令和7年度の行政書士試験対策の個別指導開講

最判平元.2.17:航空法に基づく定期航空運送事業免許処分

論点

  1. 定期航空運送事業免許に基づき路線を航行する航空機の騒音被害に苦しめられる周辺住民は、当該免許処分の取消訴訟の原告適格を有するか?

事案

新潟空港について、昭和54年12月に運輸大臣(現、国土交通大臣)Yが新潟―小松―ソウル間の定期航空運送事業免許をAに与えた。

その結果、空港周辺に居住する住民Xらが、騒音により健康または生活上の利益が侵害されると主張し、その取消しを求めた。

判決

定期航空運送事業免許に基づき路線を航行する航空機の騒音被害に苦しめられる周辺住民は、当該免許処分の取消訴訟の原告適格を有するか?

→有する

取消訴訟の原告適格について規定する行政事件訴訟法九条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。

そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規及びそれと目的を共通する関連法規の関係規定によって形成される法体系の中において、当該処分の根拠規定が、当該処分を通して右のような個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置付けられているとみることができるかどうかによって決すべきである。

本件についてみると、航空法は、「国際民間航空条約の規定」並びに「同条約の附属書」として採択された標準、方式及び手続に準拠しているものであるが、航空機の航行に起因する障害の防止を図ることをその直接の目的の一つとしている(法一条)。

また、航空運送事業の免許権限を有する運輸大臣は、他方において、公共用飛行場の周辺における航空機の騒音による障害の防止等を目的とする公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律三条に基づき、公共用飛行場周辺における航空機の騒音による障害の防止・軽減のために必要があるときは、航空機の航行方法の指定をする権限を有しているのであるが、同一の行政機関である運輸大臣が行う定期航空運送事業免許の審査は、関連法規である同法の航空機の騒音による障害の防止の趣旨をも踏まえて行われることが求められるといわなければならない。

以上のような航空機騒音障害の防止の観点からの定期航空運送事業に対する規制に関する法体系をみると、法は、前記の目的を達成する一つの方法として、あらかじめ定期航空運送事業免許の審査の段階において、当該路線の使用飛行場、使用航空機の型式、運航回数及び発着日時など申請に係る事業計画の内容が、航空機の騒音による障害の防止の観点からも適切なものであるか否かを審査すべきものとしているといわなければならない。

つまり、航空法は、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によつて著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるのである。

したがって、新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の一日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。

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