞は不要になります。

  1. 法令上、必ず行わなければならない不利益処分であること
    → 今回のように、宅建業法66条により免許を「取り消さなければならない」とされているケースが該当します。
  2. 資格喪失の事実が客観的資料によって証明されていること
    → 今回は「裁判で有罪判決を受けた」という事実が、判決文などの客観的資料で確認できます。

    本肢に適用

    • Aが「禁錮以上の刑(懲役1年)」に処せられた。
    • その結果、会社Xの免許は法律上、必ず取り消さなければならない。
    • その事実(Aが有罪になったこと)は裁判の判決で証明されている。

    よって、行政手続法13条2項2号に該当し、「聴聞は不要」となります。

     


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問9|行政立法

    行政立法に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

    1. 行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。
    2. 法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。
    3. 法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。
    4. 通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。
    5. 行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。

    >解答と解説はこちら


    【答え】:2
    【解説】
    1.行政手続法が定める意見公募手続の対象となるのは、法規命令のみであり、行政規則はその対象とはされていない。

    1・・・妥当でない

    行政手続法における意見公募手続の対象は、法規命令に限られず、行政規則等も含まれるので、本肢は誤りです。

    意見公募手続とは?
    行政手続法39条に定められた手続で、行政庁が「命令等」を定めようとする場合に、その案をあらかじめ公示して、国民や事業者などの意見を広く募る制度です。
    いわゆるパブリックコメント制度とも呼ばれています。

    「命令等」とは何か?
    行政手続法2条8号では、「命令等」を以下のように定義しています。

    法律に基づく命令、規則、審査基準、処分基準、行政指導指針その他これらに類するもの

    つまり、

    • 法規命令(政令、省令など)
    • 行政規則(訓令・通達など)
    • 審査基準、処分基準、行政指導指針

    など、かなり幅広いものが「命令等」に含まれます。

    したがって、意見公募手続の対象は「法規命令だけ」ではなく、「行政規則」等も含まれるので、「法規命令のみが対象で、行政規則は対象外」とする本肢の記述は誤りです。

    2.法律の規定を実施するために政令を定めるのは内閣の事務であるが、その法律による委任がある場合には、政令に罰則を設けることもできる。

    2・・・妥当である

    原則として、罰則は国民の権利・自由を制限するものであるため、法律で定める必要があります(法律主義の原則)。
    ただし、憲法73条6号ただし書きにより、次のようにされています:
    政令には特にその法律の委任がある場合でなければ、罰則を設けることができない。」
    つまり、法律に明確な委任がある場合に限り、政令で罰則を設けることが可能となります。よって、本肢は妥当です。

    本肢は周辺知識も頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

    3.法律による委任の範囲を逸脱して定められた委任命令は違法となるが、権限を有する機関が取り消すまでは有効なものとして取り扱われる。

    3・・・妥当でない

    法律の委任の範囲を超えて命令を定めた場合、その命令は無効です。言い換えると、法令の委任に基づく命令であっても、委任の趣旨や内容、範囲を逸脱している場合には、最初から効力がない(=無効)ということです。よって「違法だが、取り消されるまでは有効」とする本肢の記述は誤りです。

    判例による裏付け

    📌 最判平成3年7月9日

    • 監獄法施行規則が、未決拘禁者と14歳未満の者との接見を一律に禁止。
    • これは、監獄法の委任の範囲を逸脱しており、無効と判断。

    📌 最判平成14年1月31日

    • 児童扶養手当法施行令が、父から認知された子を対象外にする規定を追加。

    本肢も関連ポイントがあるので、個別指導で解説します。

    4.通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合には、当該通達に対して取消訴訟を提起することができる。

    4・・・妥当でない

    通達は一般に行政機関の内部的な指示に過ぎず、通常は行政処分には当たらないため、原則として取消訴訟の対象にはならないです。よって、本肢は誤りです。

    判例:最判昭和43年12月24日

    この判例は、通達が取消訴訟の対象になるかについて判断したもので、次のように述べています。

    「通達は、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対して、その職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものである。
    このような通達は関係下級行政機関および職員に対する行政組織内部の命令にすぎず、一般国民はこれに拘束されない。」

    さらに、

    「通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するものであって、国民の権利義務に重大な関わりを持つものであっても、
    それ自体が直接国民に対して法律上の効果を生じさせるものではない限り、取消訴訟の対象にはならない」

    としています。

    本肢は基本事項を頭に入れておく必要があるので、個別指導で解説します。

    5.行政手続法が適用される不利益処分の処分基準において、過去に処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定が加重される旨の定めがある場合には、当該処分基準の定めに反する後行の処分は当然に無効となる。

    5・・・妥当でない

    処分基準に反するからといって、直ちにその処分が「当然に無効」となるわけではありません。よって、本肢は妥当ではないです。

    行政庁が処分基準に反する処分をしたとしても、それは自動的に「無効」となるわけではありません。
    このような場合、行政事件訴訟法30条に基づき、裁量権の逸脱または濫用があったかどうかが問われます
    つまり、「無効」ではなく、「違法(取消しうる)」かどうかが問題となるのです。

    行政事件訴訟法30条
    行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

    重要判例:最判平成27年3月3日

    この判例では、次のように判示されました。

    「処分基準に反する取扱いをする場合、裁量権の行使における公正・平等の原則や、基準の内容に対する相手方の信頼保護の観点から、特段の事情がなければ裁量権の逸脱・濫用にあたる。」

    つまり、処分基準に反する処分は「当然に無効」なのではなく、特段の事情なく基準から逸脱すれば、裁量権の逸脱として違法となり得るということで、その場合には、取消訴訟で争う余地があると整理されています。

     


    令和6年(2024年)過去問

    問1 基礎法学 問31 民法
    問2 基礎法学 問32 民法
    問3 憲法 問33 民法
    問4 憲法 問34 民法
    問5 憲法 問35 民法
    問6 憲法 問36 商法
    問7 憲法 問37 会社法
    問8 行政法 問38 会社法
    問9 行政法 問39 会社法
    問10 行政法 問40 会社法
    問11 行政手続法 問41 多肢選択
    問12 行政手続法 問42 多肢選択
    問13 行政手続法 問43 多肢選択
    問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
    問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
    問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
    問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
    問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
    問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
    問20 国家賠償法 問50 基礎知識
    問21 国家賠償法 問51 基礎知識
    問22 地方自治法 問52 行政書士法
    問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
    問24 地方自治法 問54 基礎知識
    問25 行政法 問55 基礎知識
    問26 公文書管理法 問56 基礎知識
    問27 民法 問57 個人情報保護法
    問28 民法 問58 著作権の関係上省略
    問29 民法 問59 著作権の関係上省略
    問30 民法 問60 著作権の関係上省略

    令和6年・2024|問10|行政法

    行政法における一般原則に関する最高裁判所の判例について説明する次の記述のうち、妥当なものはどれか。 (注) * 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律

    1. 特定の事業者の個室付浴場営業を阻止する目的で町が行った児童福祉法に基づく児童福祉施設の認可申請に対し、県知事が行った認可処分は、仮にそれが営業の阻止を主たる目的としてなされたものであったとしても、当該処分の根拠法令たる児童福祉法所定の要件を満たすものであれば、当該認可処分を違法ということはできないから、当該個室付浴場営業は当然に違法となる。
    2. 特定の事業者の廃棄物処理施設設置計画を知った上で定められた町の水道水源保護条例に基づき、当該事業者に対して規制対象事業場を認定する処分を行うに際しては、町は、事業者の立場を踏まえて十分な協議を尽くす等、その地位を不当に害することのないよう配慮すべきであるが、このような配慮要請は明文上の義務ではない以上、認定処分の違法の理由とはならない。
    3. 法の一般原則である信義則の法理は、行政法関係においても一般に適用されるものであるとはいえ、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用により当該課税処分を違法なものとして取り消すことは、争われた事案の個別の状況や特段の事情の有無にかかわらず、租税法律主義に反するものとして認められない。
    4. 地方公共団体が将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、当該施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることは当然であるが、当該地方公共団体の勧告ないし勧誘に動機付けられて施策の継続を前提とした活動に入った者が社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合において、地方公共団体が当該損害を補償するなどの措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法となる。
    5. 国の通達に基づいて、地方公共団体が被爆者援護法 * 等に基づく健康管理手当の支給を打ち切った後、当該通達が法律の解釈を誤ったものであるとして廃止された場合であっても、行政機関は通達に従い法律を執行する義務があることからすれば、廃止前の通達に基づいて打ち切られていた手当の支払いを求める訴訟において、地方公共団体が消滅時効を主張することは信義則に反しない。

    >解答と解説はこちら


    【答え】:4
    【解説】
    1.特定の事業者の個室付浴場営業を阻止する目的で町が行った児童福祉法に基づく児童福祉施設の認可申請に対し、県知事が行った認可処分は、仮にそれが営業の阻止を主たる目的としてなされたものであったとしても、当該処分の根拠法令たる児童福祉法所定の要件を満たすものであれば、当該認可処分を違法ということはできないから、当該個室付浴場営業は当然に違法となる。

    1・・・妥当でない

    本肢は、行政処分の「目的」を問題とするものです。

    確かに、県知事が児童福祉法に基づく認可処分を行う際、その処分が法令の形式的要件を満たしているかどうかは重要です。しかし、それが実質的には他人の営業活動を妨害することを目的としてなされたのであれば、行政権限の濫用として、その処分は違法となります。

    これは、最判昭和53年6月16日(いわゆる余目町個室付浴場事件)が典型です。この判例では、町が風俗営業を排除する目的で児童遊園の設置を県に申請し、県がそれを認可しましたが、その設置目的が風俗営業の排除にあり、児童の健全育成を真に目的としたものではなかったため、当該認可処分は違法とされました。

    このように、行政処分においては形式的な要件だけでなく、目的の適法性(動機の正当性)も問われます。民法1条3項の「権利の濫用は、これを許さない」という原則は、行政法にも類推適用されると考えられています。

    したがって、本肢の「営業の阻止を主たる目的としてなされたものであっても、要件を満たせば違法ではない」「よって浴場営業は当然に違法となる」という記述は、行政権限の濫用に対する理解を欠いており誤り(妥当でない)です。

    2.特定の事業者の廃棄物処理施設設置計画を知った上で定められた町の水道水源保護条例に基づき、当該事業者に対して規制対象事業場を認定する処分を行うに際しては、町は、事業者の立場を踏まえて十分な協議を尽くす等、その地位を不当に害することのないよう配慮すべきであるが、このような配慮要請は明文上の義務ではない以上、認定処分の違法の理由とはならない。

    2・・・妥当でない

    本肢は、条例に基づく認定処分における「手続的配慮義務」の有無と、その違反が処分の違法性に影響を及ぼすかどうかが問われています。

    この点について判断を示したのが、最判平成16年12月24日(いわゆる紀伊長島町水道水源保護条例事件)です。

    この判決では、以下のような事情を重視しています。

    • 町は条例制定の時点で、当該事業者が産業廃棄物処理施設の設置を計画し、既に許可申請手続きを進めていたことを知っていた。
    • 水源の保護と施設の設置という公益間の調整を図る機会が、町にはあった。
    • にもかかわらず、町は条例に基づく認定処分を行う際に、事業者との十分な協議を行わず、その立場に配慮する措置も取らなかった。

    判例は、上記のような事情の下では、町はたとえ明文の規定がなくとも
    上告人と十分な協議を尽くし、地下水使用量の限定を促すなど適切な指導を行い、その地位を不当に害することのないよう配慮すべき義務がある
    としました。
    そして、そのような義務に違反して処分が行われた場合には、
    当該処分は違法である」
    と明確に述べています。

    つまり、たとえ条例に明文で配慮義務が規定されていなくても、具体的状況に照らして、行政には合理的配慮を行う義務が生じうるということです。

    よって、本肢の「配慮要請は明文上の義務ではない以上、処分の違法理由にはならない」という記述は、判例の趣旨に反するものであり、妥当でないと判断されます。

    3.法の一般原則である信義則の法理は、行政法関係においても一般に適用されるものであるとはいえ、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、租税法規に適合する課税処分について信義則の法理の適用により当該課税処分を違法なものとして取り消すことは、争われた事案の個別の状況や特段の事情の有無にかかわらず、租税法律主義に反するものとして認められない。

    3・・・妥当でない

    本肢では、租税法関係における信義則の適用が問題となっています。

    これに関する代表的な判例が、最判昭和62年10月30日です。

    この判決では以下のように述べられています。

    • 信義則(信義誠実の原則)は、法の一般原理として行政法関係にも原則として適用される。
    • ただし、租税法関係においては、憲法84条に基づく「租税法律主義」が厳格に適用されるため、信義則の適用は慎重であるべきとされます。
    • それでも、次のような「特段の事情」がある場合には、信義則の適用により、たとえ課税処分が法令に形式的に適合していたとしても、その違法性が認められる可能性があるとされました。
      「租税法規の適用における納税者間の平等・公平という要請を犠牲にしてもなお、当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存在する場合」

      つまり、信義則がまったく適用されないというわけではなく、あくまで限定的な適用が認められるという立場です。

      本肢では、「争われた事案の個別の状況や特段の事情の有無にかかわらず、信義則の適用は認められない」と述べていますが、これは判例の立場と相反する内容です。

      したがって、本肢は妥当でないと判断されます。

      4.地方公共団体が将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、当該施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることは当然であるが、当該地方公共団体の勧告ないし勧誘に動機付けられて施策の継続を前提とした活動に入った者が社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を被る場合において、地方公共団体が当該損害を補償するなどの措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法となる。

      4・・・妥当である

      この問題は、「行政による施策の変更と信頼保護原則」の関係がテーマです。
      これに関して重要な判例が、最判昭和56年1月27日(いわゆる「宜野座工場誘致事件」)です。

      この事件では、次のような事案が問題となりました。

      • 村(地方公共団体)は、積極的に企業誘致を進め、企業に対して協力や勧誘を行っていた。
      • 企業はこれに基づいて工場建設の準備を進め、相応の投資をした。
      • ところが、選挙で誘致反対派の村長が当選し、村が誘致方針を180度転換し、協力を拒否する方針に切り替えた。

      このような状況において、最高裁は以下のように判断しました。

      • 地方公共団体の施策は、社会情勢の変動等に応じて変更されうることは当然である。
      • しかし、地方公共団体の勧誘等を信頼して企業が重大な投資を行い、看過し得ない損害を被る場合には、地方公共団体はその損失に対して何らかの補償措置を講じることが期待される
      • そのような措置なく一方的に施策を転換した場合、信頼関係を破壊するものであり、違法性を帯び、不法行為責任を問われる可能性があるとされました。

        したがって、本肢の「一定の施策変更がやむを得ない客観的事情によるのでない限り、損害補償等の措置を講じることなく施策を変更することは、信頼関係を不当に破壊し違法となる」という記述は、判例の趣旨と一致しており妥当であるといえます。

        5.国の通達に基づいて、地方公共団体が被爆者援護法 * 等に基づく健康管理手当の支給を打ち切った後、当該通達が法律の解釈を誤ったものであるとして廃止された場合であっても、行政機関は通達に従い法律を執行する義務があることからすれば、廃止前の通達に基づいて打ち切られていた手当の支払いを求める訴訟において、地方公共団体が消滅時効を主張することは信義則に反しない。

        5・・・妥当でない

        この問題は、行政機関が誤った通達に基づいて処分を行った場合に、その後の訴訟において時効を主張できるか(信義則との関係)がテーマです。

        これに関して重要な判例が、「最判平成19年2月6日(在ブラジル被爆者健康管理手当等請求事件)」です。

        事案の概要

        • 被爆者に対して健康管理手当が支給されていた。
        • 被爆者が外国に出国したことを理由に、国の通達に従って手当の支給が打ち切られた。
        • しかし、その通達は法律の解釈を誤ったものであるとして後に廃止された。
        • 被爆者が未支給分の手当の支給を求めて提訴。
        • その際、地方公共団体が「支給請求権は時効により消滅した」と主張。

        判例の判断

        最高裁は、以下のように判断しました。

        地方公共団体が国の誤った通達に従い支給を打ち切ったにもかかわらず、のちに受給者が請求権を行使してきた際に、「時効で消滅した」と主張するのは、「自ら違法な処理をした行政機関が、そのことによって権利行使を困難にさせた結果を根拠に、支払いを拒絶するに等しい」

        として、「信義則に反し、許されない」としました。

        つまり、形式的には時効が成立していたとしても、信義則によって時効の援用が制限されることがあるというわけです。したがって、本肢の「時効の主張は信義則に反しない」とする記述は、判例の示す法理に反しており、妥当でないと判断されます。

         


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略

        令和6年・2024|問8|行政法

        行政行為(処分)に関する次の記述のうち、法令の定めまたは最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

        1. 処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。
        2. 金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。
        3. 処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。
        4. 処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。
        5. 瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。

        >解答と解説はこちら


        【答え】:5
        【解説】
        1.処分に瑕疵があることを理由とする処分の取消しは、行政事件訴訟法上の取消訴訟における判決のほか、行政不服審査法上の不服申立てにおける裁決または決定によってのみすることができる。

        1・・・妥当でない

        本肢の記述は 妥当でありません。

        たしかに、処分に瑕疵がある場合、その取消しを求める方法としては、

        • 行政事件訴訟法による 取消訴訟
        • 行政不服審査法による 不服申立て(審査請求など)

        などの法的手続きを通じて行うのが一般的です。

        しかし、それだけではありません。行政処分には、行政庁が自らの判断で処分を取り消す「職権取消し」という方法も認められています。

        よって、処分の取消しは訴訟や不服申立てだけでなく、職権によっても行うことができるため、本肢の「〜によってのみすることができる」という断定的な表現は誤りです。

        2.金銭納付義務を課す処分の違法を理由として国家賠償請求をするためには、事前に当該処分が取り消されていなければならない。

        2・・・妥当でない

        国家賠償請求の前提として、行政処分が事前に取り消されている必要はないため、本肢は誤りです。

        判例(最判昭和36年4月21日)でも、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ処分の救済または無効確認の判決を得る必要はない。」と言っています。

        この判例は、国家賠償請求と行政処分の取消訴訟とは別個の法的救済手段であり、互いに独立していることを明確にしています。

        3.処分取消訴訟の出訴期間が経過した後に当該処分の無効を争うための訴訟としては、行政事件訴訟法が法定する無効確認の訴えのみが許されている。

        3・・・妥当でない

        無効を争う訴訟手段は、無効確認訴訟だけに限られるわけではありません。以下のように他の訴訟類型でも無効を主張することが可能です。

        • 民事訴訟
          例えば、行政処分に基づいてされた契約が無効であることを理由に損害賠償を請求する場合など、民事訴訟の中で処分の無効を抗弁として主張できます。
        • 当事者訴訟
          処分に基づく法律関係に関する紛争(たとえば公務員の地位確認など)において、処分が無効であることを前提として争うことが可能です。

        よって、本肢は「無効を争う方法が行政事件訴訟法上の無効確認訴訟だけに限られる」としている点が誤りです。

        4.処分Aの違法がこれに後続する処分Bに承継されることが認められる場合であっても、処分Aの取消訴訟の出訴期間が経過している場合には、処分Bの取消訴訟において処分Aの違法を主張することは許されない。

        4・・・妥当でない

        「違法性の承継」が認められる場合には、たとえ先行処分(処分A)の出訴期間が過ぎていたとしても、後行処分(処分B)の取消訴訟において処分Aの違法を主張することが許されるので、本肢は妥当ではありません。

        最判平成21年12月17日(建築確認・安全認定の違法性承継)

        建築確認処分(後行)に対し、その前提となる安全認定処分(先行)が違法であることを争点とした事案です。

        判例は、「建築確認と安全認定は目的が共通し、結合して効果を発揮するものである
        とし、「出訴期間が経過した安全認定の違法を、建築確認の取消訴訟において主張することは許される」としました。

