論点
- 憲法21条2項の「検閲」の意義とは?
- 税関検査は「検閲」に該当するか?
事案
Xは外国から、わいせつな映画フィルム、書籍など(物件という)を郵便で輸入しようとしたところ、函館税関札幌税関支署長Y1から、「これらの物件が男女の性器、性行為等を描写したものであり、関税定率法21条1項3号所定の輸入禁制品に該当する」旨の通知を受けた。
これに対し、Xは異議の申出をしたが、函館税関長Y2はこれを棄却する決定をした。
そこでXはY1およびY2に対し、上記通知および決定の取消しを求めて出訴した。
関税定率法21条1項3号
公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品は、輸入してはならない。
判決
憲法21条2項の「検閲」の意義とは?
→検閲とは、下記6つの要件を満たすものを言う。
- 行政権が主体となって、
- 思想内容等の表現物を対象とし、
- 表現物の一部または全部の発表を禁止する目的で、
- 対象とされる表現物を網羅的一般的に、
- 発表前に審査した上、
- 不適当と認めるものの発表を禁止すること
税関検査は「検閲」に該当するか?
→検閲には該当しない
輸入禁止されている表現物は、一般に、国外においてはすでに発表済みである。
したがって、輸入を禁止したからといって、それは当該表現物につき、事前に発表そのものを一切禁止するというものではない。そのため、税関検査は、事前規制そのものではない。
また、税関検査は、関税徴収手続きの一環として、これに付随して行われるもの。思想内容等それ自体を網羅的に審査し、規制することを目的とするものでもない。
したがって、検閲の上記要件を満たさないので、検閲には該当しない。