論点
- 公立学校施設の目的外使用の許可・不許可の判断はどのような場合に違法となるか?
事案
広島県教職員組合Xが、毎年開催している県教育研究集会の会場として、広島県呉市立A中学校の学校施設を使用の申出をしたところ、呉市教育委員会Bは、「Xによる集会が原因で、右翼団体による妨害活動の恐れがあり、周辺の学校や地域に混乱を招き、児童生徒に教育上悪影響を与え、学校教育に支障をきたすことが予想される」として、不許可とした。
このため、Xは別の公共施設を会場として開催することとなった。
そこで、Xは、Bに不当に学校施設の使用を拒否されたとして、呉市Yに対し、国家賠償法に基づく損害賠償請求を求めた。
判決
公立学校施設の目的外使用の許可・不許可の判断はどのような場合に違法となるか?
→裁量権行使の判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる
学校施設は、一般公衆の共同使用に供することを主たる目的とする道路や公民館等の施設とは異なり、本来学校教育の目的に使用すべきものとして設置され、それ以外の目的に使用することを基本的に制限されている。
したがって、学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、管理者の裁量にゆだねられているものと解するのが相当である。
すなわち、学校教育上支障があれば使用を許可することができないことは明らかであるが、そのような支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできるものである。
そして、管理者の裁量判断は、諸般の事情を総合考慮してされるものであり、その裁量権の行使が逸脱濫用に当たるか否かの司法審査においては、その判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる。