論点
事案
厚生省(現厚生労働省)の公衆衛生局・環境衛生部長Aは、各都道府県の衛生主管部局長あてに「墓地、埋葬等に関する法律第13条の解釈について」と題する通達を発した。
墓地埋葬法第13条
墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは『正当の理由』がなければこれを拒んではならない。
通達の趣旨は以下の通り
「宗教団体の経営する墓地の管理者は、埋葬等の請求する者が他の宗教団体の信者であることをのみを理由として、その請求を拒むことは、同条にいう『正当の理由』とは認められない」という趣旨であった。
Xは、390年間、Xの宗教の信徒のみを埋葬してきた。
そのため、Xは本件通達により、異教徒の埋葬の受忍が罰則をもって強化され、本件通達後すでに無承諾のまま埋葬を強要されたと主張し、厚生大臣Yを被告として、本件通達中の取消訴訟を提起した。
判決
通達に処分性はあるか?
→通達に処分性はない
通達は、機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎない。
したがって、一般の国民は、直接これに拘束されるものではない。
通達の取消しを求める訴訟を提起できるか?
→訴訟提起できない
通達の内容が、法令の解釈や取り扱いに関するもので、国民の権利義務に重大な関わりを持つようなものである場合においても、処分性はない。
また、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。
また、裁判所が通達に拘束されることはなく、裁判所は、法令の解釈適用にあたっては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取り扱いが法の趣旨に反するときには独自にその違法を判定することもできる。
裁判所は「同法13条のいわゆる正当の理由の判断にあたっては、本件通達に示されている事情以外の事情をも考慮するべきものと解せられるから、本件通達が発せられたからといって直ちにXにおいて刑罰を科せられるおそれがあるともいえない。
現行法上行政訴訟において取消の訴えの対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないから、
本件通達の取り消しを求める本件訴えは許されないものとして却下される。
(通達の取消しを求める訴訟を提起できない)