論点
- 本人の意思に反して在留資格が変更された場合、その後の更新の際に、その経緯を考慮することなく、現在の許可基準に基づいて更新不許可とすることは適法か?
事案
Xは中国籍の男性である。
日本国籍の女性Aと婚姻し、「日本人の配偶者又は子」という在留資格(在留期間1年)を取得して、入国を許可された。
しかし、入国後、XはAと不仲になりA方を出て別居するようになった。
XはAと別居後も「日本人の配偶者又は子」の在留資格によって数回更新許可を受けて滞在していた。
しかし、法務大臣Yは、長期の別居により婚姻の実体が失われたとして、Xの意に反してXの更新申請を「短期滞在の在留資格」として取り扱い、「短期滞在(在留期間90日)」への在留資格の変更許可を行った。
一方、Aは、在留資格変更許可処分後に、Xとの間の婚姻関係が有効であることが判決によって確定した。
その後、Xは更新申請したが、「短期滞在」目的は終了したとして、不許可処分を行った。
これに対して、Xは当該不許可処分の取消しを求めて提訴した。
判決
本人の意思に反して在留資格が変更された場合、その後の更新の際に、その経緯を考慮することなく、現在の許可基準に基づいて更新不許可とすることは適法か?
→違法
上告人は、通常であれば、当該外国人につき、「短期滞在」の申請に対しては、「短期滞在の」の在留資格に対応する基準で判断すれば足り、他の在留資格に対応する基準について考慮する必要のない。
しかし、Yは、Xの意に反して在留資格を「短期滞在」に変更する旨があったものと取り扱って、これを許可することで、Xが「日本人の配偶者等」の在留資格による在留期間の更新を申請する機会を失わせたものと判断できる。
しかも、当該不許可処分をしたときには、すでに、XとAとの婚姻関係が有効である旨の判決が確定していた。
少なくとも、被上告人の在留資格が「短期滞在」に変更されるに至った経緯を考えると、Yは、信義則上、「短期滞在」の在留資格による在留期間の更新を許可した上で、Xに対し、「日本人の配偶者等」への在留資格の変更申請をしてXが「日本人の配偶者等」の在留資格に属する基準によって、公権的判断を受ける機会を与えることを要したものというべきである。
(法務大臣Yは上記のように、Xに対して、「日本人の配偶者等」の在留資格に属する基準によって、公権的判断を受ける機会を与えるべきであった)
以上のことから、Yの不許可処分は、上記のような経緯を考慮していない点において、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと評価され、違法である。