        よって、違法性の承継が認められる場合には、たとえ先行処分(処分A)の出訴期間が過ぎていても、後行処分(処分B)の取消訴訟において処分Aの違法を主張することが可能です。

        この点は周辺知識も含めて理解していただきたいので、個別指導で解説します。

        5.瑕疵が重大であるとされた処分は、当該瑕疵の存在が明白なものであるとまでは認められなくても、無効とされる場合がある。

        5・・・妥当である

        通常、ある処分が「無効」とされるには、その瑕疵が重大かつ明白であることが求められます(「重大かつ明白」説)。

        しかし、この原則には例外があります。
        つまり、瑕疵が重大であれば、それが「明白」でなくても処分が無効とされることがある
        ということです。

        判例:最一小判昭和48年4月26日(いわゆる大牟田税務署事件)

        この判例は、課税処分に関するものですが、重要な判断を示しました。

        「課税処分に重大な内容上の過誤があり、しかもそれが課税要件の根幹部分に関わるものであって、不服申立期間の経過によって不可争力が生じていたとしても、それを理由に課税処分の不利益を受け入れさせるのは著しく不当だと認められるような特別の事情がある場合には、その処分は当然無効である」

        つまり、この判例では、次のような事情があれば、「明白性」がなくても無効とされることを認めています。

        • 課税処分に重大な過誤がある
        • 課税要件の根幹にかかわる
        • 不服申立期間の経過で救済が困難
        • 第三者の信頼保護などの支障がない
        • それでも納税者に不利益を強いるのは著しく不当である

        したがって、本肢の記述は判例に沿っており、妥当であるといえます。

         


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略

        令和6年・2024|問7|憲法

        国会議員の地位・特権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

        1. 両議院の議員には国庫から相当額の歳費を受ける権利が保障されており、議員全員を対象とした一律の措置としてであっても、議員の任期の途中に歳費の減額を行うことはできない。
        2. 両議院の議員は、国会の会期中は、法律の定める場合を除いては逮捕されることがなく、また所属する議院の同意がなければ訴追されない。
        3. 両議院の議員には、議院で行った演説、討論、表決について免責特権が認められているが、議場外の行為については、議員の職務として行ったものであっても、免責の対象とならない。
        4. 参議院の緊急集会は、衆議院の解散中に開催されるものであるが、その際にも、議員に不逮捕特権や免責特権の保障が及ぶ。
        5. 議院が所属議員に科した懲罰には、議院自律権の趣旨から司法審査は及ばないのが原則であるが、除名に関しては、手続の適正さについて審査が及ぶとするのが最高裁判所の判例である。

        >解答と解説はこちら


        【答え】:4
        【解説】
        1.両議院の議員には国庫から相当額の歳費を受ける権利が保障されており、議員全員を対象とした一律の措置としてであっても、議員の任期の途中に歳費の減額を行うことはできない。

        1・・・妥当でない

        憲法49条は「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。」と定めており、議員が国庫から歳費を受ける権利を保障していますが、任期中の減額を禁止する規定はありません

        したがって、たとえ議員全員を対象とする一律の措置であっても、法律に基づいて歳費を減額することは可能です。

        これに対して、裁判官の報酬については、憲法79条6項および80条2項により「在任中は減額されない」ことが明文で保障されています。これは司法の独立を守るための特別な保障です。

        2.両議院の議員は、国会の会期中は、法律の定める場合を除いては逮捕されることがなく、また所属する議院の同意がなければ訴追されない。

        2・・・妥当でない

        この記述のうち、「所属する議院の同意がなければ訴追されない」という部分が誤りです。

        憲法50条は、両議院の議員について、国会の会期中は、法律の定める場合を除いて逮捕されないこと、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば釈放しなければならないことを定めています。

        また、国会法33条では、現行犯逮捕を除き、会期中に議員を逮捕するには議院の許諾が必要であるとされています。

        しかし、「訴追」(=刑事訴訟法上の公訴の提起)に関して、議員に特別な制限は設けられていません。つまり、議院の同意がなくても訴追することは可能です。

        対比ポイント

        一方、訴追に関する特別な規定は国務大臣に対して定められており、憲法75条により「内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない」とされています(ただし、訴追の権利自体が失われるわけではない)。

        <国会議員と国務大臣における逮捕・訴追の制限比較表>
        対象 会期中の逮捕 訴追(起訴)
        国会議員 原則禁止(憲法50条)
        ※現行犯などを除く
        制限なし(同意不要)
        国務大臣 特に制限なし(一般人と同じ) 内閣総理大臣の同意が必要(憲法75条)
        3.両議院の議員には、議院で行った演説、討論、表決について免責特権が認められているが、議場外の行為については、議員の職務として行ったものであっても、免責の対象とならない。

        3・・・妥当でない

        憲法51条「両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問はれない。」により、国会議員には次のような免責特権が認められています。

        本肢は「議場外の行為については、議員の職務として行ったものであっても、免責の対象とならない」という記述が誤りです。
        なぜなら、ここでいう「議院で行った」とは、単なる物理的な場所を指すのではなく、議会活動として正規の手続で行われた職務行為かどうかという機能的な観点から判断されるからです。

