論点
事案
Xは酒類の売買等を目的とする株式会社であり、酒税法9条1項の規定に基づいて酒類販売業の免許申請をした。これに対し、所轄税務署長Yは、Xが酒税法10条10号に規定する「その経営基盤が薄弱であると認められる場合」に該当するものとして、この免許処分の拒否処分をした。
それに対しXは、Yを被告とし、本申請は酒税法10条10号の規定に該当しないから、本処分は違法であると主張して、本処分の取消しを求める訴えを提起した。
判決
酒類販売業免許制度についての合憲性の判定基準は?
→規制の必要性と合理性についての立法府の判断が、政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない
一般に許可制は、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要するものというべきである。
また、租税は、今日では、国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え、所得の再分配、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有しており、国民の租税負担を定めるについて、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。
したがって,租税法の定立については、立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。
以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない。
酒税法10条10号は、憲法22条1項(職業選択の自由)に違反するか?
→違反しない(合憲)
酒税法は、酒税の確実な徴収とその税負担の消費者への円滑な転嫁を確保する必要から、このような制度を採用したものと解される。
本件処分当時の時点においてもなお、酒類販売業について免許制度を存置しておくことの必要性及び合理性については失うに至っているとはいえない。
また、免許基準との関係においても、その必要性と合理性が認められる。
したがって、酒税法9条、10条10号の規定が、立法府の裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理であるということはできず、右規定が憲法22条1項に違反するものということはできない。