令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

平成30年・2018|問34|民法:離婚

離婚に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア.離婚における財産分与は、離婚に伴う精神的苦痛に対する損害の賠償も当然に含む趣旨であるから、離婚に際し財産分与があった場合においては、別途、離婚を理由とする慰謝料の請求をすることは許されない。

イ.離婚に際して親権者とならず子の監護教育を行わない親には、子と面会・交流するためのいわゆる面接交渉権があり、この権利は親子という身分関係から当然に認められる自然権であるから、裁判所がこれを認めない判断をすることは憲法13条の定める幸福追求権の侵害に当たる。

ウ.父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかったにもかかわらず、誤って離婚届が受理されたときであっても、当該離婚は有効に成立する。

エ.民法の定める離婚原因がある場合には、当事者の一方は、その事実を主張して直ちに家庭裁判所に対して離婚の訴えを提起することができ、訴えが提起されたときは、家庭裁判所は直ちに訴訟手続を開始しなければならない。

オ.夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及び、その夫婦の間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により極めて苛酷な状態に置かれる等著しく社会的正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚が許されないとすることはできない。

  1. ア・イ
  2. ア・ウ
  3. イ・エ
  4. ウ・オ
  5. エ・オ

>解答と解説はこちら


【答え】:4(ウとオが妥当)

【解説】

ア.離婚における財産分与は、離婚に伴う精神的苦痛に対する損害の賠償も当然に含む趣旨であるから、離婚に際し財産分与があった場合においては、別途、離婚を理由とする慰謝料の請求をすることは許されない。

ア・・・妥当でない
判例によると
「すでに財産分与がなされた場合においても、・・・その額および方法において分与請求者の精神的苦痛を慰籍するに足りないと認められるものであるときは、右請求者は、別個に、相手方の不法行為を理由として離婚による慰籍料を請求することができる」としています(最判昭46.7.23)。
つまり、
離婚の財産分与には、「精神的苦痛に対する損害賠償」が含まれない場合もあり、
「精神的苦痛に対する損害賠償」が含まれない場合、財産分与とは別に、慰謝料を請求できます。よって、本肢は妥当ではありません。
イ.離婚に際して親権者とならず子の監護教育を行わない親には、子と面会・交流するためのいわゆる面接交渉権があり、この権利は親子という身分関係から当然に認められる自然権であるから、裁判所がこれを認めない判断をすることは憲法13条の定める幸福追求権の侵害に当たる。
イ・・・妥当でない
協議離婚をした際に親権者とされなかった親が、子どもと面会交渉することについて
裁判所が、親の面接交渉権を認めない判断をすることは、憲法13条に違反するかどうかの問題ではないとしています(最判昭59.7.6)。
つまり、本肢の「幸福追求権の侵害に当たる」というのは妥当ではありません。
ウ.父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかったにもかかわらず、誤って離婚届が受理されたときであっても、当該離婚は有効に成立する。
ウ・・・妥当
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。
そして、離婚の届出は、上記規定等の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができません(民法765条1項)。だたし、離婚の届出が、上記に違反して受理された場合、離婚は、有効に成立してしまいます(同条3項)。つまり、父母が協議上の離婚をする場合に、その協議でその一方を親権者として定めなかった場合であっても、誤って離婚届が受理されたときは、当該離婚は有効に成立します。

したがって、本肢は妥当です。

エ.民法の定める離婚原因がある場合には、当事者の一方は、その事実を主張して直ちに家庭裁判所に対して離婚の訴えを提起することができ、訴えが提起されたときは、家庭裁判所は直ちに訴訟手続を開始しなければならない。
エ・・・妥当でない
離婚の裁判をしようとする場合、事前に離婚調停をしなければなりません家事事件手続法257条:調停前置主義)。
よって、本肢は妥当ではありません。
オ.夫婦の別居が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及び、その夫婦の間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により極めて苛酷な状態に置かれる等著しく社会的正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの離婚請求であるとの一事をもって離婚が許されないとすることはできない。
オ・・・妥当
「有責配偶者」とは、離婚の原因を作った側を指します。そして、判例では、
「有責配偶者からされた離婚請求であっても、
夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、
その間に未成熟子がいない場合には、
相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない」としています(最大判昭62.9.2)。つまり、特段の事情がない限り、有責配偶者からでも、離婚請求ができるということです。よって、本肢は妥当です。

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平成30年度(2018年度)|行政書士試験の問題と解説

問1 著作権の関係上省略 問31 民法:債権
問2 法令用語 問32 民法:債権
問3 判決文の理解 問33 民法:債権
問4 学問の自由 問34 民法:親族
問5 生存権 問35 民法:親族
問6 参政権 問36 商法
問7 天皇・内閣 問37 会社法
問8 行政代執行法 問38 会社法
問9 公法と私法 問39 会社法
問10 無効と取消し 問40 会社法
問11 行政手続法 問41 憲法
問12 行政手続法 問42 行政事件訴訟
問13 行政手続法 問43 行政法
問14 行政不服審査法 問44 行政法・40字
問15 行政不服審査法 問45 民法・40字
問16 行政不服審査法 問46 民法・40字
問17 行政事件訴訟法 問47 基礎知識・社会
問18 行政事件訴訟法 問48 基礎知識・その他
問19 行政事件訴訟法 問49 基礎知識・社会
問20 国家賠償法 問50 基礎知識・経済
問21 国家賠償法 問51 基礎知識・社会
問22 地方自治法 問52 基礎知識・社会
問23 地方自治法 問53 基礎知識・その他
問24 地方自治法 問54 基礎知識・社会
問25 行政法の判例 問55 基礎知識・個人情報保護
問26 行政法の判例 問56 基礎知識・個人情報保護
問27 民法:総則 問57 基礎知識・個人情報保護
問28 民法:総則 問58 著作権の関係上省略
問29 民法:物権 問59 著作権の関係上省略
問30 民法:物権 問60 著作権の関係上省略

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