        4.参議院の緊急集会は、衆議院の解散中に開催されるものであるが、その際にも、議員に不逮捕特権や免責特権の保障が及ぶ。

        4・・・妥当である

        憲法54条2項ただし書きでは、衆議院が解散された場合において、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を開くことができると定められています。

        この参議院の緊急集会は、形式的には国会の会期ではありませんが、実質的には国会の機能を代替する重要な国政活動です。

        そのため、緊急集会も、これらの特権が適用される「国政の議論の場」である以上、不逮捕・免責特権の保障が及ぶと考えられています。

        本肢は関連ポイントも重要なので、個別指導で解説します。

        5.議院が所属議員に科した懲罰には、議院自律権の趣旨から司法審査は及ばないのが原則であるが、除名に関しては、手続の適正さについて審査が及ぶとするのが最高裁判所の判例である。

        5・・・妥当でない

        この記述の問題点は、「除名処分に対して司法審査が及ぶ」とする部分です。

        >実際の最高裁判例は、議院懲罰についてではなく政党による党員処分に関するもの(共産党袴田事件)であり、議院懲罰とは異なる問題です。

        判例の内容(共産党袴田事件・最判昭和63年12月20日)

        この判例では以下のように述べられています。

        • 政党が党員に対してした処分が、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばない
        • しかし、その処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合は、適正な手続に則ってされたか否かに限って司法審査が及ぶ

        これはあくまで政党内部の処分に関する判断であり、国会の議院懲罰権に関する判断ではない点に注意が必要です。

        よって、本問は、政党処分に関する判例を議院懲罰に誤って適用しており、混同による誤解を含むため妥当ではないです。

         


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略

        令和6年・2024|問6|憲法

        選挙制度の形成に関する国会の裁量についての次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らし、妥当でないものはどれか。

        1. 都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有する単位である以上、参議院の選挙区選出議員に都道府県代表的な意義を付与し、その枠内で投票価値の平等の実現を図ることは、憲法上許容される。
        2. 小選挙区制は、死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、結局のところ選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができる。
        3. 同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、国会が裁量により決定することができる事項であり、衆議院議員選挙で小選挙区選挙と比例代表選挙との重複立候補を認める制度は憲法に違反しない。
        4. 政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは国会の裁量に属し、名簿登載者個人には投票したいがその属する政党には投票したくないという意思を認めない非拘束名簿式比例代表制もまた同様である。
        5. 参議院の比例代表選出議員について、政党が優先的に当選者となるべき候補者を定めることができる特定枠制度は、選挙人の総意によって当選人が決定される点で、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、憲法に違反しない。

        >解答と解説はこちら


        【答え】:1
        【解説】
        1.都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有する単位である以上、参議院の選挙区選出議員に都道府県代表的な意義を付与し、その枠内で投票価値の平等の実現を図ることは、憲法上許容される。

        1・・・妥当でない

        「最大判昭和58年4月27日」において、最高裁は参議院の選挙区選出議員の選挙制度の決定について、国会に広範な裁量があることを認めました。しかし、この判例は「参議院議員が全国民の代表である」という点と、「選挙制度に都道府県の代表的意義を加えること」が矛盾しないと判断しただけであり、選択肢にあるような「都道府県の代表的な意義を前提として、投票価値の平等を図ることが憲法上許容される」という趣旨の判断は行っていません。

        また、平成26年11月26日の最高裁判決では、都道府県単位の選挙区制度が投票価値の大きな不平等を生じさせる場合、その合理性が否定されると判断されています。

        したがって、本肢は「全文が誤り」であり、妥当でない

        2.小選挙区制は、死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、死票はいかなる制度でも生ずるものであり、結局のところ選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができる。

        2・・・妥当である

        小選挙区制は、1選挙区につき1名しか当選しないため、落選者に投じられた票(死票)が多く発生しやすいという特徴があります。しかし、これは選挙制度の特性によるものであり、比例代表制などの他の制度でも一定の死票は生じるため、小選挙区制の導入が直ちに不合理とはならないとされています。

        「最大判平成11年11月10日」では、小選挙区制は、選挙を通じて国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法であり、それによって選出された議員が全国民の代表であるという性格と矛盾しないと判断されました。したがって、本肢の内容は判例の趣旨に沿っており、妥当です。

        3.同時に行われる二つの選挙に同一の候補者が重複して立候補することを認めるか否かは、国会が裁量により決定することができる事項であり、衆議院議員選挙で小選挙区選挙と比例代表選挙との重複立候補を認める制度は憲法に違反しない。

        3・・・妥当である

        衆議院議員選挙における小選挙区比例代表並立制の「重複立候補制度」とは、同一の候補者が 小選挙区選挙と比例代表選挙の両方に立候補できる 制度を指します。この制度により、小選挙区で落選しても、比例代表の名簿順位によって当選する可能性があります。

