論点
事案
南九州税理士会Yは、南九州4県の税理士を構成員とする法人であり、税理士Xは、税理士会Yの構成員です。Yは、定時総会において、税理士法改正運動に要する特別資金として、各会員(税理士)から特別会費として金5000円を徴収し、これを政治資金規正法上の政治団体である「南九州各県税理士政治連盟」へ配布(寄付)する、との決議をした。Xは、本件特別会費を納入しなかったところ、これがYの役員の選挙権および被選挙権の欠格事由にあたるとして、Yは一定期間、Xを選挙人名簿に登載しないまま各役員選挙を実施した。これに対して、Xは、本件決議は、Xの思想、信条の自由を侵害し、無効であり、役員選挙におけるXの選挙権および被選挙権を停止したYの措置は不法行為である、などと主張して、Yに対し、①本件特別開始5000円の納入義務が存在しないことの確認、②損害賠償として慰謝料500万円の支払いを求めた。
判決
税理士会が政党に金員を寄付することは、税理士会の目的の範囲内か?
→目的の範囲外の行為である
民法43条では「法人は、法令の規定に従い、定款又は寄付行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」としている。そして、会社については、「政党に政治資金を寄付すること」も会社の定款所定の目的の範囲内の行為とすることは可能である。
しかし、税理士会は、強制加入団体であって、その会員(税理士)には、実質的には脱退の自由が保障されていない。
そうすると、税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であるといえる。
そして、その目的の範囲についても、会社のように広範なものと解することはできない。
税理士会の目的の範囲を判断するにあたっては、会員(税理士)の思想・信条の自由を考慮しなければならない。
そして、政治団体に対して金員を寄付するかどうかは、選挙における投票の自由と表裏をなすものとして(同じ思想・信条に該当するものとして)、各会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄というべきである。
そうすると、税理士会が政党に政治資金を寄付することを決定し、構成員にその協力を義務付けることは、法のまったく予定しないところであり、たとえ税理士にかかわる法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、税理士会の目的の範囲外の行為と言わざるをえない。
税理士会が政党に金員を寄付する旨の総会決議は有効か?
→無効である
上記の通り、寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は、税理士会の目的の範囲外の行為であるため、無効である。