論点
事案
東京拘置所に勾留されていた活動家Xらは、拘置所内で私費で新聞を定期購読していた。そんな中、赤軍派によるよど号ハイジャック事件が発生。Xらに配布された新聞記事は、よど号事件の関連記事の一切を墨で塗りつぶされていた。これは、監獄法令の中にある「犯罪の手段、方法等を詳細に伝えたもの」に当たるという判断から塗りつぶされたものであった。
これに対してXらは、当該監獄法令は憲法21条の「知る権利」に違反する無効なものとして、国家賠償請求訴訟を提起した。
判決
刑事施設収容者の閲読の自由に対する制限は、憲法21条に違反しないか?
→違反しない
閲読の自由は、憲法19条や21条の派生原理として当然保障されるべきである。
しかし、この閲読の自由は絶対的に保障されるわけではなく、一定の合理的制限を受けることもある。
当該監獄法令については、合理的制限といえるため、憲法に違反しない。
閲読の自由に対する制限の合憲性はどのように判定するか?(合憲性の判定基準)
まず、当該閲読を許すことにより、監獄内の規律や秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあるといだけでは足りず、(左記理由で制限をすることは違反である)
具体的事情のもとにおいて、①「監獄内の規律および秩序の維持上放置することのできない程度」の障害が生ずる「相当の蓋然性」があると認められることが必要であり
かつ、②制限の程度は、上記障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどめるべきものと解するのが相当である。
※ 蓋然性(がいぜんせい)とは、確実さ、確かさの度合いを表し、「蓋然性がある」とは、ある事柄が起こる確実性や、ある事柄が真実として認められる確実性の度合いが高いことを意味します。
つまり、閲読の自由に対する制限の合憲性は、上記①と②を判断基準に判定します。