        「最大判平成11年11月10日」では、選挙制度の決定は 国会の広範な裁量に委ねられていることを前提に、小選挙区比例代表並立制自体は憲法違反ではないと判断されました。また、重複立候補制についても、政党本位の選挙を目指す立法政策の一環として許容される ため、憲法の要請に反するものではないとしています。したがって、本肢は妥当です。

        4.政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは国会の裁量に属し、名簿登載者個人には投票したいがその属する政党には投票したくないという意思を認めない非拘束名簿式比例代表制もまた同様である。

        4・・・妥当である

        参議院議員選挙の比例代表制には名簿式比例代表制が採用されており、これに関する制度設計国会の裁量に委ねられています。

        「最大判平成16年1月14日」では、政党を通じて国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制の採用は、国会の裁量の範囲内であると判断されました。

        また、非拘束名簿式比例代表制(候補者個人の名前を書いて投票するが、実際には政党の得票として計算される制度)についても、「特定の候補者個人には投票したいが、その政党には投票したくない」という意思を反映できない点に関しては議論の余地があるものの、制度全体として合理性が認められ、国民の選挙権(憲法15条)を侵害するものとはいえないとされました。

        よって、本肢は妥当です。

        5.参議院の比例代表選出議員について、政党が優先的に当選者となるべき候補者を定めることができる特定枠制度は、選挙人の総意によって当選人が決定される点で、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異ならず、憲法に違反しない。

        5・・・妥当である

        参議院の比例代表選出議員の選挙における「特定枠制度」とは、政党が優先的に当選者となるべき候補者を事前に指定できる制度です。この制度の下では、選挙人は候補者個人または政党に投票し、その得票数に基づいて当選者が決定されます。

        「最判令和2年10月23日」では、特定枠制度について、最終的に当選人が決まるのは、選挙人の投票(総意)によるものであり、候補者個人を直接選択して投票する方式と本質的に異ならないと判断されました。

        したがって、公職選挙法の規定は憲法43条1項(国会議員が全国民の代表であること)等に違反しないと結論づけられました。
        したがって、本肢は妥当です。

         


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略

        令和6年・2024|問5|憲法

        教育に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

        1. 義務教育は無償とするとの憲法の規定は、授業料不徴収を意味しており、それ以外に、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用を無償としなければならないことまでも定めたものと解することはできない。
        2. 教科書は執筆者の学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、また、教科書検定は検定基準に違反する場合に教科書の形態での研究結果の発表を制限するにすぎないので、教科書検定は学問の自由を保障した憲法の規定には違反しない。
        3. 公教育に関する国民全体の教育意思は、法律を通じて具体化されるべきものであるから、公教育の内容・方法は専ら法律により定められ、教育行政機関も、法律の授権に基づき、広くこれらについて決定権限を有する。
        4. 国民の教育を受ける権利を定める憲法規定の背後には、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している。
        5. 普通教育では、児童生徒に十分な判断能力がなく、また、全国的に一定の教育水準を確保すべき強い要請があること等からすれば、教師に完全な教授の自由を認めることはとうてい許されない。

        >解答と解説はこちら


        【答え】:3
        【解説】
        1.義務教育は無償とするとの憲法の規定は、授業料不徴収を意味しており、それ以外に、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用を無償としなければならないことまでも定めたものと解することはできない。

        1・・・妥当である

        憲法26条2項では、「義務教育は、これを無償とする。」と規定しています。

        この規定の解釈について、最高裁判所の判例(最大判昭和39年2月26日・教科書国家負担請求事件)は、次のように示しています。

        • 憲法26条2項が定める「無償」とは、授業料を徴収しないことを意味する
        • したがって、教科書や学用品、その他教育に必要なすべての費用を無償とすることまでは規定していない

        つまり、義務教育にかかる費用のすべてが無償となるわけではなく、授業料のみが対象となります。

        なお、現在の制度では、「義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」などにより、公立の小・中学校で使用される教科書は無償で支給されています。

        2.教科書は執筆者の学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、また、教科書検定は検定基準に違反する場合に教科書の形態での研究結果の発表を制限するにすぎないので、教科書検定は学問の自由を保障した憲法の規定には違反しない。

        2・・・妥当である

        教科書検定がこの学問の自由の規定に違反するかどうかについて、最高裁判所は「家永教科書訴訟」(最判平成5年3月16日)において、次のように判断しました。

        • 教科書は、学術研究の結果を発表することを目的としたものではない
        • 教科書検定は、検定基準に違反する場合に限り、教科書の形態における研究結果の発表を制限するものである。

        したがって、教科書検定は、学問の自由(憲法23条)に違反しないとされています。

        これは、検定が学問の内容そのものを規制するものではなく、義務教育の場で使用される教材としての適切性を判断するための制度であるという考え方に基づいています。

        「教科書検定は、検定基準に違反する場合に限り、教科書の形態における研究結果の発表を制限するものである。」という部分が理解しづらいので、個別指導で解説します。

        3.公教育に関する国民全体の教育意思は、法律を通じて具体化されるべきものであるから、公教育の内容・方法は専ら法律により定められ、教育行政機関も、法律の授権に基づき、広くこれらについて決定権限を有する。

