論点
- 裁決庁がした裁決を自ら取り消す裁決をすることが違法な場合、取消裁決の効力は有効か、無効か?
事案
XとYとの間で農地の賃借権につき争いがあった。
Xの申請を受けた村農地委員会は農地調整法によりXの賃借権設定の裁決を言い渡した。
これを不満としてYが、村農地委員会の上級機関である県農地委員会に訴願(願い出ること)を提起したところ、県農地委員会は、一度、棄却した(①棄却裁決)。
ところが、Yの申出によって県農地委員会が裁決について再議し、今度はYの主張を認めて(②認容裁決)、村農地委員会の賃借権設定の処分を取り消した。
そこでXは、Yを被告として、本件農地の耕作権の確認および耕地の引渡を求めて出訴した。
判決
裁決庁がした裁決を自ら取り消す裁決をすることが違法な場合、取消裁決の効力は有効か、無効か?
→裁決が違法であっても、その違法が重大かつ明白な瑕疵がなければ、取消裁決の効力は有効
訴願裁決庁が一旦なした訴願裁決を自ら取り消すことは、原則として許されない(不可変更力という)。
したがって、先になした裁決(①棄却裁決)を取り消して、さらに訴額の趣旨を容認する裁決(②認容裁決)をしたことは違法である。
しかし、行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白な瑕疵があり、処分が当然無効であると認める場合を除いては、適法に取り消されない限り、(②の認容裁決は)完全にその効力を有する。
(不可変更力に違反した「違法な認容裁決」も、行政行為として「公定力」があるので有効である)