令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

最判平17.9.14:在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件

論点

  1. 在外日本人が、国政選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは適法か?
  2. 国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用を受けるか?

事案

平成10年の公職選挙法改正前は、「選挙人名簿に登録されていない者」は投票することができない、とされていた。

そして、選挙人名簿への登録は、3か月以上の当該市町村の住民基本台帳に記録されている者について行うとされていたため、在外日本人は選挙人名簿への登録がなされず、国政選挙において、一切投票することができなかった。

その後、平成10年に同法が改正され、在外日本人も在外選挙人名簿に登録されていれば投票が可能となる在外選挙制が創設された。

しかし、対象となる選挙は、当分の間、衆議院・参議院の「比例代表選出議員」の選挙に限られていた。

そこで、平成8年の衆議院議員の総選挙において投票することができなかったXらは、国Yを被告として、選挙権の行使の機会を保障しないことは、憲法14条1項(法の下の平等)に違反すると主張し、改正前の公職選挙法の違法確認を、予備的に、Xらが「衆議院小選挙区選出議員および参議院選挙区選出の選挙」において選挙権を行使する権利を有することとの確認を求めて提訴した。

判決

在外日本人が、国政選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは適法か?

→適法である

本件の予備的確認請求に係る訴えは、公法上の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えと解することができる。

そして、その内容をみると、公職選挙法の改正がされないと、在外国民であるXらが、今後直近に実施されることになる「衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙」において投票をすることができず、選挙権を行使する権利を侵害されることになるので、

そのような事態になることを防止するために、Xらが、改正前の公職選挙法の規定が違憲無効であるとして、当該各選挙につき選挙権を行使する権利を有することの確認をあらかじめ求める訴えであると解することができる。

選挙権は、これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず、侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものである。

したがって、その権利の重要性にかんがみると、具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えについては、それが有効適切な手段であると認められる限り、確認の利益を肯定すべきものである。

そして、本件の予備的確認請求に係る訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして、上記の内容に照らし、確認の利益を肯定することができるものに当たるというべきである。

なお、この訴えが法律上の争訟に当たることは論をまたない(当然である)。

そうすると、本件の予備的確認請求に係る訴えについては、引き続き在外国民であるXらが、次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を請求する趣旨のものとして適法な訴えということができる

国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用を受けるか?

→適用を受ける

国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。(国家賠償法1条1項の解説はこちら>>

したがって、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきである。

仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない

しかしながら、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきである。

上記内容から、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用を受けることが分かる。

判決文の全文はこちら>>

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