論点
- 建築確認の取消訴訟において、安全認定の違法を主張できるか?
事案
株式会社Aは、自ら建築主とする建築物の建築を計画した。
東京都の安全条例4条1項によると、「敷地面積が約2800㎡の敷地は、前面道路に8m以上設置していなければならない」という接道要件があった。
また、同条例4条3項では「安全認定を受ければ、この接道要件の規定は適用されない」こととなっていた(1項の例外)。
そして、Aは、上記3項の安全認定の申請を行い、新宿区長は、安全認定をした。
その後、Aは建築基準法に基づく建築確認申請を行い、新宿区Yは建築確認をした。
本件建築物の周辺住民Xらは、安全認定、建築確認を不服として建築審査会に対し審査請求をしたが、却下または棄却の裁決を受けた。
そこで、Xらは、新宿区Yを被告として、本件安全認定の取消しおよび本件建築確認の取消しを求めて訴えを提起した。
判決
建築確認の取消訴訟において、安全認定の違法を主張できるか?
→できる
安全条例4条3項に基づく安全認定は、同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について、同項を適用しないこととし、建築主に対し、建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。
また、「①建築確認における接道要件充足の有無の判断」と、「②安全認定における安全上の支障の有無の判断」は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。
そして、前記のとおり、安全認定は、建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり、建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。
手続き上の観点からすると、安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在(安全認定の存在)を速やかに知ることができるとは限らない。
そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。
したがって、安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定に違反があると主張することは許される。