        3・・・妥当でない

        憲法26条では「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と規定しています。

        そして、公教育に関する決定権が誰にあるのかについて、以下の2つの対立する見解があります。

        ① 国家主導の立場(法律・行政機関の決定権を重視)

        • 子どもの教育は、親だけでなく国民全体の関心事である。
        • 公教育制度は国民の期待と要求に応じて作られるため、その内容・方法は法律を通じて決定されるべき。
        • 法律が教育の内容・方法を包括的に定め、教育行政機関も法律の授権に基づいて決定する権限を持つ。

        ② 親・国民主体の立場(親の責務を重視)

        • 子どもの教育は、憲法26条が保障する「教育を受ける権利」に対する責務として行われるべきもの。
        • 教育の責務を担うのは親を中心とする国民全体であり、公教育は「親の教育義務の共同化」ともいえる。
        • 教育は、国民全体の信託の下に、教育に直接責任を負う形で行われなければならない。(教育基本法10条1項)

        判例の立場(旭川学力テスト事件:最大判昭和51年5月21日)

        最高裁判所は、この2つの見解について次のように判断しました。

        • いずれの見解も極端かつ一方的であり、そのいずれをも全面的に採用することはできない。」
        • つまり、公教育の内容・方法が法律だけによって決定されるわけではなく親や国民の役割も無視できないという立場をとっています。

        したがって、問題文の「公教育の内容・方法は専ら法律により定められる」という考え方は、判例の立場と異なるため、「妥当でない」と判断されます。

        4.国民の教育を受ける権利を定める憲法規定の背後には、みずから学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している。

        4・・・妥当である

        憲法26条は、教育を受ける権利と義務教育の無償を定めています。

        • 1項:「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」
        • 2項:「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。」

        この規定は、福祉国家の理念に基づき、国が教育を提供する責務を負うことを示しています。また、子どもの成長・発達にとって普通教育が不可欠であることから、親には子どもに教育を受けさせる義務が課され、義務教育の費用は国が負担すべきであるとされています。

        判例(旭川学力テスト事件:最大判昭和51年5月21日)

        最高裁判所は、憲法26条の背後にある観念について、次のように述べています。

        • すべての国民は、人格を形成し、社会の一員として成長・発達するために必要な学習をする権利を持っている。
        • 特に、子どもは自ら学習することができないため、大人(社会全体)に対して教育を受ける機会を提供するよう求める権利を持っている
        • つまり、憲法26条は単に教育を受ける権利を保障するだけでなく、子どもが自らの学習を満たすために、大人に教育を求める権利を有するという考え方を基礎にしています。

        したがって、「子どもはその学習要求を満たすために、大人一般に対して教育を施すことを要求する権利を有する」という考え方は、判例(旭川学力テスト事件)にも裏付けられており、妥当であるといえます。

        5.普通教育では、児童生徒に十分な判断能力がなく、また、全国的に一定の教育水準を確保すべき強い要請があること等からすれば、教師に完全な教授の自由を認めることはとうてい許されない。

        5・・・妥当である

        「教授の自由」とは、教師が教育内容や教授方法を自由に決定できる権利を指します。憲法23条は「学問の自由」を保障していますが、これが学校教育、とくに義務教育(普通教育)にどのように適用されるかが問題になります。

        判例の判断(最判昭和51年5月21日)

        普通教育においては、これらの事情を考慮すると、教師に完全な教授の自由を認めることは許されないとしています。

        例えば、教師が個人的な思想や特定の政治的主張を児童・生徒に押しつけることは、教育の中立性や生徒の適切な成長を妨げる恐れがあります。そのため、普通教育における教師の教授の自由には制約があるべきと考えられています。

        よって、「普通教育においては、教師に完全な教授の自由を認めることは許されない」という考え方は、判例にも基づいており、妥当であるといえます。

        本肢は、「大学教育と普通教育の違い」が重要なので、個別指導で解説します!

         


        令和6年(2024年)過去問

        問1 基礎法学 問31 民法
        問2 基礎法学 問32 民法
        問3 憲法 問33 民法
        問4 憲法 問34 民法
        問5 憲法 問35 民法
        問6 憲法 問36 商法
        問7 憲法 問37 会社法
        問8 行政法 問38 会社法
        問9 行政法 問39 会社法
        問10 行政法 問40 会社法
        問11 行政手続法 問41 多肢選択
        問12 行政手続法 問42 多肢選択
        問13 行政手続法 問43 多肢選択
        問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
        問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
        問16 行服法・行訴法 問46 民法・40字
        問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識
        問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識
        問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識
        問20 国家賠償法 問50 基礎知識
        問21 国家賠償法 問51 基礎知識
        問22 地方自治法 問52 行政書士法
        問23 地方自治法 問53 住民基本台帳法
        問24 地方自治法 問54 基礎知識
        問25 行政法 問55 基礎知識
        問26 公文書管理法 問56 基礎知識
        問27 民法 問57 個人情報保護法
        問28 民法 問58 著作権の関係上省略
        問29 民法 問59 著作権の関係上省略
        問30 民法 問60 著作権の関係上省略