論点
- 病院開設中止の勧告は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?
事案
Xは病院の開設を計画し、Y知事に対して、医療法7条1項の許可(病院開設の許可)の申請をした。
Yは、Xに対し、医療法30条の7の規定に基づき、「当該病院開設予定の地域内の必要病床数が達していること」を理由に、病院の開設の中止を勧告したが、Xはこの勧告を拒否した。
これを受けてYは、Xあてに「中止勧告にも関わらず、病院を開設した場合、保険医療機関の指定の拒否をする」旨の文書を送付した(通告)。
そこで、Xは、Yに対して、勧告の取消し、または本件通告処分の取消しを求めて出訴した。
判決
病院開設中止の勧告は、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるか?
→あたる
病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められている。
しかし、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。
そして、いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから、保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。
このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると、この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。(つまり、処分性を有する)