遺言とは?
遺言とは、被相続人が、死後、自己の財産(相続財産)を、誰に、どれだけ残すのかといった意思表示を言います。
遺言については、民法で厳格に「方式(形式)」が決まっており、この方式に従っていない場合は、法律上の遺言としての効力を持ちません(無効)(民法960条)。
そして、2人以上の者が同一の証書で遺言を記載することはできません(民法975条:共同遺言の禁止)。
また、遺言は相手方の承諾なく、単独行為で効力が発生します。
遺言能力
満15歳以上の者は、単独で遺言をすることができます。たとえ、未成年者・被保佐人・被補助人であっても、単独で遺言できます(民法961条・962条)。
成年被後見人については、「①事理を弁識する能力を一時回復した時に」、「②医師2人以上の立会い」があれば、遺言できます。
遺言の種類
遺言の種類には下記、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
自筆証書遺言の方式
- 遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、遺言に押印しなければならない(民法968条1項)。ただし、財産目録を添付する場合には、その目録については、自書しなくてもよいが、その目録の毎葉(各ページ)に署名し、印を押さなければならない(民法968条2項)。
- 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、「変更した場所を指示」し、これを「変更した旨を付記」して特にこれに「署名」し、かつ、その「変更の場所に押印」しなければ、変更は無効となる(民法968条3項)。
公正証書遺言の方式
公正証書によって遺言をするには、下記の要件を全て満たさなければなりません(民法969条)。
- 証人2人以上の立会いがあること。
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する(言葉で伝える)こと。
- 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
- 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、押印すること。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
- 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、押印すること。
秘密証書遺言
秘密証書によって遺言をするには、下記の要件を全て満たさなければなりません(民法970条)。
- 遺言者が、その証書に署名し、押印すること。
- 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
- 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
- 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
もし、上記要件を満たさない場合、自筆証書の要件を満たせば、自筆証書遺言としての効力は認められます(民法971条)。
遺言の効力発生時期
遺言は、遺言者の死亡の時に効力が発生します(民法985条1項)。
遺言に停止条件を付した場合、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時に効力が発生します(民法985条2項)。
遺言の撤回
遺言者は、いつでも、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(民法1022条)。
「前の遺言」と「後の遺言」とが矛盾するときは、矛盾する部分については、「後の遺言」で「前の遺言」を撤回したものとみなし、「後の遺言」が優先します(民法1023条)。
(遺言の撤回権の放棄の禁止)
遺言者は、上記遺言の撤回権を放棄することができません(民法1026条)。
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作成中・・・参考条文
(遺言の方式)
第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。(遺言能力)
第961条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。第962条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。
第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
(相続人に関する規定の準用)
第965条 第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者について準用する。(被後見人の遺言の制限)
第966条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
2 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、適用しない。(普通の方式による遺言の種類)
第967条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。(公正証書遺言)
第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。(秘密証書遺言)
第970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 第九百六十八条第三項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。(方式に欠ける秘密証書遺言の効力)
第971条 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあっても、第九百六十八条に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。(秘密証書遺言の方式の特則)
第972条 口がきけない者が秘密証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
2 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
3 第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。(成年被後見人の遺言)
第973条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。(共同遺言の禁止)
第975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。(遺言の効力の発生時期)
第985条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。(遺言の撤回)
第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。(遺言の撤回権の放棄の禁止)
第1026条 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。