論点
事案
Aが死亡し、相続人たる非嫡出子Xは、家庭裁判所に遺産分割を申し立てた。その際、Xは、相続財産について、非嫡出子に嫡出子の2分の1の法定相続分しか認めない民法900条4号ただし書の規定は、憲法14条1項の「法の下平等」に違反すると主張して、嫡出子と平等な割合による分割を求めた。
判決
非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定が憲法14条1項に違反しないか?
→憲法に違反する(違憲である)
憲法14条の平等の要請は、合理的な根拠に基づかない限り、差別的な取り扱いを禁止する趣旨である。
そして、民法900条4号ただし書の「非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定」は、合理的な根拠があり、区別についても著しく不合理ではなく、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められる限り、憲法14条に違反しない。
そして、現在、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、家族共同体の中でも個人の尊重が明確に認識されるようになってきたという認識の変化に伴い、
父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として
その子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
以上を総合すれば、遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきであるとして、民法900条4号ただし書の「非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定」が違憲であるとした。
違憲判決前に確定した遺産分割について、遺産分割協議の無効を主張できるか?
→できない。
本決定の違憲判断は、他の相続につき、本件規定(非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定)を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である
したがって、平成13年7月から当該判決の日までに相続が開始した場合であっても、遺産分割が確定的なものとなっている場合は、当該違憲を理由に遺産分割協議の無効を主張することはできない。