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最大判昭51.4.14:衆議院議員定員不均衡訴訟

論点

  1. 4.99対1の較差が生じ、8年間是正されなかった議員定数配分の規定は違憲か?
  2. 違憲となる場合、定数配分規定全体が違憲となるか?
  3. 違憲となる場合、選挙自体無効となるか?

事案

昭和47年の衆議院議員選挙につき、千葉県第1区の選挙人Xは、

衆議院議員選挙当時、各選挙区の議員1人あたりの有権者数の最大値と最小値との比率に4.99対1の明白かつ多大な較差があり、この較差は平等選挙において当然許される程度を超えているため、

選挙区別議員定数を定めた公職選挙法の各規定は、憲法14条(法の下の平等)に反し無効であり、本件選挙も無効であると主張した。

判決

4.99対1の較差が生じ、8年間是正されなかった議員定数配分の規定は違憲か?

違憲である

一般に、制定当時憲法に適合していた法律が、その後における事情の変化により、その合憲性の要件を欠くに至つたときは、原則として憲法違反の瑕疵を帯びることになるというべきである。

しかし、右の要件の欠如が漸次的な事情の変化によるものである場合には、いかなる時点において当該法律が憲法に違反するに至ったものと断ずべきかについて慎重な考慮が払われなければならない。

本件の場合についていえば、人口の異動は不断に生じ、したがって選挙区における人口数と議員定数との比率も絶えず変動するのに対し、選挙区割と議員定数の配分を頻繁に変更することは、必ずしも実際的ではなく、また、相当でもないことを考えると、右事情によって具体的な比率の偏差が選挙権の平等の要求に反する程度となったとしても、これによって直ちに当該議員定数配分規定を憲法違反とすべきものではない。

人口の変動の状態をも考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われない場合に始めて憲法違反と断ぜられるべきものと解するのが、相当である。
そして、本件事案については、憲法の要求するところに合致しない状態になっていたにもかかわらず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったものと認めざるをえない。

それ故、本件議員定数配分規定は、本件選挙当時、憲法の選挙権の平等の要求に違反し、違憲と断ぜられるべきものであったというべきである。

違憲となる場合、定数配分規定全体が違憲となるか?

定数配分規定全体が違憲となる

選挙区割及び議員定数の配分は、議員総数と関連させながら、複雑、微妙な考慮の下で決定される。

一旦このようにして決定されたものは、一定の議員総数の各選挙区への配分として、相互に有機的に関連し、一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有する。

その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、定数配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招いている部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。

違憲となる場合、選挙自体無効となるか?

事情判決の法理により、選挙を無効とはしない

定数配分規定及びこれに基づく選挙を当然に無効であると解した場合、当該選挙により選出された議員がすべて当初から議員としての資格を有しなかったこととなる結果、すでにこれらの議員によって組織された衆議院の議決を経た上で成立した法律等の効力にも問題が生ずる。

また、今後における衆議院の活動が不可能となり、明らかに憲法の所期しない結果を生ずる。

そのため、事情判決の法理により、選挙は無効とはならない。

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