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最大判平14.9.11:郵便法免責規定違憲判決

論点

  1. 郵便法68条、73条において、特別送達郵便物について、国の国家賠償責任を免除し、また制限している部分が憲法に違反するか?

事案

債権者Xは、債務者Aに対して約1億4000万円の遅延損害金の支払いを命ずる確定判決を持っている。Xは平成10年4月10日に、神戸地裁に対して、上記遅延損害金のうち、7200万円を請求債権として、「債務者AのB銀行に対する預金債権」について、差押命令の申立てをした。

神戸地裁は、差押命令を発付し、命令正本を特別送達の方法でB銀行宛に送達した。

尼崎郵便局職員が、
4月14日午前12時に、Aの勤務先に差押命令を送達し、
4月15日午前11時に、B銀行に同命令を送達した。

Aは、差押えを察知し、14日に預金全額を引き出したので、差押えはされなかった。

そこで、Xは、B銀行に対する送達がまる1日遅れたのは、郵便局職員が、特別送達郵便物を誤って、B銀行の私書箱に投函してしまった違法行為が原因であると主張して、送達事務を行う国Yに対して、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求した。

※「特別送達郵便物」は、郵便局の職員が、名宛人に手渡しで渡す。

※「旧郵便法68条、73条」では、特別送達郵便物について、郵便業務従事者の軽過失による不法行為に基づき損害が生じた場合に、国家賠償法に基づく国の損害賠償責任を免除し、又は制限している規定があった。

判決

郵便法68条、73条において、国の国家賠償責任を免除し、また制限している部分が憲法に違反するか?

憲法に違反する(違憲)

 

郵便法の目的は、郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進することを目的としている。

「法68条,73条が規定する免責又は責任制限」もこの目的を達成するために設けられたものであると解される。

そして、特別送達は民事訴訟法に定める送達方法であり、国民の権利を実現する手続きに不可欠である。このため、特別送達郵便物については確実に送達されることが特に強く要請される

また、特別送達は書留郵便物全体のごく一部にとどまり、特別の料金が必要とされている

こうした特別送達郵便物の特殊性に照らすと特別送達郵便物については、郵便業務従事者の軽過失による不法行為から生じた損害の賠償責任を肯定したからといって、直ちに、その目的の達成が害されるということはできない

よって、「法68条,73条が規定する特別送達郵便物に関する免責又は責任制限」に合理性、必要性があるということは困難である。

したがって、上記免責規定等を設けたことは憲法第17条が立法府に与えた裁量の範囲を逸脱したものであり、憲法第17条に違反し、無効である。

 

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