論点
- 都市計画の決定における行政庁の裁量の範囲は?
- 行政庁の判断は、どのような場合に、裁量権の逸脱・濫用として無効となるか?
事案
建設大臣(現、国土交通大臣)は、平成6年、東京都に対して、「小田急小田原線のある区間を高架式により連続立体交差化する内容の都市計画事業の認可」と、「同区間に沿って付属街路を設置することを内容の都市計画事業の認可」をした。
同区間の沿線住民Xらは、事業の方式につき優れた代替案である地下式を理由もなく不採用とし、その結果、Xらに甚大な被害を与える高架式で同事業を実施しようとする点で、事業の前提となる都市計画決定の事業方式の選定には違法があるなどを主張して、建設大臣の事業承継者である関東地方整備局長Yに対し、上記2つの認可の取消しを求めた。
判決
都市計画の決定における行政庁の裁量の範囲は?
→広範な裁量が認められる
都市計画法では、都市施設について、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めることとしている。
このような基準に従って都市施設の規模、配置等に関する事項を定めるに当たっては、当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で、政策的、技術的な見地から判断することが不可欠であるといわざるを得ない。
そうすると、このような判断は、これを決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられているというべきである。
行政庁の判断は、どのような場合に、裁量権の逸脱・濫用として無効となるか?
→重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、または、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる
上記の通り、都市施設の設置に関する決定については、決定する行政庁の広範な裁量にゆだねられており、
裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は変更の内容の適否を審査するに当たっては、当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として、
その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により①重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、
又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等により②その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り、
裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。