弁済とは?
弁済とは、債務を履行することです。分かりやすく言えば義務を果たすことをです。弁済をすることで債務は消滅します(民法473条)。
例えば、100万円を借りたのであれば、「100万円を返済すること」が弁済であり、300万円の自動車を購入したのであれば「300万円を支払うこと」が弁済です。
弁済の提供方法(弁済の仕方)
「弁済の提供」とは、債務者が弁済を行うための必要な準備をして、債権者に協力を求めることを言います。
そして、「弁済の提供」の仕方は「現実の提供」と「口頭の提供」の2つがあります。
現実の提供
「現実の提供」とは、現実に弁済して債務を消滅させることです。上記事例でいうと、「現実に100万円債権者に渡すこと」「売主に300万円を支払うこと」です。
原則として、弁済の提供方法は「現実の提供」が必要です(民法493条本文)。
例外的に下記「口頭の提供」があります。
口頭の提供
「口頭の提供」とは、債権者に対して「現実の提供をするのに必要な準備が完了した旨」の通知をして、受領を催告することです。
口頭の提供は、下記2つのいずれかに該当する場合に行えます(民法493条ただし書)。
- 債権者があらかじめその受領を拒んでいるとき
- 債務の履行について債権者の行為を要するとき
口頭の提供も不要な場合
債務者が口頭の提供をしても、債権者が契約そのものの存在を否定するなど弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者は口頭の提供をしなくても、債務不履行の責任を免れます(最判昭32.6.5)。
弁済の場所
弁済をすべき場所は、原則、
- 特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所
- その他の弁済は債権者の現在の住所
で行います。
例外として、別段、弁済場所を決めたのであれば、その場所が弁済場所となります(民法484条本文)。
弁済の時間
法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができます(民法484条ただし書)。
弁済の費用
弁済の費用は、原則、債務者の負担です。もっとも、弁済費用ついて別段の定めをした場合は、その定めに従います。
ただし例外として、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする(民法485条)。
具体例は個別指導で解説します。
第三者弁済
原則として、第三者も債務を弁済することができます(民法474条1項)。
弁済をするについて正当な利益を有さない第三者による弁済
「弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」とは、取引に全く関係のない第三者です。
例えば、保証人は、取引に関係するので「正当な利益を有する第三者」ですが、債務者でない「保証人の親族」は「正当な利益を有さない第三者」となります。
そして、「弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」は、原則として、債務者の意思に反して弁済をすることができません(民法474条2項本文)。
ただし例外として、「債務者の意思に反すること」を債権者が知らなかったときは、弁済できます(民法474条2項ただし書)。
さらに、「弁済をするについて正当な利益を有さない第三者」は、債権者の意思に反して弁済をすることができません(民法474条3項本文)。
ただし例外として、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合で、かつ、委託を受けて弁済することを債権者が知っていたときは、弁済できます(民法474条3項ただし書)。
第三者弁済ができない場合
上記民法474条1項~3項の内容に関わらず、下記いずれかに該当する場合、第三者弁済ができません(民法474条4項)。
- その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき
- 当事者が第三者の弁済を禁止されているとき
- 当事者が第三者の弁済を制限する旨の意思表示をしたとき
弁済による代位
第三者が弁済することで、「債権者の有していた一切の権利」が第三者に移転することを「弁済による代位」と言います。
例えば、債権者Aが、債務者Bに100万円を貸し、B所有の土地に抵当権を設定した。CがAに100万円を第三者弁済すると、債権者Aが有していた「100万円の貸金債権」と「抵当権」がCに移ります。
結果として、第三者が債務者Bに100万円を求償することができます。
受領権者としての外観を有する者に対する弁済
「受領権者としての外観を有する者」とは、例えば、「預金通帳と印鑑を持っていた人」「受取証書(本物・偽物を問わない)を持っていた人」等です。
「受領権者としての外観を有する者」に弁済をしてしまった場合、弁済した者が善意無過失の場合、弁済は有効となります(民法478条)。
弁済の充当
債務者が、債権者に対して複数の債務を持っていた場合に、弁済するとき、どの債務の弁済にあてるかを定めることが「弁済の充当」です。
そして「元本・費用(振込手数料等)・利息」がある債務の場合、どの順番で弁済に充てるのか?
当事者の合意がない場合、①費用→②利息→③元本の順で充当されます。
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(弁済)
第473条 債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。(第三者の弁済)
第474条 債務の弁済は、第三者もすることができる。
2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
3 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。(受領権者としての外観を有する者に対する弁済)
第478条 受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。(受領権者以外の者に対する弁済)
第479条 前条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。(弁済の場所及び時間)
第484条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
2 法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。(弁済の費用)
第485条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
第489条 債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(債務者が数個の債務を負担する場合にあっては、同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担するときに限る。)において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
2 前条の規定は、前項の場合において、費用、利息又は元本のいずれかの全てを消滅させるのに足りない給付をしたときについて準用する。(弁済の提供の効果)
第492条 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。(弁済の提供の方法)
第493条 弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。