成年被後見人とは?
「成年被後見人」とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所の後見開始の審判を受けた者を言います(民法7条)。
「事理を弁識する能力」とは、自己の財産を管理する能力です。
「常況にある」とは、いつもそのような状態であるということです。
簡単にいえば、認知症などが原因で、ほとんど物事の判断ができない方で、後見開始の審判を受けた者です。
成年被後見人の行為能力
成年被後見人の法律行為は、原則、取り消すことができます(民法9条本文)。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、成年被後見人であることを理由に取消しすることはできません(民法9条ただし書)。
「日用品の購入その他日常生活に関する行為」とは、食料品や洗剤などの日用品の購入や、ガス料金・水道料金・電話料金の支払いを指します。
成年後見人(法定代理人)の権限
成年被後見人の保護者を「成年後見人」と言います。
そして、成年被後見人の法定代理人(成年後見人)は「代理権」「取消権」「追認権」を有します。
- 代理権:成年被後見人を代理して法律行為を行う権利
- 取消権:成年被後見人が、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外の法律行為を行った場合、後で取り消しができる権利
- 追認権:成年被後見人が、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」以外の法律行為を行った場合、後で契約を確定的に有効にさせる権利
- 成年被後見人への郵便物等の管理権:①成年被後見人に宛てた郵便物又は信書便物(郵便物等)を成年後見人に配達すべき旨を、配送事業者に嘱託する(頼む)ことができる権利、②成年被後見人に宛てた郵便物等を開いて見ることができる権利。
成年後見人(法定代理人)の義務
成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません(民法858条)。この成年後見人の義務を「身上配慮義務」と言います。
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(後見開始の審判)
第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(成年被後見人及び成年後見人)
第8条 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
(成年被後見人の法律行為)
第9条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
(後見開始の審判の取消し)
第10条 第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。
(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第858条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
(成年後見人による郵便物等の管理)
第860条の2 家庭裁判所は、成年後見人がその事務を行うに当たって必要があると認めるときは、成年後見人の請求により、信書の送達の事業を行う者に対し、期間を定めて、成年被後見人に宛てた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第二条第三項に規定する信書便物(次条において「郵便物等」という。)を成年後見人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2 前項に規定する嘱託の期間は、六箇月を超えることができない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、成年被後見人、成年後見人若しくは成年後見監督人の請求により又は職権で、同項に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができる。ただし、その変更の審判においては、同項の規定による審判において定められた期間を伸長することができない。
4 成年後見人の任務が終了したときは、家庭裁判所は、第一項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
第860条の3 成年後見人は、成年被後見人に宛てた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
2 成年後見人は、その受け取った前項の郵便物等で成年後見人の事務に関しないものは、速やかに成年被後見人に交付しなければならない。
3 成年被後見人は、成年後見人に対し、成年後見人が受け取った第一項の郵便物等(前項の規定により成年被後見人に交付されたものを除く。)の閲覧を求めることができる。