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最判平22.6.3:国家賠償請求訴訟と取消訴訟

論点

  1. 国家賠償請求訴訟は、取消訴訟の手続きを経ていなくても提起できるか?

事案

倉庫業等を営む法人Xは、倉庫を昭和54年に建築し、現在も所有している。

Y市長は、昭和55年度以降、本件倉庫を「一般用の倉庫」に該当するものと評価してその価格(登録価格、評価額)を決定し、

Y市長の権限の委任を受けていたY市のA区長は、昭和62年~平成13年まで、上記価格に基づいて、固定資産税等の賦課決定を行っていた。

また、Xは、その評価額をもとに、固定資産税を納付していた。

しかし、A区長は、平成18年にXに対し、本件倉庫は「冷凍倉庫等」に該当するとした上、平成14年~18年までの登録価格を修正した旨の通知をし、固定資産税等の減額更正をした。

Xは、平成19年に国家賠償法1条1項に基づき、未還付となっていた、昭和62年~平成13年分までの固定資産税等の過納金相当額の支払を求めて提訴した。

なお、Xは、本件倉庫の登録価格について、地方税法432条1項に基づく固定資産評価委員会に対する審査の申出を行ったことはない。

地方税法432条1項
固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては、文書をもって、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。

判決

国家賠償請求訴訟は、取消訴訟の手続きを経ていなくても提起できるか?

→できる

地方税法では、「固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について、不服がある納税者は、同委員会に対する審査の申出およびその決定に対する取消しの訴えによってのみ争うことができる」と規定している。

しかし、同規定は、固定資産課税台帳に登録された価格自体の修正を求める手続きに関するものであって、当該価格の決定が公務員の職務上の法的義務に違背してなされた場合における国家賠償責任を否定するものではない。

また、行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするについて、あらかじめ当該行政処分について取消しまたは無効確認の判決を得る必要はない

したがって、地方税法上の手続き(審査の申出)を経なくとも、国家賠償請求訴訟を提起することはできる。

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