物権の成立に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。
ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
- ア・イ
- ア・ウ
- イ・エ
- ウ・エ
- エ・オ
【解説】
ア.他人の土地の地下または空間の一部について、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権を設定することは認められない。
ア・・・妥当ではない
地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができます(民法269条の2)。
よって、本肢は妥当ではありません。
地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができます(民法269条の2)。
よって、本肢は妥当ではありません。
- 空間の具体例⇒モノレール
- 地下の具体例⇒「地下鉄」や「地下を通る高速道路」
イ.一筆の土地の一部について、所有権を時効によって取得することは認められる。
イ・・・妥当
判例によると
「占有は事実上の支配であり、土地の一部に事実上の支配を及ぼすことも可能であるから、1筆の土地の一部について時効取得することができる」としています(大判大13.10.7)。
取得時効の事例でいうと
隣地境界あたりで、一部が他人地だったけど
それを知らずに、ずっと自分の土地と思い込んで占有していて
その部分のみ時効取得する事例が多いです。よって、本肢は妥当です。
判例によると
「占有は事実上の支配であり、土地の一部に事実上の支配を及ぼすことも可能であるから、1筆の土地の一部について時効取得することができる」としています(大判大13.10.7)。
取得時効の事例でいうと
隣地境界あたりで、一部が他人地だったけど
それを知らずに、ずっと自分の土地と思い込んで占有していて
その部分のみ時効取得する事例が多いです。よって、本肢は妥当です。
ウ.構成部分の変動する集合動産について、一括して譲渡担保の目的とすることは認められない。
ウ・・・妥当ではない
判例によると、
「構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」としています(最判昭54.2.15)。
「構成部分の変動する集合動産」とは、「倉庫にあるモノ」です。「倉庫の所在地」や「どの種類」「どれだけの量」を指定することで、これら全部を一個の集合物として譲渡担保権の設定をすることができます。よって、本肢は妥当ではありません。具体例については個別指導で解説します!
判例によると、
「構成部分の変動する集合動産であつても、その種類所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定される場合には、一個の集合物として譲渡担保の目的となりうる」としています(最判昭54.2.15)。
「構成部分の変動する集合動産」とは、「倉庫にあるモノ」です。「倉庫の所在地」や「どの種類」「どれだけの量」を指定することで、これら全部を一個の集合物として譲渡担保権の設定をすることができます。よって、本肢は妥当ではありません。具体例については個別指導で解説します!
エ.土地に生育する樹木について、明認方法を施した上で、土地とは独立した目的物として売却することは認められる。
エ・・・妥当
原則として、立木は土地の構成部分、つまり、土地の一部にすぎません。
理由は、土地に根を張って生存しているからです。
しかし、立木だけ売りたい・買いたいという場合もあります。その場合に「明認方法」というルールがあります。明認方法の具体的な方法としては、所有者を明示する標札を立てる、立木を削って名前を書く、墨書きをする、などがあります。これにより、土地に生育する樹木について、土地とは独立した目的物として売却することは認められます。
原則として、立木は土地の構成部分、つまり、土地の一部にすぎません。
理由は、土地に根を張って生存しているからです。
しかし、立木だけ売りたい・買いたいという場合もあります。その場合に「明認方法」というルールがあります。明認方法の具体的な方法としては、所有者を明示する標札を立てる、立木を削って名前を書く、墨書きをする、などがあります。これにより、土地に生育する樹木について、土地とは独立した目的物として売却することは認められます。
よって、本肢は妥当です。
オ.地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
5・・・妥当
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます(民法283条)。
よって、本肢は妥当です。関連ポイントについては、個別指導で解説します!
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができます(民法283条)。
よって、本肢は妥当です。関連ポイントについては、個別指導で解説します!
平成29年度(2017年度)|行政書士試験の問題と解説
問1 | 基礎法学 | 問31 | 民法:物権 |
---|---|---|---|
問2 | 基礎法学 | 問32 | 民法:債権 |
問3 | 人権 | 問33 | 民法:債権 |
問4 | 経済的自由 | 問34 | 民法:債権 |
問5 | 内閣 | 問35 | 民法:親族 |
問6 | 財政 | 問36 | 商法 |
問7 | 憲法の概念 | 問37 | 会社法 |
問8 | 取消しと撤回 | 問38 | 会社法 |
問9 | 無効な行政行為 | 問39 | 会社法 |
問10 | 執行罰 | 問40 | 会社法 |
問11 | 行政手続法 | 問41 | 憲法 |
問12 | 行政手続法 | 問42 | 行政法 |
問13 | 行政手続法 | 問43 | 行政法 |
問14 | 行政不服審査法 | 問44 | 行政法・40字 |
問15 | 行政不服審査法 | 問45 | 民法・40字 |
問16 | 行政不服審査法 | 問46 | 民法・40字 |
問17 | 行政事件訴訟法 | 問47 | 基礎知識・政治 |
問18 | 行政事件訴訟法 | 問48 | 基礎知識・社会 |
問19 | 行政事件訴訟法 | 問49 | 基礎知識・政治 |
問20 | 国家賠償法 | 問50 | 基礎知識・経済 |
問21 | 国家賠償法 | 問51 | 基礎知識・社会 |
問22 | 地方自治法 | 問52 | 基礎知識・社会 |
問23 | 地方自治法 | 問53 | 基礎知識・社会 |
問24 | 地方自治法 | 問54 | 基礎知識・情報通信 |
問25 | 行政法の判例 | 問55 | 基礎知識・その他 |
問26 | 行政不服審査法 | 問56 | 基礎知識・情報通信 |
問27 | 民法:総則 | 問57 | 基礎知識・個人情報保護 |
問28 | 民法:総則 | 問58 | 著作権の関係上省略 |
問29 | 民法:物権 | 問59 | 著作権の関係上省略 |
問30 | 民法:総則 | 問60 | 著作権の関係上省略 |